2007年7月19日木曜日

2_57 氷漬けのマンモス

 氷漬けのマンモスが見つかったというニュースをご覧になられた方が多数おられたと思います。科学者たちは大きな期待持って、このニュースを読んだはずです。私もその一人でした。

 2007年5月、ロシア西シベリア、ウラル山脈から北の北極海に延びたヤマル半島でトナカイの飼育をしている人が、マンモスの化石を発見しました。このマンモスは、発見者の奥さんの名前をとって「リューバ(Lyuba)」と呼ばれています。
 「リューバ」は、生後約半年から1年のメスの赤ちゃんで、体重50kg、体高85cm、全長130cmの小さなマンモスでした。1万年前ころに死んだのではないかとみられています。
 このマンモスは、日本の東京慈恵会医科大・高次元医用画像工学研究所(東京都狛江市)に輸送され、CTスキャンで体の構造が詳しく解析される予定です。
 マンモスは、絶滅してしまったゾウの仲間です。絶滅は大昔の話ではなく、1万年前ころ、もしかしたら4000年ほど前まで生きていたとも考えられています。紀元前1700年ころまで生きていたという説もあります。
 マンモスの骨は、古くから氷の中から掘り出されており、その存在は知られていました。18世紀になると、比較解剖学の創始者でもあるフランスのキュビエは、化石のマンモスと現在生きているゾウの骨を比べています。その結果、ゾウの一種であるが、現生種とは違う絶滅した種で「マンモス」と命名しました。1796年のことです。
 マンモスの化石は、シベリアだけでなく世界中から見つかっています。ユーラシア大陸だけでなく、アフリカ大陸、南北アメリカ大陸にも広く生息していました。アメリカ大陸に生息していたコロンビアマンモスは、大型で短毛で、最後まで生存していたマンモスとして有名です。現在ではマンモスの全種は、絶滅しています。
 多数見つかっているマンモスの化石をよくみると、人と深いかかわりがあることがわかります。
 フランスの洞窟にはマンモスの壁画があり、ドイツの遺跡からはマンモスを描いた石板が発見されています。ウクライナやポーランドではマンモスの骨で作られた住居跡が発掘されています。そして、アメリカから、マンモスの化石の骨の間から、石の槍の穂先が見つかっています。
 このような遺跡や化石から、昔の人類がマンモスを狩っていたことがわかります。そのため、人類が過度にマンモスを狩猟をしすぎたせいで絶滅したという説があります。しかし、絶滅の原因についても諸説あり、まだわからないことの多い古生物です。
 今回の氷漬けのマンモスが注目されているのは、保存状態が非常によいからです。もし氷河期の終わり(11,500年前ろ)ころの新しい時代に死んだ個体であれば、DNAが保存されている可能性が高くなります。
 今までも氷漬けのマンモスのDNAを抽出されてきましたが、いずれも古いものだったので、DNAが分解されて断片化していました。もし今回のマンモスに完全なDNAが残っていれば、DNAが入っている核を取り出すことができます。この核を現在のゾウの卵細胞のものと入れ替え、うまく発生させることができば、マンモスが復活します。冷凍された細胞からのクローン技術も、かなり進んでいるので、保存のよいDNAが手に入れば、マンモスを蘇らすことができるかもしれないのです。その期待が高まっているのです。
 マンモス復元に一番熱心なのが、日本なのです。冷凍のマンモスが日本の送られてくるのも、復元してくれるのではなかいという期待をもたれているためではないでしょうか。

・事実と原因・
更新世末期の約4万から数千年前にかけて、
マンモスは絶滅しました。
アメリカ合衆国のアリゾナ州から見つかったマンモスの化石から、
石の槍の穂先が見つかっています。
この化石は約1万2千年前のものです。
最後のマンモスは、紀元前1700年頃に、
東シベリアの沖合にある北極海(チュクチ海)上の
ウランゲリ島で狩猟されたという説もあります。
しかしこの絶滅が人間のせいなのか。
それとも氷河期の終わりの温暖化による環境変化なのか。
あるいは、コロンビアマンモスの化石では、
伝染病説が最近の有力な仮説だと考えられています。
マンモスだけでなく、生物の絶滅の原因は、
よく分かっていないものがほとんどです。
絶滅というひとつの事実と多数の原因についての仮説があります。
その謎は、マンモスのように多数の化石があったとしても
なかなか解き明かせないのです。

・講義・
いよいよ今週で大学の講義が終わります。
来週は定期試験期間になります。
それで学生たちは講義から開放されます。
教員は、成績のことがあるのでお盆まで忙しさは続きます。
しかし、今年は、非常勤講師がなくなったのことと
担当の大人数のクラスが4クラスから2クラスに減ったこと
などから比較的に楽になりました。
そのかわり、講義期間中に非常に忙しい思いをしました。
いずれにしても、楽に生きていくことはできないようです。