2007年5月17日木曜日

3_54 縞状鉄鉱層:思い出の石ころ3

 縞模様は、規則的な繰り返しでできます。ですから、その繰り返しがどのようなものであったかを探れば、縞模様から規則を読みとるとができるかもしれません。今回は縞状の鉄鉱石をみてきましょう。


 BIFと呼ばれる石があります。日本人、いや人類なら、いつもこの石の恩恵に与っています。石自体を見たことのある人は、少ないと思います。しかし、石からできたものは、非常に馴染みあります。
 それは鉄です。BIFとは、Banded Iron Formationの頭文字で、日本語では縞状鉄鉱層と呼ばれています。私のロッカーにも、きれいに磨いた板状のBIFがあります。
 石器時代の終わりとともに、鉄器時代がきます。それは5000年ほど前で、文明の発祥と時を同じくします。鉄が文明を支えてきたともいえます。そして現在の科学技術文明も、鉄が重要な役割を果たしいます。鉄ナシの文明など成り立たないでしょう。
 BIFは、大量にあります。現在の鉄は、BIFを精錬してつくっています。ですから、鉄に関しては資源不足になることはしばらくはなさそうです。
 私は、BIFをオーストラリア、カナダ、アメリカ合衆国、グリーンランドなどでみました。グリーンランドを除くと、BIFを露天掘りをしていました。特に印象的だったのは、1998年秋にいった西オーストラリアのハマスレーというところです。このときはBIFを見ることが目的の一つとしていたので、BIFを詳しく野外で観察できました。その時の標本が磨かれて手元にあります。
 ハマスレーでは、BIFを大規模に露天掘りしていて、採掘が終われば、元の状態にするために埋め戻すことまでされていました。近くには国立公園があり、BIFのガケを詳しく見ることができました。
 日本語の縞状鉄鉱層という言葉が示すとおり、縞状の模様をもっています。私の手元の標本も縞模様がきれいに見えます。BIFは、海底で堆積物としてたまってきたものです。BIFでは、鉄の成分の多いところと少ないところが、縞模様をつくっています。
 地球の大気には、もともと酸素がありませんでした。しかし20億年前ごろに光合成をする生物が進化し、海底で大量発生しました。するとそれまで海水中に溶けていた鉄の成分が、酸素ができることによって沈殿をつくります。ですから、世界のBIFの巨大な産地は20億年前ころのものがほとんどです。海水中に鉄がなくなると、酸素が大気中にでてきます。現在も光合成生物が盛んに酸素を作っています。それが酸素の起源であり、現在も量が一定に保たれている理由です。
 縞模様ができるのは、酸素の作られる量に変動があったためだと考えられます。例えば、季節や雨季乾季などの気候変化が繰り返しあれば、光合成生物の繁殖に大きな影響を与えことになるかもしれません。すると、酸素の生産の多いときには鉄の沈殿が多く、酸素の生産が少ない時は鉄の沈殿も少なくなります。このような生物の活動の変化が、縞模様を形成したと考えられます。
 私は、赤いオーストラリアの大地を深く削りこんだ谷のガケに、そんな悠久の時間と生命と地球の関わりを感じました。BIFの標本を見るたびに、ガケの思いが蘇ります。

・BIF・
私のロッカーにあるBIFは、分析をするために、
3cm×10cmの板になっています。
表面は、光るほどきれいに磨かれています。
鉄分の多いところは茶色からこげ茶色や赤褐色になり
少ないところは透明(黒っぽく見える)や白っぽくなっています。
縞は、規則的なところや乱れたところがあります。
しかし、全体としては縞模様が明瞭にみえます。
このBIFは、自然が作り出した造形で、
どこでも似たような縞模様ですが、
詳細に見れば一つとして同じところはありません。
不思議なものです。
手のひらに乗るようなものでも
自然の不思議さを感じることができます。

・実体験・
学生たちが実習の中で、子ども達のために実験を企画しています。
その企画を立て、子ども達を集め、実施するという一連の作業を通じて
地域の子ども達との連携をマネジメントすることを学んできます。
4人の教員がついて、今一緒に企画を考えています。
学生も教員も大変ですが、楽しんでいます。
実験が上手くいかなくって悩んでいる学生もいます。
問題点を何とか解決して成功して大喜びをしている学生もいます。
でも、成功も失敗も、実体験が重要だと思います。
初めてのことは何事も大変ですが、
成し遂げた時の喜びはひとしおです。
そんなことを学生と共に味わいつつあります。
こんな経験の積み重ねが、人間教育になるのだと思います。