2006年6月8日木曜日

6_46 宇宙人3:ETIとのコミュニケーション

 ETIの知性とはどのようなものでしょうか。知性が定義できないとしても、ETIとのコミュニケーションの方法はないでしょうか。

 ETIとのコミュニケーションを考えましょう。
 私たちは、ETIのことを何も知りません。いるかどうかも分からないのです。ここでは、もしETIがいるとしたらという仮定で進めましょう。
 ETIとは、地球外知的生命のことですから、知性があります。では、知性とは、どういう定義すればいいでしょうか。前回も考えたように、人類と他の生物を区別したり、人を特徴付けることすら難しいのに、地球外知的生命の知性を定義することは、なかなか大変なことです。知性の定義は、ここでは置いておいて、彼らは私たちの同じ程度に賢いということから考えていきましょう。
 彼らと、どのような方法でコミュニケーションしていけばいいでしょうか。コミュニケーション手段としては、宇宙でもっとも速い電波を使います。これは、ETIの知性に関する技術的な条件となりえます。
 電波を使うとしても、ETIとどのようにコミュニケーションすればいいのでしょうか。私たちは、ETIの文化も、知性の種類もわかりません。彼らとコミュニケーションをするには、日本語は通じないでしょう。もちろん英語もだめでしょう。さて、どんな言葉を使えばいいのでしょうか。
 電波でのコミュニケーションですから、ETIも電波技術を持っています。電波技術を獲得するには、一晩で一人の努力ですべての作り上げることは不可能です。多くの人が成し遂げた科学的な知識をたくさん積み上げてなければなりません。それができた知性体だけが、電波技術を扱えるのです。
 知識の積み上げには、何らかの言語や記述手法を使います。新しい知識の獲得には、科学的な考え方が必要です。電波を通信手段に持つということは、彼らは証拠と論理という科学の手法によって、ものごとを考えているはずです。
 この論理というものを使えば、言語がなくても知識の体系を伝えることができるはずです。私たちの科学の中にも、数学や論理学のように、科学者が日常生活に使っている言語に関係なく、論理的な記号によって記述する科学の体系があります。
 言い換えると、科学として論理的であるなら、すべて論理式で記述することが可能なはずです。このような論理による組み立てを、言語に見立ててコミュニケーションをしていけばいいはずです。
 まずは、私たちの科学の体系を、この手法で伝えればいいわけです。このコミュニケーションがうまくいけば、彼らも自分たちの科学の論理体系を同じ手法で伝えることができるはずです。いいえ、彼は私たちの同じほど賢いのですから、コミュニケーションしたいと考えたならば、同じ結論にたどり着くはずです。
 論理によるコミュニケーションとは、数学を小学校で教えるように、伝えていけばいいのです。まずは、1、2、3と数字を数えることから始まり、次は1+1=2などの足し算、次は四則計算をたくさんの実例を使って示せばいいのです。そして、さまざまな数学的処理を意味する記号と、その論理的内容を伝えていければ、私たちの数学の大部分を伝えることができます。
 これは、実は検証済みのことなのです。コンピュータの中で実際に行っていることです。少ない論理回路を用いて、非常に複雑な処理を、2進法という単純な電気信号でおこなっています。コンピュータで私たちが行っていることは、すべてこの方法でなされています。ですから、コンピュータでできることは、すべて伝えることが可能なのです。その手法を、そのままETIとのコミュニケーションに使えばいいのです。
 ただし、その内容が正確に伝わったかどうかは分かりません。もちろん論理的な部分は大丈夫なはずです。しかし、デジタル化された音楽や映像をみて、楽しい、美しい、悲しい、面白いなどという心の動きは、論理ではありません。これは、人間固有の感情です。その部分は伝わる保障はありません。まあ伝わらないと思っていたほうが無難でしょう。
 このようにみていくと、知性とは、もしかすると、科学的な考え方ができ、その成果を記録して、種として継承していくをいうような気がします。

・宇宙人シリーズ・
宇宙人シリーズもついつい長くなっています。
でも、もうしばらく続きそうです。
その存在すらわからない宇宙人について考えることは、
一種の思考実験とも呼ぶべきものです。
このような思考実験を通じて、ETIのことを考えながら、
同時に地球人類について考えているのです。
思考実験から、どうも私たちは、私たち自身について、
よく知らないということがわかってきます。
ETIよりも私たち自身が、もしかすると未知なる存在かもしれません。
でもこのような思考実験をすることによって、
ここでは知性をなんとくなく定義できたり、
思わぬ見返りがあります。
もう少し続けていきますので、お付き合いください。

・落ち着き・
6月ともなれば、本州ではそろそろ暑くなり、
梅雨の心配が始まるでしょうか。
でも、北海道はいい季節なので、
学校の運動会や大学祭がおこなわれます。
でも、今頃が、学校では、いちばん季節もよく、
落ち着いた時期ではないでしょうか。
我が大学の新学科も、そろそろ落ち着いてきました。
新学科の学生たちは、元気がいいのは変わりませんが、
何ができて、何ができないか。
何がしたくて、何がしたくないか。
何をすべきで、何をしてはいけないのか。
何に興味を持ち、何をあきらめるのか。
4月から5月まで1、2ヶ月は、それらがごちゃごちゃになって
とにかくあれもこれもやってみようと取り組んでいたのが、
整理されてくるからでしょうか。
やっと、収まるべきとことに収まったような気がします。
あと2ヶ月、前期の講義の後半が残っています。
一番学問に身が入るときでもあります。
教員としては、それに応えなければなりません。
大学が落ち着いてきたといっても、
気を抜けない時期でもあります。