2006年3月2日木曜日

3_43 雪考4:風向き

 3月ともなれば、風のない天気の日には、ぽかぽかと暖かい春の日が訪れます。しかし、曇の日に風でも吹けば、気温以上に寒さを感じ、冬に戻ったような気がします。では、この風は、どのようにして起こるのでしょうかみていきましょう。


 風は、私たちに季節の移ろいを教えてくれます。春一番は春の訪れを、木枯らしが冬の訪れを告げ、日々の天気や季節変化も、風が伝えてくれます。風が起こる仕組みをみてきましょう。
 風は、空気が動くことによって起こります。空気は、大気の圧力に差ができると動きます。このような気圧の差によって生じる力を、気圧傾動力といいます。同じ気圧のことろを結んだ等圧線によって、気圧差の程度を表すことができます。気圧傾動力が大きいほど、空気が大きく動きます。つまり風は強くなります。気圧傾動力は、高い気圧から低い気圧に向かって、等圧線に直角に働きます。
 ところが、不思議なことに、風は、等圧線に直角になっていません。例えば、冬型の西高東低の気圧配置ができたとき、等圧線は南北に混んで並んできます。もしこのような条件であれば、風は西から東に向かって吹くはずです。しかし実際の風は、北風と呼ばれるように、等圧線に平行な風が吹きます。風によってできる日本海のスジ状の雲も、北から南に向かって並んでいます。どうしたことでしょうか。
 そのわけは、地球の自転が、風の向きを変えているのです。地表では、自転によって進む方向を曲げようとする力が働きます。この力をコリオリの力(展向力)と呼びます。コリオリの力が、空気の動きにも働きます。風を起こす力は、気圧傾斜力とコリオリの力の2つの兼ね合いによって決まってきます。
 北半球では、等圧線の高い方から低い方へ空気の流れは、進行方向に対して右に曲げられていきます。南半球では逆に左に曲げられていきます。その結果、等圧線と平行に風が吹きます。このような流れを地衡流(地衡風)といいます。
 台風のように丸い低気圧では、気圧傾斜力とコリオリの力の他に遠心力も働き、傾度風と呼ばれる風が吹きます。北半球では、低気圧に向かって反時計回りに風が吹き、高気圧からは、時計回りの傾度風が吹きます。
 ところが、風はなかなか一筋縄にはいきません。複雑な風を起こすメカニズムがあります。それは、地形です。例えば、ビル街には、その地域の風向きとは違った、建物によって変化した複雑で強い風が吹くことがあります。この現象と同じようなことが、もっと大きな地形によって起こります。地形によって、大気と地表に摩擦力が生じ、それが風向きを変えていきます。
 風が吹く強さや方向は、非常に複雑なメカニズムになっていくことが予想されます。摩擦のない、地球の自転と気圧傾斜力だけの場合を考えれば、単純にすることができます。実際にこのような条件は、地表から1km以上の上空では達成され、地形の摩擦の影響を受けない大気の流れとなります。
 地表の摩擦がある地表付近では、摩擦が地形によって変化するので複雑になります。一般に、陸上では摩擦が大きく、海上では小さくなります。摩擦が大きいほど風の力は弱まります。大気の流れるスピードが遅くなるとコリオリの力も弱まり、等圧線に向かって、北半球では右前方に曲がりながら風が吹きます。その曲がり具合は、海上では大きく、陸上では小さくなります。
 このような総合的な影響の結果が、これが、気象衛星ひまわりなどで見える冬型の季節風の風だったのです。しかし、この冬型の風が、雪の原因でもあります。それは、次回としましょう。

・雪考シリーズ・
雪考のシリーズも、予想以上に長くなりました。
でも、これでほぼ必要な説明は終わりました。
次回でやっと豪雪の説明というか仮説を紹介できます。
2月最初の一番寒い時期から書き始めた雪考でしたが、
とうとう核心にたどり着きそうです。
シリーズを書いているうちに、
三寒四温になり、天気のいい日には、めっきり春めいた日になります。
しょうしょう、時期を逸しているかもしれませんが、
豪雪について、あと少し考えていきましょう。

・春はもうすぐ・
いよいよ3月となりました。
日本の風習として、3月が年度の終わりとなります。
大学では、卒業、入学の準備です。
わが大学でも入試や入学の判定、
卒業や進級の判定などが残っていますが、
あと1ヶ月でいよいよ1年が終わるという気分になります。
そして、着々と新年度を迎える準備が始まっています。
春はもうすぐそこまで来ています。