2005年12月29日木曜日

5_49 第四紀の復活?2:第三亜代と第四亜代

 今回の第四紀の廃止という国際地質科学連合の国際層序委員会の決定は大きな衝撃が走りました。そのための議論が各所で行われました。

 時代区分の中で、第四紀という時代は、地質学だけが扱う時代ではなくなってきています。例えば、環境問題で、氷河期や長期の気候変動を考えるためには、重要なデータ収集の時代となっています。また、人類が登場する時代ですので、人類学や考古学でも研究対象となる時代であります。現在の自然を研究しているときでも、その源泉をたどれば、第四紀という時代にかならずたどり着きます。人文科学の歴史に関する記述も、たいてい第四紀からはじまります。
 第四紀という時代を研究している人たちが集まっている学会があります。国際的な学会として第四紀研究国際連合(INQUA)という組織があり、日本でも第四紀学会があります。第四紀学会には、地質学だけでなく、考古学、気象学、生態学、地理学、人類学など多様な分野の研究者が参加しています。学会の構成員から見ても、第四紀という時代は、もはや地質学だけの分野の研究対象ではなく、多くの学問分野で必要な時代区分となっています。ですから、第四紀の廃止には、大きな社会的影響があります。各所から反論、意見が出されました。
 最終的に、第四紀研究国際連合と国際地質科学連合の国際層序委員会によるタスク・グループで議論して、票決に基づき、次のような結論が出されました。
・第四紀は国際地質時代区分で正式な時代と層序区分とする
・時代は鮮新世ゲラシアン期の始まり(約259万年前)から現在までとする
・時代区分におけるランクは、新生代内の亜代か亜紀とする
というものでした。
 それを受けて、国際層序委員会では、議論を経て票決をして、2005年9月28日付けで国際地質科学連合長に報告しました。そこでは、第四紀が新生代の正式な時代区分であるということを強調されています。その上で
・第四紀は260万年前(鮮新世ゲラシアン期のはじまり)から現在までとすること
・地質年代の区分で新第三紀(ネオジン)の最上部で亜紀に相当(新生代における第三紀と第四紀と区分のレベル)させること
というものです。
 その報告には、第四紀を含めた層序表がつけられています。新生代は第三紀と第四紀が260万年前に亜代として区分されています。そして、その下の紀のランクとして、パレオジンとネオジンがあります。
 この問題の決着は、公式には国際地質科学連合の長がOKを出せばいいことなのか、総会にかけて承認を得るべきことなのか、どのような手続きを経るべきものなのかは、私は詳しく知りません。しかし、国際層序委員会の結論は重いはずです。ですから、決まるとすると、提案どおりになり、だめだと再度議論となるでしょう。
 もし国際層序委員会の結論通りだとすると、新生代の時代区分は次のようになります。

第四亜代|       |
    | ネオジン紀 |
--------|       |--260万年前
    | ----------------2300万年前
第三亜代|       |
    | パレオジン紀|

という、非常に複雑な構造となります。
 これでも問題がないわけではありません。亜代という年代区分が導入されていること、新生代が他の中生代や古生代が整理されてきたのに、より複雑になっていること、第四亜代が、ネオジン紀のひとつしたの更新世の後期の時代から始まり、重複していることなどです。やはり、第三亜代と第四亜代は浮いた時代区分です。慣例を残すために、無理くりつくられた気がします。今まで整備されてきた時代区分は、学問の積み上げのものに作り上げられました。第四紀は、今までの学問の積み上げもありますが、今までの学問への影響を少なくするために残されたという気がします。今回の決定が最終的なものかどうかわかりませんが、後に憂いを残さなければいいのですが。
 ひとつの時代区分について長々議論されたのは、やはりこの第四紀の廃止という考えの衝撃が大きかったことが伺われます。そして、このような複雑な構造になっても、第四亜代として残そうというのは、第四紀という時代が、人類にとって重要なのだということです。それは、自然の科学と人の科学が出会う時代だからなのかもしれません。
 このような議論を通じて、第四紀という時代はどういう時代なのか、そしてそれは、なぜ必要なのかを考える機会になればいいと思います。

・人間の都合・
時間を人為的に区切るということは、
やはり人間の都合で自由にできます。
ところが人間の都合で自由にできるのなら、
論理的にしていけばいいのですが、
そうもできないのが人間の都合でもあります。
人間というのは、なかなか一筋縄ではいかないものです。
そこが人間の困ったところであり、
いいところでもあるのかもしれませんが。

・今年最後のマガジン・
今年も、これが最後のメールマガジンです。
長いようで短かった2005年も、もうすぐ終わりです。
皆様にとっては、どのような1年だったでしょうか。
なかなか一言ではいえないでしょう。
私だってそうです。
いいこと、悪いこと、どちらともいえないこともありました。
でも、そんなことを振り返れるのは、
12月も押し詰まった、暮れの時期ではないでしょうか。
そして次の1年に向けて決意を新たにするのではないでしょうか。
もちろん振り返っても、1年を展望しても、
実際にどうなるかは自分の毎日の努力によるものです。
でも、時の流れにわざわざ区切りをおいているのですから、
その区切りを有効利用すればいいと思います。
それが大晦日や正月の有効な使い方ではないでしょうか。
私もそんなふうに利用しようと考えています。
ではよいお年を。