2005年7月7日木曜日

1_46 古生代から中生代へ3:生物の変化(2005年7月7日)

 古生代からの中生代にかけての異変は、大きなものでした。生物の絶滅を伴っていたのですが、そこでは生物の型というものの交代劇も劇的に起こっていたのです。

 古生代から中生代にかけての時代境界(P-T境界と呼ばれています)では、確実な原因はまだ特定されていませんが、大絶滅がありました。その絶滅は、化石の証拠がたくさん見つかるようになる顕生代(古生代以降)では、最大のものでした。
 大絶滅があったとしても、生物が全滅していなければ、生き残った生物が、次の時代の新しい環境に適応して、進化を遂げていきます。生き残った生物の多様化への新たな旅立ちとなります。
 絶滅の程度が大きければ大きいほど、新しい生物は独自の多様化、つまり以前とは違ったタイプの生物の進化への道をたどることが可能となります。そんな変化が、P-T境界では起こりました。
 顕生代の生物は、大きく3つに分けられています。化石の資料が豊富な海の動物を基にして分けられたものです。カンブリア型、古生代型、現代型の3つの型があります。「3」といえば、顕生代も古生代、中生代、新生代の「3」つに分けられていますが、それぞれに対応しているのでしょうか。対応していればわかりやすいのですが、型の名前を見てもわかるように、対応していないのです。
 カンブリア型生物とは、カンブリア紀に出現した多様な生物のことです。体に硬い組織を持つ海生無脊椎動物が繁栄しました。特徴的な動物として、三葉虫や古盃動物(礁をつくった生き物)が挙げられます。カンブリア型の生物には、現在知られている無脊椎動物のすべての種類(門(もん)とよばれる分類の基準で)が出そろっています。カンブリア型生物はカンブリア紀に栄えたのですが、オルドビス紀以降になると徐々に勢力を失っていき、古生代の終わりに絶滅しました。
 オルドビス紀には、次の古生代型の生物が出現してきます。その変化は、突然ではなく、カンブリア型生物がいたのですが、徐々に古生代型生物の勢力が優勢になって、入れ替わるように変わっていきました。古生代型生物は、古生代型サンゴや古生代型アンモナイト、フズリナ、三葉虫など、海の生き物を主としたものでしたが、植物は海から陸へ進化していきました。
 現代型生物も、やはりオルドビス紀から出はじめていますが、栄えるのは中生代以降です。現代型生物は、新しいタイプの生物で、現在の生物につながるものです。
 このような3つの生物型の変化は、大きな枠組みの生物の変化ですから、徐々に変わっていくはずなのですが、古生代と中生代の境界(P-T境界)の変化だけが急激に起こっています。カンブリア型生物がいなくなり、古生代型生物生物の勢力が弱まり、現代型生物が主流となります。これは、P-T境界の大絶滅がいかに大きなものであったのかということを示しています。
 カンブリア型や古生代型の生物は、P-T境界で起こった異変を乗り越えるには十分な能力をもっていなかったのです。大異変を乗り越え、そして次の新しい環境に適応できる能力をもっていたのは、現代型生物だったのです。つまり現代型生物以外のライバルは、P-T境界でほとんどいなくなったのです。そして中生代以降現在まで、現代型生物が地表の生物の支配者となっているのです。

・7月の北海道・
7月になりました。
2005年ももう半分過ぎたことになります。
本州はまだ梅雨前線の影響を受けているでしょうか。
北海道の初夏はすがすがしく気持ちがいいです。
6月には蒸し暑くて耐えられない日がありましたが、
晴れの日は乾燥して風でも吹けば爽快に気分になります。
春から初夏にかけてのイベントは終わりました。
大学は前期の終わりに向けて最後の追い込みの時期です。
教員は試験の準備や、今までのレポート、出席などの
整理が必要になってきます。
なんとなく7月は忙しい時期です。

・セプコスキー・
前回、膨大な量の古生物のデータベースをつくった
セプコスキーの話をしたのですが、
今回紹介した3つの生物型は、
セプコスキーとミラーが1985年に提唱した区分です。
エッセイでは、海の動物と書いたのですが、
正確には、海生の底生動物を用いた区分です。
この3つの生物型の考えを用いると、
大陸棚で起こった顕生代の生物の交代劇がうまく説明できました。
しかし、この区分によるタイプ分けは、
P-T境界の大絶滅も示していたのです。