2005年6月16日木曜日

2_35 進化の原因:進化1

 進化という考え方が生まれてから140年以上たちます。しかし、私たちは本当に進化を解明したのでしょうか。進化の本質について、考えていきましょう。

 生物の進化について、1859年にダーウィンの有名な「種の起源」が発表され、進化論が唱えられて以来、優秀な多数の生物学者が140年以上にわたって考え続けてきました。その結果、生物が進化してきたことは、確からしいことがわかってきました。もちろん創造説などを支持する人は、宗教的立場から反対していますが。
 進化は過去にだけ起こっただけでなく、これから未来に向かって起こっていくでしょう。そして現在進行中の進化もあります。今起きている進化を調べている研究者もいます。ウイルスや昆虫など世代交代の早い生物では、進化が起こっていることが確かめられています。身近なところでは、病気の原因となっているウイルスに対して、以前はよく効いていた薬が、効かなくなってきたという話を聞いた人もいるでしょう。これは、ウイルスが薬に負けないように進化してきたものです。
 しかし、現在生きている世代交代の期間が長い哺乳類などの生物では、現在進行中の進化は調べにくいのですが、家畜やペットなどの品種改良は、進化のメカニズム利用しているものです。人為的に進化を起こしたといえるでしょう。進化の研究の初期には、このようなものが利用されてきました。
 化石を調べることによって、多くの生物種がどのように進化してきたかを、知ることができています。過去にすでに起こって、終わってしまった進化も、調べることができます。化石という証拠は、化石がどのような順番に出てくるかを知り、そこから生物がそうのように変化してきたかを推定していきます。その変化を進化と呼んでいるのであって、なぜ進化したのかという原因を化石は示しているのでありません。
 ダーウィンが示した自然淘汰という考え方は、進化の要因のひとつの可能性を示しています。自然淘汰とは、環境に適合した生物が生き残る確率が高く、それが繰り返されると、新しい種が生まれるというものです。自然淘汰という考え方は、一見環境変化が種に進化をもたらしているようですが、本当にそこには因果関係が存在するのでしょうか。その因果関係を証明するのは、実は難しいことです。
 もし、自然淘汰が進化の原因だとしても、自然淘汰の考えから、脊椎動物が、魚、両生類、爬虫類、哺乳類というような大きな流れ(大進化と呼びます)が、なぜ起こったのかを教えてくれるでしょうか。大進化は偶然の積み重ねでしょうか。もちろんそう考える研究者もいます。一方、大進化には、なんらかの必然性が働いていると考える研究者もいます。では、自然淘汰と大進化にはどんな必然性があったのでしょうか。よくわかっていません。
 現在唱えられている進化論には、解決されていない問題がいろいろあります。自然淘汰と遺伝子への記録のメカニズム、遺伝子の突然変異が自然環境にうまく適応しているように見える謎、似た環境では別種の生物でも似た形態を持ちうること、などなど。考えると進化にはわからないことがいっぱいあります。
 実のところ、進化の実態はよくわかっていないのが現状ではないでしょうか。生物が進化しているのは確かですが、進化論というべきものは、まだ完成しているとはいえません。私たちの進化に関する知恵は、まだまだ足りません。進化論をもっと進化させる必要があるようです。

・詳細さと大胆さ・
進化とは、長い間研究されてきたおかげで、
非常に詳細に解明されていることもたくさんあります。
分子レベルの解明が進められていることもあって、
遺伝子とその進化のメカニズムについても
深く考えられています。
かたや、長い時間にわたって起こってきた大進化についても、
かなり詳しくわかってきました。
いまや、非常に微小な部分の情報、
非常に長い時間にわたる変化、
多様な情報が、進化論には付け加わりました。
しかし、化石による情報、
とくに大型の陸上生物に関する情報は、非常に断片的です。
時には骨の切れ端ひとつのある生物種を決めていることもあります。
どんな状態の化石で、それなりの根拠をもって、
ある生物の情報を得ているわけです。
それも重要な証拠ではあります。
このように少ない部分的な化石で種が同定されているのは
特別な例ではなく、大型の化石では極当たり前のことなのです。
非常に断片的な証拠で、大進化が構成されていることも確かです。
詳細さと大胆さによって進化は語られているのです。
これは、いた仕方のないことだとは思います。
しかし、なんとなく不安を感じているのは、私だけでしょうか。

・進化の進化・
いまや時間と共に変化してきたものについて、
生物に限らず、「進化」という言葉があちこちで使われています。
そして、時には、いや多くの場合、そんな「進化」という言葉には、
後の時代に進化したものの方が、より高度である、より進んでいる
という考えが潜んでいます。
本当の進化には、そのような価値観は含まれていません。
もとの生物種と何らかの原因で違ったものが誕生したとき、
進化したという言葉を使います。
ただそれだけです。
そこに人間的な価値感を入れないことが重要です。
でもいまや進化という言葉は、
日常語となり、いろいろなニュアンスが加わってきました。
これは、「進化」という言葉の進化なのでしょうか。