2005年5月12日木曜日

5_42 活火山

 かつて火山の区分には、活火山、休火山、死火山という3つがありました。しかし、活火山以外の、休火山、死火山という用語は使わなくなりました。まさに、死語となりました。しかし、活火山という語は現在新たな定義で使われています。活火山という言葉を考えてみました。

 火山噴火予知連絡会が、国際的な研究動向にあわせて、平成15年1月21日に、活火山を「概ね過去1万年以内に噴火した火山及び現在活発な噴気活動がある火山」という定義に改定しました。その結果、それまで86個あった活火山が、108個になりました。正式に死火山や休火山が消えたのは、2年ほど前のことなのです。
 火山噴火予知連絡会というのは、火山噴火があるとニュースでよく聞く組織の名称ですが、「噴火予知に関する研究・開発の促進、火山活動の総合判断、研究観測体制の総合的検討を行うために」昭和49年に設置されたものです。研究者と防災関係者、30名以内で構成されています。
 平成15年まで火山は、歴史的な記録がある2000年前くらい目処にして、活動期録があるものを「活火山」、活動記録がないものを「死火山」、活動記録があるが現在火山活動をしていない火山を「休火山」と呼んでいました。しかし、このような区分は、人間のライフサイクルと比べると十分はスパンをとっているように見えましたが、火山のライフサイクルは、数100年単位ではなく、数1000年、数万年単位となることから、このような区分は適切でないことがわかってきました。
 そのような問題は、1979年(昭和54年)に、「死火山」とされていた木曽御嶽山が水蒸気爆発を起こしたことが、契機となり表面化しました。それまでの火山の区分が誤解を与えること、現状にそぐわないこと、その後の研究の進展によって、多くの火山は2000年以上の活動周期をもつこと、などの理由から見直しがされたのです。
 現在、火山噴火予知連絡会では、活火山の定義は、「概ね過去1万年以内に噴火した火山及び現在活発な噴気活動がある火山」とされています。しかし、これにも問題がないわけではありません。火山のライフサイクルを考慮して、1万年という期間を設けたのですが、それで十分という保障はありません。
 しかし、防災という側面を考えたとき、現段階で噴火の危険性がある程度判定できるものとして、「活火山」という用語は必要となります。防災のための監視を、どの火山で、どの程度すべきかを示唆してくれるからです。
 その防災のために「活火山」は、A、B、Cの3つのランクがつくられ分類されています。ランクは、「過去100 年間に組織的に収集された詳細な観測データ」によって計算された100 年活動度指数と、「過去1万年間の地層に残るような規模の大きい噴火履歴(活動頻度,噴火規模及び活動様式)」によって計算された1万年活動度指数から、分類されています。
 ランクAは13火山、ランクBは36火山、ランクCは36火山、対象外として23火山があります。また、各火山のうち、12の火山では、0から5の6段階の「火山活動レベル」を、それぞれの火山で気象庁のホームページで常時掲載されています。
 火山活動というのは比較的理解しやすい概念です。地下にあったマグマや火山性ガスが地表で活動をはじめたものが火山活動です。火山活動によって形成された山が火山です。しかし、活火山はどうも一筋縄ではいきません。活火山は、一応上記のような定義はできますが、活火山に上げられたから今後噴火するかどうかはわかりませんし、今まで活火山とされていない火山でも噴火するものがあるかもしれません。あるいは、まったく今まで火山と関係のなかった地域で火山活動が起こることこともありえます。
 たとえば、富士山も、最初から高い山があったわけではなく、あるときから火山活動を開始して、現在のような火山になってきたはずです。あるときに始まりがあるのです。ですから、活火山とは、言葉上の定義ができたとしても、それで十分といういうわけではありません。もちろん防災の面からもです。
 これが、私たちの知識の現状なのかもしれません。火山噴火の予知は、だいぶ進んできました。特に火山観測網が十分なところでは、噴火の前にはさまざまな予兆的現象が記録されていきます。しかし、活火山は、どれほど監視しても、いつどこでどれくらいの噴火が起こるかを正確に予知できるとは限りません。
 活火山という言葉から、いろいろなことを考えてしまいました。

 今回のエッセイは、気象庁のホームページと、山里 平さんの
http://homepage3.nifty.com/hyamasat/levelrank.html
を参考にさせていただきました。

・休火山・
前回のエッセイで「休火山」という言葉を
不用意に使ってしまいました。
Aihさんから、その指摘を受けました。
この「休火山」という言葉は、
上で書いたように今では使わないのです。
以前に私もこのことをどこかで書いたことがありました。
まったくもって、私の不注意でした。
反省の意味をこめて、このエッセイを書きました。
申し訳ありませんでした。
改めてお詫びします。

・研究者の苦悩・
火山の定義はできます。
過去に活動した火山も、その定義に入れることができます。
しかし、古い火山の多くは、もはや活動しません。
では、活動しない火山と活動する火山は、
どこで線を引けばいいのでしょうか。
現状の科学では、線を引けません。
自然はそれほど単純ではないようです。
したがって、活火山の認定は、
人間への危険性という点に配慮して考えられます。
過去の火山の研究から、
「1万年」というタイムスパンを
火山活動のひとつの目安としたわけです。
しかし、その「1万年」という区切りは、
経験則とでもいうべきもので、科学的根拠はありません。
ですから、活火山として認定されてないから
活動しないという保証はないのです。
そこが困ったところです。
学術的には火山として
たとえば、いつごろからいつごろまで、
どのような活動して、現状はどうなのかを示せば、
用が足りるかもしれません。
しかし、人間生活への影響を考えると、
そう大雑把なことではすまなくなります。
学問が現実に、人間生活に応用、適用されるときの
苦悩がそこには、感じられます。
そして、研究者の苦悩も見え隠れしているように思えます。