2004年12月9日木曜日

3_38 列島の岩石:サブダクション・ファクトリー3

 前回までに、海底の岩石は玄武岩で、大陸の平均的な岩石は、列島のカルクアルカリ安山岩の化学組成に似ていることを示しました。それはトーナル岩と呼ばれるもので、実際に日本列島でも見つかっているという話をしました。今回は、列島の岩石について見ていきましょう。


 列島には、さまざまな岩石があります。火成岩、堆積岩、変成岩、それこそありとあらゆる岩石が見つかります。
 その比率は、理科年表のデータからみていくと、堆積岩が58%、火成岩が38%、変成岩が4%となっています。これは、どのようにして求めたかというと、日本の地質図から上の3種の岩石を読みとり、その岩石の分布する面積を、岩石の占める比率とみなしたものです。
 堆積岩が一番多く、ついで火成岩、変成岩となっています。堆積岩が多いのは、日本列島が、つねに激しい風化や浸食を受けていることを示しています。陸地はどこでも程度の違いはあるでしょうから、風化や浸食を受けているはずです。しかし、多くの堆積岩ができるということは、激しく変動している地域であるといえます。その変動は、火山であったり、断層であったり、褶曲であったり、大規模な大地の営みが激しく起こっている場所です。このような地域を変動帯と呼んでいます。日本は変動帯なのです。
 日本の火成岩の内訳をみると、火山岩が26%、深成岩が12%となり、火山岩が深成岩の2倍以上あります。ですから、日本列島の現在見られる姿は、火山岩で特徴づけられているといえます。
 深成岩はマグマ地下深部でゆっくりと冷えてできたものです。その中には列島の下で新たにつくれた深成岩がたくさんあります。深成岩の中では、花崗岩が圧倒的に多くなります。深成岩が地表に顔を出すには、上にかぶさっている地層や岩石が、大地の営みによってなくならなければなりません。新しい時代にできた深成岩が、地表に顔を出しているのは、上で述べた侵食によるものです。
 マグマの活動の激しい日本列島では、現在も花崗岩がつくられているはずです。多くの花崗岩は、まだ地下にあり、地表に顔を出していないのですから、深部には多くの花崗岩があると思います。でも、それは私たちにはわかりません。
 堆積岩も変成岩も、元になる岩石があったわけですから、その元をたどれば、いくつの岩石を経由するかはわかりませんが、最後には火成岩にたどりつくはずです。火成岩が日本列島の岩石の特徴を決めると考えられます。
 まずは、深成岩として花崗岩がたくさんあることは、心にとめておきましょう。列島のマグマの特徴を、多少の誤差があるでしょうが、現在活動している火山のマグマが代表しているとみなしましょう。そのマグマがどのような性質のものかを見ていきます。それには、現在(第四紀の火山とします)の火山岩の性質をみればいいいことになります。
 日本列島も厚い地殻のある地域や、薄い地殻の地域などさまざまですが、典型的な列島として、厚い地殻ある東北地方を列島の代表としてます。玄武岩から流紋岩まで幅広くありますが、安山岩が圧倒的に多くなっています。そして安山岩もカルクアルカリ安山岩と呼ばれるものが多くなっています。こうして、とうとう列島のマグマが、カルクアルカリ安山岩をつくる性質のものであるとういことにたどり着きました。
 3回の話で、地球の各地の岩石の様子をみてきました。さて、次はいよいよサブダクション・ファクトリーでの大陸地殻製造工場の説明です。

・異常・
先日の異常な低気圧で、本州はとんでもない風と陽気が襲い、
北海道にはドカ雪が降りました。
そして、週明けの7日には、北海道で、なんと雨が降りました。
6日の朝は、雪が凍りアイスバーンになっていたのに、
なんとも移ろいやすい天候でしょうか。
このようなことをいうと
今年は夏暑くて、台風が多く、地震が多いなどと思い起こし、
地球はどうも異常をきたしている、という意見がでてきそうです。
しかし、確か去年と一昨年の夏は、暖冬、冷夏で
異常気象の話題がありました。
毎年、何らかの天候に異常があるようです。
いつの時も、人は、平年と比べてその年の天候の特徴を考えます。
そしてその特徴が際立っていると、すぐ異常だということをいいます。
地質学からみると本当の異常は、
大絶滅が起こすようなものだと思いますが、いかがでしょうか。
人類が気候の記録をとりはじめてから、
あるいは文字で記録を残しはじめからの変化は、
地球の異常を語るには、あまりにも短すぎます。
それをついつい地球という言葉を重ねて、その異常に重みをつけようとします。
地球という言葉がつくと、私は、ついつい
もっと大きな異変がありましたよ、といいたくなります。
大きなお世話でしょうか。

・事実と真実・
Kogさんから、メールをいただきました。
それは、列島の岩石が大陸になっていくという考えが、
昔の造山運動で語られていたものに似ているのというものでした。
それに対して、私は次のような返事を出しました。
「昔の造山運動は、大地の上下動の垂直運動で
すべての地質現象を説明しようとしたものです。
一方、プレートテクトニクスは、水平運動を原動力としてます。
しかし、基本となる地質学的データは、
いつの時代も、野外調査から得られた事実です。
ですから、そのような事実は、いつまでたっても不変のままです。
また、事実から見えてくる相似性もかなり事実に近い考えのはずです。
大陸周辺部の造山帯が、大陸に付け加わり、
大陸成長していくというのは、昔の造山論の中にありました。
事実に近い相似性も不変に近いのでしょう。
造山論は、当時得られていた事実
もしくは、相似性から作り上げられたモデル、思考です。
事実が増え、そして多様な相似性が得られてくると
そのモデル、思考も自ずから変化していくのでしょう。
季節は移ろい、自然も変化します。大地すら時間とともに変化します。
さまざまなタイムスケールでの変化の集積が、今をつくっています。
比べるまでもなく、もっとも移ろいやすいものは人間の思考の方です。
私たちの知恵は、いったい、いつになったら、
真の自然の姿を見ることができるのでしょうか。
でも、知恵が変化していくので、科学者の興味も尽きないのでしょう。
そしてその延長線上いる私も、それが飯のタネとなるのです。」
というものでした。お粗末さまでした。