2004年12月30日木曜日

1_37 原生代2:海水のマントルへの逆流(2004年12月30日)

 地質時代シリーズ、原生代の2回目です。今回は、海水がマントルへ逆流しだした事件について紹介します。

 原生代後期、10~6億年前に大事件がおきました。それは、顕生代への移行期(エオカンブリアンとも呼ばれています)の頃でした。大事件がおこったという証拠として、氷河に関係した地層と陸や浅い海でたまった地層などがあります。
 氷河に関係した地層には、ティライトなど各種の氷河堆積物がありますが、それは地質時代シリーズの次の回で詳しく紹介します。陸や浅い海でたまった地層の証拠としては、蒸発岩(石膏、岩塩など)、赤色砂岩、正珪岩(オルソクォーツァイト)と呼ばれる岩石がみつかります。
 蒸発岩とは、内湾や湖で、海水や水に溶けていた成分が、水分が干上がることによってできたものです。そこには、暑く乾燥気候があったことが分かります。乾燥気候は、大きな大陸の存在を意味します。赤色砂岩は、干潟のような酸化しやすい環境でできた堆積岩です。正珪岩(オルソクォーツァイト)とは、よく円磨された石英の粒からだけでできたもので、砂漠のようなところできた砂がたまってできたものです。
 これらの証拠を詳しく調べていくと、2つの事件がおこったことがわかりました。一つは、7.5億年前に起こった海水のマントルへの逆流と、もうひとつは、7億5000万年前~5億8000万年前にあいだに起こった全球凍結(スノーボールアース)というものです。
 海水のマントルへの逆流は、浅い海でたまった地層が大量に形成されたことと、変成岩の中に見られる鉱物が時代変化していることの2つから推定されています。
 大量の堆積物の形成されるには、大きな河川が多数必要で、これは陸地が広くなったことを意味します。つまり、海水が減った可能性があるのです。上で述べた赤色砂岩や正珪岩(オルソクォーツァイト)は、大陸が広がり、その大陸が海面上にあったことを示します。
 海水の逆流は、地球の冷却が、その原因だと考えられています。地球は、内部に蓄えている熱を、マントル対流として地表に放出しています。地球が今より熱を持っていて暖かかったときは、水を含む鉱物がプレートの沈み込むときに分解されていました。ところが、地球が冷めることによって、水を含む鉱物がプレートと伴にマントルに沈み込めるようになりました。それは、地表に出てきた沈み込み帯で形成された変成岩の中の鉱物の種類が時代変化として見られるということです。それが、7億5000万年前頃に見つかりました。その頃に、海水がマントルに逆流をはじめたのです。
 7億5000万年前ころから5億5000万年前ころにかけて、海水は徐々に減っていきました。海の深さにすると、200~300m分の海水が、マントルに入ったと考えられています。そのために、陸地が広がったのです。陸地は地球の表面積の10%くらいだったのが、現在の30%くらいにまで広がったと推定されています。
 水を含むようになったマントルは膨れ、陸がより上昇します。広い大陸ができ、砂漠や氷河もできるという多様な陸上の環境が形成されます。大河の形成もおこり、堆積物もより多く形成されます。
 広がった陸地から、大量の陸の成分が溶け込み、海水の塩分濃度が上昇したと考えられています。また、堆積物が増加すると、その中に含まれていた有機物が分解されずに、岩石中に残っていきます。これは、炭素が、大気-海洋-生命のサイクルから取りのぞかれることになり、大気中の酸素が増加していくことになります。
 マントルに水が入ると、マントルは軟らかくなり、暖かいマントルが上昇しやすくなり、火山活動が活発になります。その結果、マントルに逆流する水と、マグマの活動によって、新しいマントルの安定状態ができ、海水の減少も止まります。このような安定状態に5億5000万年前ころに達したと考えられます。
 全球凍結(スノーボールアース)については、次回紹介しましょう。

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この1年間、購読ありがとうございました。
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このメールマガジンは2000年11月末にスタートして
4年以上が経過しました。
毎週書くことが習慣となってきました。
時間がないときは、書くのがつらいこともありました。
でも、興が乗ると、2、3回分を一気に書くこともありました。
このメールマガジンを書くことが、
自分のペースメーカーのような役割を持ってくるようになりました。
私自身にとって重要なものとなっています。
その背後は読者がおられることが、
やはり何ものにも換え難い重みがあります。
どうもこの1年間も購読いただきありがとうございます。
よろしければ来年も購読をお願いします。
では、よいお年をお迎えください。
新年号は、1月6日発行の予定です。

・新しいメールマガジンの発行・
前回もお伝えしましたが、新しい月刊メールマガジンを発行します。
1年間、暖めた企画で、「大地を眺める」というものです。
大地の景観を、地形や地質のデータから眺めたら、どう見えるか、
毎回、日本の各地を題材にして見てきたいと考えています。
固いものではなく、読みやすいエッセイで綴ろうと考えています。
地形を鳥瞰しながら、大地の造形に隠された仕組みに、目を向けます。
2005年正月に創刊特別号を発行するつもりです。
毎月中旬に連載をお送りします。
http://terra.sgu.ac.jp/geo_essay/index.html
から申し込めますので、よろしくお願いします。