2004年12月23日木曜日

1_36 原生代1:地球の特徴の形成(2004年12月23日)

 地質時代シリーズです。今回は、原生代です。原生代は、現在にいたる地球の特徴がつくられた時代です。3回にわたってみていきます。

 原生代は、太古代と顕生代の間の時期です。原生代のはじまりは24億5000万年前で、終わりは5億4200万年前となります。原生代の特徴は、一言でいうと、現在にいたる地球の特徴がつくられた時代といえます。具体的には、大気の改変(太古代と原生代の境界の事件)、生命の関係する岩石の形成、大陸の形成、大量の堆積岩の形成、の4つが挙げられます。
 順番に見ていきましょう。大気の改変とは、太古代と原生代の境界の時代に起こった事件です。その事件は、その時期に特徴的に現れる縞状鉄鉱層、ストロマトライト、赤色砂岩が、形成されていることから推測できます。これらの証拠は、光合成をする生物が、浅海に大量発生したことを示しています。つまり、大気が変化してきたということです。
 酸素の急増によって、酸化に対応できた生物だけが生きのびて、繁栄しました。それは、ミトコンドリアを細胞内に持つことです。もともとミトコンドリアは一つの生物でした。それが他の細胞に入り込んで共生しました。入りこまれた生物は、住みよい環境と安全を与え、ミトコンドリアは酸素を処理しました。DNAを区別すためでしょうか、ミトコンドリアに入りこまれた生物は膜の中に入れました。これが真核生物の誕生です。21億年前ころに起こったと考えられます。
 酸素を作った葉緑体やミトコンドリアを体内に持つことによって、生きのびただけでなく、酸素の強力な化学反応のエネルギーを有効に利用できるようになりました。このような新しい機構をもった生物は、大型化できるようになったのです。
 その結果、縞状鉄鉱層、ストロマトライトや石灰岩など生命の関係する岩石が形成されはじめます。また赤色砂岩は大気に酸素が増えた証拠だと考えられています。
 原生代の地層から、28億年前と18億年前に激しい火成活動が起こったことがわかります。このような激しい火成活動は、地球内の何らかの事件に対応しているはずです。28億年前と18億年前頃の2つの事件は別の原因に夜と考えられています。
 28億年前に起こったこととは、マントル対流が、二層対流から、一層対流へ変わった事件だと考えられています。
 一層対流とは、沈み込んだプレートは、670km(上部マントルと下部マントル境界部)にたまり、結晶がより密度の高いものに変化した後、重くなって沈みます。その反動として、核とマントルの境界部から、暖かいマントルが上昇してきます。
 対流の直径にプレートの大きさが、匹敵すると考えられています。二層対流の頃は、700kmくらいのプレートと大きさになり、一層対流になると、3000kmくらいのサイズになります。このサイズのプレートで地球の表面を覆うと、10枚くらいのプレートの数になります。この数は、現在のプレートの数に一致します。
 18億年前の事件は、ウイルソンサイクルがスタートした時期と考えられています。
 ウイルソンサイクルとは、カナダの地質学者ツゾー・ウイルソンが提唱した、海洋プレートの一生をプレートテクトニクスという考えで説明するときに生まれた考えです。
 地球内部の熱の放出は、物質の対流(マントル対流)でおこなわれます。この対流の出口にあたるのが海嶺です。海嶺では新しい地殻がつくられています。地殻とマントルの一部は、かたい板(プレート)として地球の表面を移動します。このようなプレートはリソスフェアともよばれます。10数枚のプレートの水平運動によって、さまざまな大地の営みを考えることをプレートテクトニクスといいます。
 太古代にも堆積岩はあったのですが、その量は少なかったと考えられています。太古代は、大きな大陸はなく、列島(島孤と呼ばれる)や、せいぜい小さな大陸程度(マダガスカル島程度)のものしかなかったようです。大量の堆積岩できはじめるのは、原生代になる直前の28億年前頃からです。大陸には、原生代の初期から中期にかけて、堆積岩たくさん分布します。堆積岩がたくさん形成されるためには、広い陸地がなければなりません。つまり広い大陸が形成されたことを意味します。
 18億年前には、最初の超大陸ヌーナ(ローレンシアと呼ぶ人もいます)が誕生します。ヌーナとは、North Europe and North Americanの頭文字をとったもので、アメリカ、ハーバード大学のホフマン博士が命名しました。超大陸とは、地球の大陸の大部分(80%以上)が、一ヶ所に集まったものです。当時は大陸がまだ少なかったので、ヌーナは、現在の北米大陸の大きさ程度だと考えられています。現在のその破片は、北米大陸、グリーンランド、スカンナビア半島、オーストラリア大陸、南極東部に分散しています。原生代後期には、造山運動が活発になり、造山帯と安定帯の区別がはっきりしてきます。
 大量の堆積岩できると、その中に堆積物として有機物や、石灰岩が保存されます。これは、炭素が、固体として固定されることを意味します。生物が利用する炭素の大部分は、大気の二酸化炭素から供給されています。大気から、二酸化炭素が一方的に取りのぞかれていきます。

・今年のうちに・
いよいよ2004年も押し詰まってきました。
皆さん、今年のうちにしなければならないことは、
すべて終わりましたか。
私は、まだ終わっていないことがあります。
それもたくさん残っています。
どうしましょうか。悩んでしまいます。
でも、愚痴を言っても、終わるわけではありません。
仕方がありません。ひたすらやり続けることです。
今までサボっていたツケが回ってきたようです。
少々乱暴でも、なんとかやりきってしまうことも手かもしれません。
すると、その先で、進めるべき目処が立ちます。
あわよくば、次なるステップに進めるかもしれません。
まあ、これも終わらなければ空論ですが。

・新しいメールマガジンの発行・
このたび、新しい月刊メールマガジンを発行します。
1年間、あたためていた企画です。
「大地を眺める」というものです。
大地の景観には、さまざまな自然の驚異、素晴らしさ、
不思議が隠されています。
そんな大地の景観を、地形や地質のデータから、
地質学者である私が眺めたら、どう見えるでしょうか。
そんなことを毎回、日本の各地を題材にして見てきたいと考えています。
固い内容ではなく、私が訪れたときの感想をいろいろ述べる
エッセイのようなものにしていくつもりです。
また、地形の数値データを使用して
見づらい地形や、特徴的な地質を
鳥瞰することもしていきます。
大地の造形に隠された仕組みに、目を向けて、
楽しんでもらえるものを考えています。
2005年正月に創刊特別号を発行するつもりです。
毎月中旬に連載をお送りします。
もしよろしければ、
http://terra.sgu.ac.jp/geo_essay/index.html
から申し込めますので、よろしくお願いします。