2004年9月23日木曜日

4_47 積丹半島2:火山と侵食

 台風18号が積丹半島に大きな被害を与えた直後に訪れました。今回は、その2回目で、積丹半島の地形、地質について書いていきます。積丹半島の象徴として、積丹岬と神威岬がありますが、両者はまったく違った岩石からできてます。

 積丹半島の先端には、観光名所として名高い積丹岬と神威岬があります。半島の東側で突き出ているのが積丹岬で、西側に突き出ているのが神威岬です。どちらも岬と呼ばれているのですが、違った特徴を持っています。どちらも先端までいくとわかるのですが、まったく違った石ですが、でも両岬を広く見渡すと共通した石がみられます。
 積丹岬は、急な崖を降りて海岸線にたどりつきます。積丹岬のごつごつした景観は、貫入岩や溶岩の火山岩がつくっていものです。そして青く澄んだ海の色は、心惹かれるものがあります。神威岬の海岸には、色々な種類の火山岩がころがっています。火山活動は、1000万から900万年前ころの時代です。しかし遠くには、水平でやや傾いた地層(尾根内層と呼ばれています)が見ることができます。
 一方神威岬は、海に突き出たやせた尾根の上を、転げ落ちそうなほど細い道を先端まで歩いて行きます。その先は、また断崖で、海まではまだ高いところにあります。神威岬では、やわらかそうな水平の地層(余別層と呼ばれています)が見られます。しかし、海の中に切り立ったような形状の岩や、遠くの崖には貫入岩や火山砕屑岩が侵食に耐えて不思議な地形をつくっています。また、そこらじゅうに、火山岩(角閃石を含んだ安山岩)の礫がころがっています。こちらの火山活動は、積丹半島よりやや新しく、600万年前ころのものだと考えられています。
 さて、この積丹半島は、小樽の西にあり、日本海に突き出ています。札幌や小樽に近く、有名な地域ですが、開発が遅れています。その理由として、地形と気候の険しさがあるのかもしれません。
 積丹半島は北西に日本海に突き出ています。険しい地形で、海岸線沿いをへばりつくように半島の周回道路である国道229号線があります。ですから、半島の西半分は冬には季節風が激しく、いい道路ができるまでは、天候が荒れると、通行ができず、陸の孤島のような状態になっていました。峠越えの道も、風と雪が強く、冬場は通行に支障をきたすこともあるようです。
 積丹半島と同じような条件の地域は、道南の瀬棚や雷電、道央の雄冬など、北海道にはいくつかあります。今でこそ道路がよくなったため、冬でも通ることができますが、道路が海岸わきを通っているため、上げしい雨が降ったり、波が高いと、崩落の危険性があるために、通行止めになります。
 このような危険な箇所なら道路や町をもっと内陸につくればいいのですが、そうはいきません。住んでいる人たちは、漁業を生業としているため、海沿いで生活し、集落があります。そのような集落を結んで道ができますから、どうしても海沿いに道ができます。今では、道路を頑丈につくったり、険しい箇所はトンネルをつくっていくなどの技術力で自然の険しさに対抗しています。しかし、それでも、崩落はおきます。それは、侵食という自然現象だからです。1996年2月の古平町豊浜トンネル付近の大規模な崩落は、記憶に新しいものです。
 なぜ、地形が、海岸から切り立ったようになっているのでしょうか。まず、上であげたような地域には、共通した特徴があります。それは、海側に飛び出た地形になっています。それがどうも切り立った地形を作っているようです。
 積丹半島だけでなく、北海道の日本海側に飛び出た地域には、いずれも新第三紀や第四紀に活動したマグマでできた岩石があります。それ以外の穏やかな海岸地域は、堆積岩からできています。
 火山のマグマの性質にもよるのですが、積丹半島の火山の上は比較的なだらかな台地状の地形をしています。マグマでできた岩石は、同時代の堆積岩より一般的に硬いものです。ですから、本来なら侵食で削られるべき地域が、まだ、残っています。これが海側で飛び出している理由だと思います。
 積丹半島には、神威岬にあったような堆積岩でできた地層もあります。特に西部の海岸ではよく見られます。堆積岩でできた地域は比較的やわらかいので、海の波による侵食を受けます。その結果、新しいものでは海食崖、古いものでは海岸段丘などの地形ができます。海岸段丘は積丹半島の西側で、海抜50mあたりによく見られ、最後の間氷期のものであることがわかっています。弱いがために侵食を受け、段丘と海食崖で険しい崖となっています。また、半島中央部の火山活動に関連したマグマの活動によって、地層中には火山砕屑岩や貫入岩がいたるところにあり、侵食を免れて切り立った地形をつくっています。
 このような地質の背景が、積丹半島の海岸での生活を厳しいものにしています。でも、侵食がつくりだしたが、奇岩や地形が、素晴らしい景観をつくっています。これが自然の荒々しさを味わう観光として人を集めています。

・お詫び・
前回のエッセイで観光客を悪く書いてしまいました。
その観光客の中に、以前からの読者のKogさんがおられ、
観光客も台風の被害を感じていたといられてました。
それ対して、私は次のような返事を書きました。

「積丹の台風被害に関する件で、観光客を悪者にしたような書き方をしました。
しかし、考えてみると私も観光客ですし、
観光客にもKogさんのように台風の被害者の方もおられるわけです。
そして、一番災害のひどいところを見なくても、
周辺の状況から被害の程度も予想できるでしょう。
観光客でも被災地を思い、心を痛められている方も多くおられたはずです。
ですから、あのエッセイの書き方は、思慮のない書き方をしたと思います。
反省しています。
別の見方をすれば、積丹においては観光業は大きな産業のひとつでしょう。
台風の直後にもかかわらず、
それも、すべてのコースが見れないというハンディを承知で
観光に行くということは、
復興への間接的な援助ともいえるのと思います。
観光とは、その地の自然、風景、暮らしぶりを見ていくことで、
その地に金をお金を落としいきます。
意識的であろうが、無意識であろうが、
結果として、私が、落ちりんごを買ったのと同じことをしているわけです。
いや、金銭的には、もっと大きな援助をすることになるでしょう。
そんな面もあるということを失念いたしてました。
多分、積丹から帰ってきてすぐあの文章を書いたので、
感情的に書ききってしまったようです。反省しています。
(中略)
重要なご指摘、ありがとうございました。
勉強になりました。」

というものです。
この返事どおり、反省しています。
観光客は決して悪者ではなく、観光地にとっては、
その地域の需要な産業を担っている人たちに当ります。
それをあのような書き方をしたのは、間違いでした。
どうも済みませんでした。

・家族旅行・
神威岬の先端、そして積丹岬の海岸まで、
いずれも6歳と4歳の子も一緒に家族でいきました。
神威岬は、それほど急な上り下りはなかったので、
子供でも足元さえ気をつけていれば大丈夫だったのでした。
しかし、積丹岬は一気に、70mほどを下ることになります。
帰りが大丈夫かなと思ったのですが、
4歳の子供でもゆっくりと時間をかければ大丈夫でした。
でも、このように好きなとこを好きなだけ
時間をかけてみることができるのが、
個人旅行の有利な点でしょう。
我が家は、子供がまだ小さいので、
団体旅行をしたことがありません。
団体旅行には、安く効率よく観光地を回るという利点があります。
それに、道中のトラブルは添乗員が処理してくれるので、
その気安さは何事にもかえられないものだと思います。
そのおかげで多くの人が旅行ができるのですから。
でも、まだ、私は、手間がかかり、お金もかかるのですが、
個人旅行でいこうと思っています。