2004年9月16日木曜日

4_46 積丹半島1:災害の直後に

 積丹半島へ調査に行きました。調査中は、幸い天気に恵まれましたが、台風による災害の跡が生々しく残っていました。そこで感じたことをつづります。

 九州をかすめて日本海に出た台風は、9月8日未明、北海道の奥尻島の沖を北上しました。台風18号は、衰えるどこか成長して、15m以上の強風域が南東側に600km、北西側が410kmと北海道を覆いつくすような状態にまでなりました。
 網走管内雄武町で最大瞬間風速51.4m、札幌市でも50.2mを観測し、道内の観測点の14ヶ所で過去最高を記録しました。強風による高波によって、海岸付近では被害が大きなものとなりました。死者7名、行方不明者2名、負傷者120名を超える災害となりました。その被害は、青函連絡船が強風で転覆し、約1600名の死亡者を出した1954年9月26日の「洞爺丸台風」に次ぐものではないでしょうか。
 北海道には台風があまり来ないために、いったん来ると被害が大きくなりますが、昨年の台風10号の教訓はいきています。でも、今回は、日本海で成長するという予想に反する台風の挙動が災害を大きくしたのかもしれません。
 9月10日の午後から9月12日まで、2泊3日の予定で、積丹半島を一周する予定を立てていました。台風18号の影響で、半島を周回する国道229号線が、途中で通行不能になっているということを、9日の夕刊で知りました。調査を中止するかどうか迷いました。昨年の台風10号と地震の後の沙流川と鵡川の調査を思い出しました。しかし、意を決して出かけることにしました。そして、できれば、被害の状況も遠目で見ることにしました。
 情報では、積丹半島の西側の中央に位置する神恵内村の大森から柵内間で高波で橋が壊されたということでした。事前に通行止めにしていたため、死傷者がなったということも聞いていました。昨年の台風10号で通行止めの判断が遅れ道道で8人が死亡者を出した教訓が、いかされたのだと思います。
 現地に行ってみて、驚きました。高波で海岸沿いの人家がかなり被害をうけていたのです。国道脇では、被害を受けた家の人たちが、水に濡れた家財道具や家屋を乾かしていました。私が訪れたのは、そんな災害直後の復旧作業をしている最中でした。私は、その地に入り見ているうちに言葉がなくなりました。家内も同様でした。
 考えてみれば当たり前のことです。頑丈につくられた海沿いの国道の橋が壊れるほどの高波が襲ったのです。周辺の人家や施設にも同様の被害があったことは容易に予想がついたはずです。それをよく考えずに行ったので、惨状にショックを受けました。晴天の海岸線に、被災者の方々の黙々とした復旧作業が言葉を奪います。
 この人家や施設の復旧にどれくらいの時間がかかるかのでしょうか。国道の復旧はいつになるのでしょうか。神恵内の町は、国道の破壊で2つに分断されました。当丸峠を越えて積丹半島の東側にまで出て、半島を周回し、村の反対側にいかなければなりません。今までほんの数分の距離が1時間半ほどかかるようになったのです。
 積丹半島の最大の観光地である神威岬や積丹岬は、半島の先端にあります。国道が通れば、神恵内の村から、車でほんの10分か15分ほどでいけるところです。そこは、観光客でにぎわっています。観光バスで乗りつけた人たちは、台風による惨状を見ることなく、楽しかった思い出だけを胸に帰っていくのでしょう。
 それでもちろんいいのです。観光という産業も必要です。かたやその地で漁業や農業で生活している人たちがいて、非日常的な状態ですが、災害に見舞われている人たちも同じ時刻にすぐ近くにいます。両者を一緒に見ると、どうもそのギャップが頭の中で消化できません。
 そんな未消化な心持ちで、積丹半島から帰ってきました。

・落ちりんご・
今回の台風で収穫直前の農作物も多大な被害を受けました。
果樹園では、落ちたりんごを市価の4分の1程度で
訪れた人に売っていました。
それでも「多くの皆さんが来ていただいてすぐに売りきれました」と
果樹園主は現金収入になったこと喜んでいるのを
ニュースで聞いていました。
りんごはまだ熟していませんし、傷も付いています。
商品価値があまりありませんから、
それを承知で買っていく人に感謝していたのでしょう。
積丹半島の付け根にある余市町と仁木町も、果物の産地です。
もちろん台風の被害を受けました。
余市の観光案内所で落ちりんごを売っている果樹園を聞きました。
そこで、落ちりんごを一袋買ってきました。
つめ放題で300円で売っていましたので、
子供たちはたくさんつめました。
そのりんごを近所におすそ分けしました。
すっぱいかな思っていたのですが、甘みがありました。
もちろん、完熟の甘さには及びませんが。
毎日、災害の甘酸っぱさを家族で味わっています。

・台風遭遇・
台風18号に私は四国で遭遇しました。
そのあと北海道に帰ってきたので、
北海道での台風の状況は体験していません。
わが大学も近所の大学でも倒木の被害がたくさんありました。
今回の台風は全道的に大きな被害をだしました。
特に道南、道央、道北の被害が大きかったようです。
家内は北海道でこの台風の経験しているのですが、
風が強かったというだけで、
普段と変わりない生活をしていたようです。
どうも現実離れしているようです。
今回のエッセイはちっと暗い話でした。
もちろん調査ですから、海岸沿いの砂や石ころ
そして地質をみてきました。
次回は、積丹半島の地質の話をしましょう。