2004年7月1日木曜日

3_33 石灰岩とチャート1

 石灰岩とチャートの違いについて質問がありました。どちらも生物の遺骸からできた岩石なのに、なぜ成分が違っているかというものです。それに答えながら、地球の仕組みを考えていきましょう。


 チャートも石灰岩も、生物の遺骸からできた岩石です。ただし、生物起源ではないチャートや石灰岩もあります。でも、日本でよく目にする多くのチャートや石灰岩は生物起源だと考えていいでしょう。生物起源のチャートは層状になっていることが特徴となっています、
 岩石の成因がどちらも生物起源という点では似ていますが、成分がまったく違います。チャートは、ほとんどが珪酸(SiO2)からできています。一方、石灰岩は、炭酸カルシウム(CaCO3)からできています。このような成分の違いは、やはり成因の違いに由来しています。
 同じ生物でも、珪酸の殻や骨格などをもつものと、炭酸カルシウムの殻や骨格をもつ生物がいます。
 珪酸の殻をもつものは、放散虫や珪藻、海綿などがいます。それらが生物が死んで遺骸となるとマリンスノーとして深海底に溜まります。海底に溜まった珪酸は泥状ですが、上に常に積み重なっていきますから、下に溜まっているものは圧力でだんだん水分が抜け、固い石つまりチャートになっていきます。
 炭酸の殻をもつものは、なんといってもサンゴがよく知られています。サンゴは、動物の仲間です。サンゴの殻の部分ではなく体の部分をいうときには、サンゴ虫といういいかたをすることがあります。サンゴ虫は、石灰質の骨格を持っています。このようなサンゴのうち、礁(しょう)をつくるサンゴを造礁サンゴと呼んでいます。
 造礁サンゴには褐虫藻が体の中に共生していて、骨格形成や石灰化を早めています。褐虫藻の生育には、暖かい海と太陽光が必要です。暖かい海とは、熱帯から亜熱帯の25~29℃が最適な水温です。また、太陽光が必要ですから、100mより浅い海でなければ生きていけません。ですからサンゴ礁は、暖かい浅い海にできるのです。
 サンゴ礁は小さなサンゴ虫と褐虫藻とがつくりだした石灰岩の塊です。もちろんサンゴ礁には、サンゴの破片も含まれます。サンゴ礁をつくる珊瑚は、海洋島のように一つ一つが孤立したものから、オーストラリア東部の沿岸のグレートバリアリーフのように堡礁(ほしょう)とよばれる巨大なものまであります。海洋島のサンゴ礁は、山口県の秋吉台や四国カルストをつくっているものがその例ですし、桂林のようにグレートバリアリーフクラスのすごく大きなものもあります。
 石灰岩もチャートも生物起源のものは、生物が大量にいる時代にしかみられないはずですし、生物の種類によって化石の種類は違ってきます。礁をつくるサンゴでは、イシサンゴ類がそれにあたります。しかし、古い時代(古生代)の造礁性サンゴは、今のサンゴとは違い、層孔虫類(ストロマトポラとよばれています)がその代表だと考えられています。層孔虫類は、サンゴの仲間ではなく、海綿の仲間だと考えられています。現在は絶滅しているものです。
 石灰岩とチャートのナゾは次回に続きます。