2004年6月17日木曜日

5_35 過去を見る力2:論理性

 地球の歴史を調べるときに、事実と推定に注意することが大切であることを、前回紹介しました。でも、過去を調べるときにもっと大切なものがあります。そんな大切なものをみていきましょう。

 前回、「10cmほどの恐竜の歯の化石」を例にして、事実と推定について見ていきました。
 事実とは、「化石」と呼んだ「過去のもの」という「実物」が存在しているということです。さらにその過去の実物から、誰がやっても同じものを読みとることできる情報も事実とされます。ですから「10cmほど」という情報も、事実になります。その事実は、測定方法や目的によって、精度はいろいろになりえます。必要とあれば、「10cmほど」ではなく、「10.01cm」などのように、精度をあげることもできます。このような実物とその情報という事実が、過去を見ていくときの、すべての出発となります。
 もちろん、人によって、「過去の実物」から読みとる情報はいろいろなものがあるでしょう。詳しく知りたい研究者は、いろいろな方向の長さを正確に測定するでしょう。角度も測り、成分も分析することもあるでしょう。でも、このような測定や分析は、他の研究者がその気になれば、実物さえあれば、同じ情報を読みとることが可能です。
 このような事実は非常に客観的なものといえます。事実はこのような客観性を備えていることになります。
 さて、このような事実から次におこなわれるのが、推定であります。いろいろな推定がありますが、科学者や論理性を重んじます。なぜなら、論理性こそ科学の重要な営みだからです。「過去の実物」から「化石」だと推定することは、ある論理性に基づいています。そして、その「化石」を「歯」と推定するときにも、論理性が必要です。さらに、「恐竜の歯」という推定にも、論理が必要です。こんなにも論理を重ねていくと、ふと大丈夫かなという不安を持ってしいます。
 数学は、まさに論理を積み重ねた上に構築された体系です。ですから、論理を積み重ねることは、科学の世界ではごく当たり前におこなわれています。しかし、数学と自然科学の論理には、性質の違いがあります。それは、数学における多くの体系では、論理はすべての場合を調べあげられています。そこには、例外は認められません。例外も論理に組み込まれていますので、例外とはいえなくなっています。
 ところが、自然科学の世界では、すべての因果関係を、私たちはまだ解き明かしていません。つまり、読みとる論理すら、完全ではないのです。さらに過去の歴史を扱うような科学では、一度きりしか起こったことの出来事を、断片的な事実から、読みとらなければなりません。その断片的な証拠は、すべての場合を網羅しているわけではありません。ですから、どんなに論理を精緻にしようとしても、限界があります。
 自然の歴史を扱う自然科学では、「ある程度」の論理性しか確保できません。事実に基づいていても、「ある程度」の論理性になるので、研究者ごとに、いろいろな論理が提示されることがあります。
 例えば、ある研究者は、その歯の持ち主の恐竜をある論理によってティラノザウルスだと推定し、別の研究者はスピノザウルスだと別の論理で判断するかもしれません。いやいや、それは肉食恐竜じゃない草食恐竜だという論理を提示する研究者もいるかもしれません。
 論理性は必要ですが、論理的だからといって「正しい」とは限らないのです。科学者も人間ですから、どのような論理をとるのか、あるいはその論理をどのような提示をするのかは、好みや癖、心情などが反映されます。自由な発想をする研究者は大胆な論理を提示するかもしれません。慎重な研究者は、自分の良識が許す範囲までの論理しか提示しないでしょう。疑り深い人は、反論の可能性があるような大胆な論理は提示しないでしょう。これは研究者の個性によります。
 慎重だからといって、その論理は正しいとは限りません。大胆な論理だからといって、間違っているとは限りません。これが、自然科学の難しさでもあり、面白さでもあります。

・融合の試み・
先日、旭川を再訪しました。
今回は、地図のメーカの本社を訪れるためです。
旭川には、技術や開発の本部もあり、
技術者たちと面会して、議論するためです。
分野の違うものを融合させることはできないか
ということについて話し合いました。
彼らのもっている地図に関する各種の技術とデータ、
私のもっている地質学の専門知識やデータと
その専門的内容を市民にわかりやすく表現する技術を
なんとか融合させたいというのが始まりでした。
何をするかは、これから考えていきます。
以前、衛星画像をつかって、同じような試みを
このメールマガジンを通じておこないました。
再度同じことをするかどうはまだ未定です。
お互いの専門から、思わぬ発見が生まれるかどうかです。
メーカはそれを商売に使うもよし、
私は、その成果を論文にもするもよしです。
この件に関する限り、お互いに自由に
利害抜きに癒合していきましょうというのが、目的です。
さて、どのようなものができるかは、
これからの楽しみです。
数ヶ月かけて、練り上げていこうと思っています。

・プログラミング・
最近プログラミングをはじめました。
20年ほど前は、Fortran、Pascal、Basicなどを用いて、
プログラムを自作していた時期がありました。
それは、自分の目的にあったいいソフトがなかったからです。
しかし、その後、自分が利用できるソフトがいろいろでてきてからは、
自作のプログラムを作ることはなくなりました。
しかし、最近、大量のデータを変換する必要に迫られました。
そのためにプログラムを作成する必要がでてきました。
私は、プログラムを20年近くおこなっていません。
できれば、コンパイラタイプで、馴染みある言語がいいので、
Visula Basic、Delphi(Pascal)などが候補になります。
大学の講義では、Delphiを採用しています。
とりあえず無料の言語を探したら、
コンパイラタイプのActive Basicというのが見つかりました。
それもなかなか優れもので、開発者自身による解説書もありました。
それに、開発者個人ですが、ホームページで、サポートをしています。
とりあえず、Active Basicでプログラムしています。
久しぶりなので、プログラミングはなかなか大変です。
先日の土・日曜日に、なんとかファイルの変換部分だけはできたのですが、
大量のファイルを自動で処理する方法に現在苦労しています。