2004年3月18日木曜日

4_42 塩川:沖縄2

 沖縄への調査の2回目のエッセイです。前回は、南西諸島は、地質からみると、日本の縮図のようになっていることを紹介しましたが、少し難しかったでしょうか。詳しい地質の話を書こうかと思いましたが、難しそうなのでやめて、今回は、観光地でないのですが、沖縄島でみた面白い自然を一つ紹介しましょう。

 沖縄島の中部に西向かって突き出た丸い形をした半島があります。本部(もとぶ)半島といいます。丸い半島の南西(左下)あたりに、塩川という川があります。
 海のすぐそばに湧き出し口のある川です。ほんの150メートルほど内陸に湧き出し口があり、全長で300メートルもありません。すぐに海に流れ込んでしまう短い川です。海面と比べても、湧き出し口は1メートル数十センチメートル高いだけです。私は、この川を見にいったのです。私が訪れたときは、もちろんだれも見に来ている人はいませんでした。
 川というには、あまりにも小さいものです。なぜ、わざわざこの川を見に行ったのかというと、この川が変わった性質をもっているからです。
 この塩川は、名前のとおり、塩水がいつも流れている川なのです。そんな珍しい川は、この塩川以外に、プエルトリコに1ヶ所だけみつかっているだけです。非常に珍しい川なのです。そのため、1972年に国の天然記念物に指定されています。
 塩川には、2ヶ所に湧き出し口があります。1ヶ所で川に降りられるところがあったので、降りて、川の水をなめてみました。もちろんショッパかったですが、海水のショッパさほどではありませんでした。
 さて、この塩川の水は、どうしてショッパイのでしょうか。海が近いので、普通は海水がなんらの作用で、湧き上がっているのではないかと考えます。しかし、川のなめてみると、海水がそのまま湧き出しているわけではありません。真水の成分が混じっています。
 かつて、この塩川の湧出機構について、調べられたことがあります。沖縄県が文化庁の支援を受けて、1974年から3年がかりで調査がされました。その結果、いくつかの重要なことがわかったようです。塩川にあった説明看板によれば、
・潮位と水位(湧出量)は比例する
・湧出量と塩分濃度は逆比例の関係にある
・海水と陸水が混合したもので岩塩説は全く否定される
ということがわかったそうです。
 少し説明しておきましょう。まず、最後の岩塩説とは、地下に岩塩があり、その中や周辺を地下水が通ってくることによって塩分をもった水ができるという説です。岩塩とは、海水が大量に干上がってできた塩が石となったものです。この説には、大きな岩塩の岩体が地下にないといけませんし、海と関係はないはずです。しかし、塩川では潮位と関係があるので、岩塩説は否定できます。
 上の2つの事実から、海水と地下水(真水)が混じっていることになります。でも、よく考えると少し複雑なメカニズムが働いていることがわかります。
 まず、潮位と湧出量が比例するというのは、普通に考えると、潮位が上がると地下で海水成分の量が増え、全体として湧水量が増えることとなります。しかし、湧水量が増えると塩分濃度が下がるというのは、海水の変動が直接湧き出す水に伝わるのではなく、水を押し上げる圧力となっていることを意味しています。湧出量が増えるときは、地下水が使われているということです。
 このようなメカニズムとして、サイフォン説というものが唱えられています。地下70から100メートルに、海水と地下水が混じった水が溜まるところがあり、そこにたまったややショッパイ水が、潮位の圧力によって、岩の割れ目を通り抜けて、湧き出ているという説です。
 そんな複雑な構造ができているというのも、この本部半島には石灰岩がたくさんあるからだと考えられます。塩川のすぐ近くでも石灰岩の採掘をしてました。石灰岩は、地下水によって溶け、鍾乳洞のような地下水路をよくつくります。多分、この塩川の水源となっている地下にもそんな水路と貯水用の地下の池があり、そこには海水も入りこんでいくのでしょう。そして、その地下の池は、海水の圧力で水を湧き出しているのです。そんな地質環境であったから、この枯れることない塩川ができたと考えられます。
 頭でわかっていたとしても、塩川は、不思議な川です。

・塩川と生活・
塩川は短いので、噴出し口から歩けばすぐに海に達します。
私は、もちろん、塩川の海への注ぎ口の河口も見にいきました。
そして、河口でも水をなめようかと思いました。
しかし、思いとどまりました。
河口から陸側をみると、集落の中を塩川は流れてきます。
そして、民家の排水が塩川に流れているのが見えました。
だから、なめるをやめました。
塩川の湧き出し口と海岸の間には、国道449号線が走っています。
天然記念物は、国道と湧き出し口周辺の地域が指定されています。
ですから、国道より海側は、普通の民有地となっています。
区域外では、下水を流しても問題ではありません。
もちろん、以前から生活をされている方々の集落です。
この地域の人は、塩川を、昔からそして今も大切にしてきたと聞きます。
でも、現実に下水が流れ込んでいるのをみると、ちっと考えさせられました。
これは、通りすがりのものの感想ですから、聞き流してください。

・春の節目・
皆さんの地域の春はどんな春でしょう。
私の住む北国では、春は雪解けからはじまります。
どの地域の春にも共通するのが、卒業と入学です。
我が家でも、長男が幼稚園の卒園と小学校への入園、
次男が幼稚園への入園となります。
そんな感慨を味わっています。
今まで、家内には、いつも、どこへ行くのにも次男が一緒でした。
家内は、これから、一人の時間がもてそうです。
一人の時間ができるのは、うれしくもあり、寂しそうでもあります。
春は、親にとっても節目の季節となります。