2003年9月11日木曜日

1_26 隕石の年代(2003年9月11日)

 隕石から、地球を含めた惑星や太陽系のできた頃のことが探られています。では、隕石に書き込まれた事件を、どのようにして読まれるのでしょうか。

 隕石の年代測定は、主に同位体組成というものを用いておこないます。元素の中には、質量の違うものがあります。そのような質量の違うものを同位体といいます。元素によって、同位体がひとつだったり、たくさんあったりします。
 また、同位体の中には、安定に存在できるものと、不安定なものがあります。不安定な同位体は、ある時間がくると、他の安定な同位体に変化するものがあります。このような不安定な同位体を放射性同位体といいます。多くの放射性同位体は、比較的短い時間で壊れてしまいますが、中には長い時間をかけて、ゆっくりと壊れていくものがあります。
 このような放射性同位体は、年代測定に利用できます。その壊れるスピードによって、どのような年代のものに利用できるかが決まります。
 隕石のような、何十億年という長い時間を経てきた古いものには、壊れるスピードの遅い放射性同位体をつかいます。ルビジウム(87Rb)、ランタン(138La)、サマリウム(147Sm)、ルテシウ(176Lu)、レニウム(187Re)、ウラン(238U、135U)、トリウム(232Th)が用いられています。
 原理は、簡単です。現在の放射性同位体(親核種)と、壊れてきた安定同位体(娘核種)の値を求めます。これでは、年代(変数)を求めることはできません。なぜなら、もともとあった量(変数)がわからないからです。一つの式で2つの変数は求めることはできません。少なくとも2個以上の式が必要です。
 この変数を求めるには、もう一つ別のものを分析をすればいいのです。でも、条件があります。同じ時できたものであることと、もともとの放射性同位体の量の違うものを2つ以上集めれなければならないことです。2つの測定値(式)があれば、もともとの量がわからなくても、年代を決めることができます。もちろん、分析するデータは多いほうが精度が上がります。
 岩石でいえば、同じマグマからできたいくつかの鉱物を分析することになります。地球の石なら、小さな鉱物でもたくさん集めることができます。でも隕石の場合はそうはいきません。隕石は、地球の岩石にたとえると一種の堆積岩のようなものです。いろいろな岩石の粒が混じっています。
 隕石で岩石の粒に当たるものは、コンドリュールというものです。せいぜい数ミリメートルしかないものです。それは、隕石の材料物質が溶けたときに、無重力状態ではマグマが球状になります。それが冷めてくると球状のまま、いくつかの鉱物ができて固まるものがあります。それがコンドリュールです。ですから、先ほどの年代測定を正確にするには、一つのコンドリュールの中の鉱物を分けて、分析する必要があります。そんな技術が、今やあります。測定装置もさることながら、根気よく小さな粒を分けなければなりません。
 もうひとつの方法として、ウランを使う方法があります。ウランには、上で示したように、ゆっくりと壊れる放射性同位体が2つあります。この2つ同位体セットを同時に測定してしまえば、一回の分析で測定ができます。この測定は、分析したいところに粒子をあてて、そこを掘り返して、原子レベルにばらばらにしてしまいます。それを測定装置に直接導いて測定します。
 この方法による測定では、数十ミクロンメートルの部分(試料)があれば、年代測定ができます。もちろん、精度をあげるには、多数の分析をしなければなりません。そしてなによりも、ウランがたくさん含まれている鉱物でなければなりません。
 このようないくつもの方法で隕石が測定されています。その結果、原始的と呼ばれる隕石の年代は、どれも45.6億年前という時代が得られています。もちろん、詳細な年代測定なので、もっといろいろなことがわかっていますが、それは、別の機会にしましょう。