2003年4月24日木曜日

5_19 地球の自転

 私たちはまったく感じませんが、地球はものすごいスピードで自転しています。そのスピードは、日本(緯度35度)では秒速約0.38km、赤道では秒速約0.47kmになります。ピンときませんが、時速にすると、日本では約1400km、赤道では約1700kmというとんでもないスピードになります。それを私たちは、気づかずに生活しているのです。本当にそんなスピードで地球が自転しているのでしょうか。

 ある人から、こんな質問を受けました。「どうして人間は地球が自転していることに気がついたんですか?」これは、素朴な疑問です。多くの人は、地球が自転していることを、知識として知っています。しかし、それを、知識ではなく、自分が納得できるような答え、あるいは子供に説明できるような証拠をあげることができますかと聞かれると、なかなか思いつかないものです。こんな素朴な疑問について、考えてみましょう。
 地球が自転しているということは、天空に見える太陽や惑星、他の星たちが、動いていようがじっとしていようが、動いて見えます。たとえば、自分の乗っている電車が動いていることを知らない場合、景色が動いているの、自分が動いてるのは、なかなか判断できません。でも、常識的に考えれば、電車が動いていることがわかります。
 でも、地球のような大きな乗り物だと、動いているのかどうかすら、はっきりしません。ですから、昔は、地球がうごかず、回りのものが動くというごく当たり前の考えをもっていました。
 この質問に答えるためには、地動説をどうして気づいたかとも関係します。ですから、この質問に答えるには、地動説の歴史という、科学の歴史を探ることになります。
 実際には、多くの人が、長く天動説を信じ、それに違和感を覚えなかったということは、「地球の自然の中」では、地球の自転に気づきにくいということです。
 説としては、古代ギリシアのネラクレイデスなどは、地動説を唱えていました。しかし、それは、空想に過ぎず、自転の証拠を示したわけではありませんでした。
 コペルニクスが、地動説を最初に唱えたとされていますが、実は、証拠を提示した訳ではありません。コペルニクスは、天動説より、地動説の方が、天体の動きをよりよく説明できるという、単純な発想のもとにつくり上げた理論なのです。コペルニクスの地動説は、仮説に過ぎませんでした。それは、地動説を唱えた、ジョルダノ・ブルノやガリレオも、仮説を支持しただけで、地球の自転の証拠は提示できませんでした。説が仮説にすぎず、証明できないものですから、完全ではないですから、説得力がなかったのです。ですから、宗教裁判にかけられたとき、論証できず、迫害されたのかもしれんません。
 地球の自転の証拠を最初に提示したのは、ニュートンでした。ニュートンが解明した歳差という現象が、自転の証拠の第一号となりました。
 では、その歳差とは、どんな現象でしょうか。まっすぐ立って回っているコマは、軸がぶれずに鉛直にたって回っています。しかし、斜めに回っているコマは、軸が首をくるくる回します。このような運動を、地球もしています。地球は、太陽の周りを回る面(公転面)に対して、自転の軸は、約23度ほど傾いています。コマの軸が首を振るように、地球の自転の軸も首を振ります。それは、コマと比べると非常にゆっくりしたもので、約2万5800年で一周するようなものです。でも、たとえば、1万3000年で夏の星座と冬の星座が入れ替わるのです。
 この歳差という運動は、自分自身が回転しているという証拠になります。その歳差を確認して、証拠としたのが、ニュートンだったのです。やっぱりニュートンは偉大です。

・地球自転の証拠・
 他にも、多くの地球の自転の証拠があります。
皆さんも考えてみてください。
現在、地球の証拠として、教科書によくでているものとして、
・フーコーの振り子(実際には、振動子面の回転といいます)、
・日周光行差、
・恒星の視線速度に日周変化があること、
・ジャイロコンパスの運動、
コンプトンの実験
などがあります。
精しく知りたいひとは、自分で調べてみてください。
そして、ここで述べたもの以外の証拠を見つけた人は、
ぜひ、私にも教えてください。
楽しみにしています。

・素朴な疑問・
素朴な疑問シリーズの3本目です。
地球の自転の証拠。
これは、じつは、なかなかむつかしい問題なのです。
なにしろ、直感的な証拠が、なかなかないのですから。
実感はなくても、長い智恵の積み重ねで、地球の自転に気づき、
そして、今では、知識として地球の自転を誰もがもつようになったのです。
これは、重要で、すばらしいことです。
知的資産の積み重ねとは、このようにして行なわれていくのです。
でも、やはり誰でもわかる直感的な証拠が欲しいですね。
だれか思いつきませんか。