2003年2月20日木曜日

6_23 2月の誕生石

 2月は誕生石がひとつしかない月です。その誕生石とはアメシストです。日本名は紫水晶です。今月は、アメシストについてみていきましょう。

 アメシストは、紫水晶という日本名からもわかるように、水晶の一種です。水晶とは、鉱物名ではなく、一般的な名称です。鉱物名としては、石英です。
 石英は、二酸化珪素(SiO2)からできており、硬度7、比重2.65、六方晶系(6角柱状)の結晶です。石英は、花崗岩や片麻岩などの大陸地殻をつくる岩石の主要な鉱物です。また、一般的な堆積岩の主要構成物でもあります。つまり、地表でももっとも多い鉱物の一つなのです。
 石英で、無色透明で、その結晶形がきれいなものを水晶と呼んでいます。水晶は、一般には無色透明ですが、地表にたくさんある石英ですから、変わり者もみつかります。変わり者でも、きれいなものであれば、ひとは珍重します。つまり、宝石や飾り石として価値を見出すのです。
 色のついた水晶として、アメシストや煙(けむり)水晶、黄水晶(シトリン)などがあります。
 紫色から、青紫や赤紫色のついたアメシストは、日本人は、紫色を高貴な色としていたので、古くから愛好された宝石です。また、水晶の中でも紫水晶が高価となっています。アメシストの紫色の原因は、長く定説がなかったのですが、1973年に旧ソ連でアメシストの合成に成功して、少量の鉄分と放射能のために着色することがわかりました。合成アメシストはロシアおよび日本で製造されいますが、ロシアの水晶の製造技術はいまでも、世界の一流を誇っています。
 模様のついた水晶として、緑泥石や角閃石など結晶の中にできている草入り水晶、ルチルや電気石の針のような結晶ができている針入り水晶などというものもあります。
 石英の小さな結晶があつまったものとして、繊維状の結晶が集まった玉髄(ぎょくすい)があります。これには8月の誕生石のメノウがふくまれます。また、丸い小さな結晶が集まったものとしては、チャート、フリントなどとよばれるものがあります。
 日本の水晶の産地として、山梨県乙女鉱山や水晶峠、岐阜県苗木地方が有名でしたが、今はほとんどとでなくなってしまい、大正の半ばころから輸入がはじまっています。でも、山梨県甲府市は、水晶の加工地、あるいは集積地としていまでも有名です。
 海外の水晶の産地は、古くからマダガスカルとスイス、ミャンマーのものがつかわれていました。現在では品質や産出量で、ブラジルが一番となり、ついでマダガスカルとなっています。
 石英という大地にはありふれた鉱物から、水晶という結晶の美を見出し、水晶の中からも、より色のきれいなアメシストという宝石を選び、それらを月々の宝石として珍重します。ひとは自然物に愛着を持ち、愛でてきました。その気持ちはいまだに衰えていません。
 アメシストは誠実、心の平和を象徴として、2月の誕生石となっています。でも、いまや美への愛を越えて、富への執着、所有欲、自己顕示欲・・・・・

・酔わない石・
アメシスト(amethyst)の語源は、
ギリシア語のamethystosから由来しています。
ギリシア語のamethystosとは、「酔わない」という意味です。
ですからアメシストを身に着けていれば、
悪酔いを防ぐと信じられていました。
また、アメシストの色がワインの色に似ているので
バッカス(酒の神)・ストーンともよばれました。
酒飲みには、なかなか魅力的な宝石のようです。
でも、その効能のほどは、各自で試すしかないのですが・・・

・水晶とは水の固まったもの?・
水晶の産地としてスイスが有名であると上で書きました。
ローマ時代には水晶の産地としてアルプスがすでに有名となっていました。
そのため、プリニウスは、その著書「博物誌」(第37巻)で、
「冬の雪がもっとも固く氷結した場所で発見されるので、
氷の一種であることは間違いない」
と書いています。
水晶が水の結晶であるという説は、16、17世紀にまで信じられていました。
また、水晶はその魅入られるような透明感、美しさから、
ヨーロッパでは、水晶凝視(crystal gazing)として、
占いにも利用されてきました。

・欠かせない石英・
ありふれた水晶ですが、各種の用途に用いられてきました。
光学的な特性を活かして、鉱物を観察するための偏光顕微鏡の部品として、
圧電効果を水晶発振器としてクォーツ時計や電子部品に、
大きな硬度を活かして研磨剤として、
透明感と硬さはガラスやレンガ、セラミックとして、
超高純度の珪素は電子機器機器の半導体として、
石英は、いまや、ひとの生活には欠かせない素材となっています。