2002年11月21日木曜日

3_29 日本列島の火山帯の形成モデル

 日本列島は、温泉がたくさんあり、多くの日本人は、温泉を楽しみ、そして火山などの景観を楽しんでいます。そんな日本列島の火山にについて、新しい考え方が出されました。紹介しましょう。


 日本列島は、火山列島でもあります。日本の火山は、プレートテクトニクスの考えでは、沈み込み帯によって形成されたものです。プレートの沈み込みによってできた火山列島のことを、島弧(とうこ)と呼んでいます。日本列島だけでなく、周辺のアリューシャン列島、琉球列島、伊豆-小笠原列島のいずれも、島弧です。
 日本列島の東北日本は、世界でももっとも典型的な島弧の火山活動地域です。ですから、島弧の火山活動の解明は、日本の地質学者の重要な研究課題の一つです。その研究課題に、重要な前進が、先日(2002年9月5日発表)、報告されました。
 海洋技術センター(理事長 平野拓也)、固体地球統合フロンティア研究システム(IFREE、久城育夫システム長)、地球内部物質循環研究領域の田村芳彦グループリーダーらは、島弧の火山活動において、新しい、より詳細なモデルを公表しました。
 島弧では、火山の分布が、火山フロントと呼ばれる火山列をなしています。これは、海溝から、つまり沈み込み帯の位置から、ある一定の距離が離れたところで、マグマが形成される条件(温度圧力、沈み込むプレートからの水の供給など)が満たされていることを意味しています。しかし、その詳細は、まだ研究中で、充分解明されていません。
 「冷たい海洋プレートが沈み込むことによって、なぜ、熱いマグマが形成されマグマができるのか」という素朴な疑問に対する答えが、まだ、ないのです。
 今回、発表された研究成果では、いくつかの詳しい観測結果、つまりデータと、ある考え方が示されました。
 まず最初のデータは、火山の分布についてです。火山フロントから陸側(海溝と反対側)には、多数の活火山が分布しています。しかし、その火山の分布を詳細に見ると、火山の集中するところと、火山がほとんどない空白地域があることがわかってきた。今までは、漠然と、フロントより陸側に火山がたくさんあるという見方しかされていませんでした。ところが、今回、火山の分布は、火山の多いところと、空白域が、規則正しく交互に出てくることが示されたのです。
 第2点目は、第1点目と関係があるのですが、火山の集中域では、地形的高まりの上に、火山が積み重なっており、火山空白域では、地形的にも低いことろであることが明らかになりました。つまり、高いところに火山は活動し、低いところには、火山がないのです。火山は山ですから、高いものと考えていたのですが、もともと地形の高いところに火山ができていたのです。
 火山フロントに位置する火山列(那須火山帯と呼ばれる火山の連続)を、本州中央部の浅間火山から、北海道南部まで、標高分布をみると、10回の地形的うねり(高まりと低い部分の繰り返し)が見られます。同じような地形的うねりが、本州中央部の妙高火山から北海道南部までの、火山フロントからより陸側の火山列(鳥海火山帯と呼ばれる火山の連続)における標高分布で、見られることがわかってきました。
 さらに、その部分を、地震波トモグラフィーでみると、地下深部の高温域が、火山集中域の分布に対応していることがわかってきました。
 東北日本の島弧では、深さ50~150 kmにあるマントル内の高温領域は、日本海側の深部から、太平洋側の浅所に向かって、指状(クシの歯状)に侵入していることを示されました。熱いマントルが指状(クシの歯状)に進入しているところが、火山の多い、地形の高まりのあるところで、指の隙間にあたるところが、空白域に対応しているのです。
 指状(クシの歯状)の熱いマントルの上昇が、沈み込み帯における火山および火山帯の形成の原因となっていることを見いだされました。しかし、この熱い指状(クシの歯状)のマントルが、どこから、なぜ上昇するかは、これから取り組まれるべき課題となっています。

関連サイト
http://w3.jamstec.go.jp/jamstec-j/PR/0209/0905/index.html

・メールマガジンの目的・
中学校のある先生から、
以前、掲載した
「2_17、2_16 6億年前の大絶滅」
を学校の授業で利用したいという申し出がありました。
もちろん、了承しました。
このメールマガジンやホームページで、
少しでも地球に興味を持つ人が
増えてくれればいいと思っています。
それが、このメールマガジンの目的でもあります。