2002年10月10日木曜日

6_16 10月の誕生石

 10月の誕生石は、トルマリンとオパールです。どちらも比較的よくでてくる宝石です。

 トルマリンは、日本では電気石と呼んでいます。この日本の名前の由来は、加熱したり、摩擦したりすると、静電気がおきることによります。
 化学成分は、気が遠くなるほど複雑です。化学式で書くと、Na(Mg,Fe,Mn,Li,Al)3Al6Si6O18(BO3)3(OH,F)4となります。ホウ素を含むことが、大きな特徴です。化学組成のカッコの中は、どれかの元素か、いくつかの元素が組み合わさったものを意味します。ですから、非常に多様なトルマリンがあることが、わかります。
 多くは、色が黒いのですが、褐黒、青黒、緑、紅、と多様ですし、透明だったり不透明であったりします。もっとも普通にでてくるのは、鉄電気石とよばれるもので、ガラスのような光沢をもち、黒色で不透明な六角柱状結晶です。
 宝石となるものは、リチア電気石で、10月の誕生石とされているトルマリンは、これをさします。
 火成岩のペグマタイトや花コウ岩の中に、ごく普通にみられ、結晶片岩や片麻岩などにも含まれています。
 日本の代表的な産地としては、福島県石川、山梨県黒平、鳥取県広瀬鉱山、宮崎県鹿川、鹿児島県屋久島などがありますが、宝石となるようなものはほどんど出てきません。日本以外では、多くの国から出てきますが、なかでも、ブラジル、アメリカ合衆国、タンザニア、ケニア、マダガスカルなどがおもな産地となっています。
 つづいて、オパールです。オパールは、日本でもなじみのある名称ですが、タンパク石という日本名を持っています。
 でも、オパールは、鉱物ではないのです。つまり、結晶化していません。化学組成は、珪酸(SiO2)を主としていますが、1~21%の水を含んでいます。ですから、化学組成を式(構造式といいます)で書くと、SiO2・nH2Oとなります。宝石となるようなものは、水分が約6~12%の範囲になるようです。
 オパールは、硬度が5.5~6.5ですが、比重が2.0~2.3と小さいのが特徴です。
 オパールは、無色透明(ウォーターオパール)、白(ホワイトオパール)、黒(ブラックオパール)、黄から赤色(ファイアオパール)など、変化にとむ色(七彩色、遊色効果ともいいます。英語ではplay of colorです)をもっています。しかし、虹色にきらめくもの、特殊な色をもつもの、おもしろい模様のあるものが、宝石としてつかわれます。
 オパールの七彩色は、珪酸の小さな(直径150~300nm)粒子が規則的に配列して、光を回折現象させるからです。粒子が大きいときには、波長の長い赤色の光を、小さい場合には、波長の短い紫色の光をだしますが、これらが入りまじって七彩色となります。
 オーストラリアとメキシコが、オパールの産地として有名です。1870年代にオーストラリアで、堆積岩の中から品質のいいオパールが発見されました。ときには化石がオパール化したものがります。現在もホワイトオパールやブラックオパールのおもな産地となっている。メキシコのオパールは、火山岩の中の穴にできるウォーターオパールやファイアオパールが有名です。
 日本では、福島県西会津町宝坂、長崎県波佐見町、石川県赤瀬、北海道紋別などで、流紋岩の中にでてきますが、宝石にあるようなきれいなものはほとんどとれません。
 1972年に、ホワイト・オパールとブラック・オパールが人工的に製造できるようになりました。現在では、プラスチック製で、天然物と同じような構造で、識別困難な精巧な人工オパールもできるようになりました。
 オパールは水をふくんでいるため、乾燥したり、熱によってひびがはいってしまうことがあるので、保存には注意が必要です。

・宝石のはやりすたり・
オパールは、ローマ時代から珍重されていたようです。
大プリニウスの「博物誌」には
「いろいろな宝石の魅力を寄せあつめたようなものだから、
これを記述するのはひじょうに困難である。
それはいわば、ザクロ石のちらちら燃える火と、
アメシストの緋色の輝きと、
エメラルドの海緑色とを併せもっている」
とあります。
中世には、オパールは、
毒を予防する力があると信じられていたので、
指輪だけでなく、金銀細工の装飾としてよく使われました。
その後も、17世紀初期まで、宝石として大いにもてはやされました。
ところが、ウォルター・スコットの小説
「ガイアスタインのアン」(1829年)で、
主人公が、オパールを持っていたため不幸にあい、
オパールを海に捨ててやっと不幸から免れるというものでした。
この小説の影響で、18世紀から19世紀にかけては、
不幸を招く石として不評でした。
1964年にオーストラリアから、
青色の遊色効果を示す203カラットのホワイト・オパールを
イギリスのエリザベス女王に献上されました。
このオパールは、白金枠にセットされ、
ネックレスとして女王に愛用したので、
再びオパールの人気が出たそうです。
宝石にも、はやり、すたりがあるようです。