2002年9月5日木曜日

6_15 9月の誕生石

 9月の誕生石は、サファイアです。月に一度の誕生石シリーズです。サファイアにまつわる話をしましょう。

 サファイアは、コランダムという鉱物で、六方晶系の結晶で、酸化アルミ(Al2O3、アルミナとよばれます)という化学組成を持ちます。コランダムは、鋼玉とよばれ、硬い鉱物で、モース硬度9でダイヤモンドにつぐ硬度をもっています。モース硬度計の標準として用いられています。比重4.0~4.1はです。
 コランダムの赤いものをルビー(7月の誕生石)といいます。それ以外の色のものを、サファイアと呼んでいます。ルビーの色は、少量の 酸化クロム(Cr2O3)でしたが、サファイアの色は少量の鉄(Fe2O3)とチタン(TiO2)によるものです。
 サファイアも古くから知られている宝石でした。ギリシア人やローマ人が、サファイアと呼んでいたものがありました。しかし、それは、サファイアではなく、ラピスラズリであったとされています。現在のサファイアは、他の鉱物にいれられていたようです。
 11世紀のレンヌの司教マルボード(Marbode)によれば「サファイアは天上の玉座によく似た美しさをもっている。それは純朴なひとの心をあらわしている」といったそうです。サファイアは、古くから神聖な石と見なされ、12世紀以降、キリスト教の聖職者の指輪にされてきたといいます。
 現代では、サファイアは、希少であること、そしてなんといってもその美しさによって、高価な宝石となっています。
 サファイアは、青色のものがブルー・サファイアとして一般的です。日本名でも、青玉、青宝玉と呼んでいます。その他の色のものを、ファンシー・サファイア(変り色)といい、緑、紫、黄、褐色、ピンク色などがあります。
 サファイアで、最も高価になものは、カシミール産のコーンフラワー(矢車菊)色(やや白味の淡色)、ついでミャンマー産のやや濃い青色のローヤル・ブルー、スリランカ産のやや淡色のものが続きます。タイおよびオーストラリア産は、産出量が多いのですが、その多くがインク青色のため、価格が低くなります。
 サファイアの中に、針のような細く小さいルチル(酸化チタン)の結晶を含む(シルク・インクルージョンといいます)ことによって、スター効果が生じます。スター効果という星状の輝きを出るものを、スター・サファイアと呼んでいます。
 サファイアやコランダムは、変成岩、ペグマタイト、玄武岩中にふくまれます。また、堆積物の中に、ほかの宝石鉱物といっしょにあつまり、宝石鉱床をつくることもあります。
 日本では福島県石川、阜県苗木、奈良県二上山、広島県勝光山などからコランダムを産出し、石川、苗木にサファイア、大分県木浦鉱山にルビーの産出が知られています。
 今では、サファイアは人工的に合成することができ、工業用や装飾用に利用されています。合成サファイアは、青色だけでなく、いろいろな色のものが、火炎溶融法によって合成されています。なんと、1940年ころには、合成でスター・サファイアも製造されています。

・宝石の合成・
誕生石シリーズも4月からはじめて、
はや、半年が過ぎました。
半分、終わったわけです。
この宝石についてのエッセイは、何人かの方から、
いつも楽しみにしているというメールもいただきます。
やりがいもあります。

でも、よく考えると、私のエッセイの魅力というより、
たぶん、それは、宝石の魅力ゆえかもしれません。

しかし、そうなると、その宝石の魅力が、
人間に、宝石にまつわる、悲喜劇をかずかず生みました。
私は、悲喜劇よりも、その裏に流れる、人間の執念を感じます。

例えばこんなこともあります。
今回も、そうでしたが、宝石のように高価なものは、
その高価さゆえに、安くつくることができれば、
その差額を利用すれば、もうかるというと考える人ができます。
そのような人間の執念は、
錬金術のように、科学の法則に反しない限り、
必ずや達成されます。
そこが、人間の偉大なところでもあり、
執念のすごさでもあります。
そして、一人の成功は、多くの人のまねるところとなり、
やがて価値は崩壊します。
でも、ただで転ばないのが、人間です。

もう一儲けを考える人もいます。
安さゆえ、ほかの目的で、利用されていきます。
それが、工業用として、重要な素材になります。
サファイアも、時計の軸受けや、
特殊なピンセットの先端などに利用されています。
でも、高価ですけれどね。