2002年8月1日木曜日

6_14 8月の誕生石

 暑い8月の誕生石は、メノウとペリドットです。宝石の輝きは、夏の暑さを忘れさせてくれるでしょうか。

 メノウは、一つの結晶からできているのではなく、石英の結晶がたくさん集まったものです。ですから、性質は、石英と同じで、化学組成はSiO2、モース硬度7、比重2.60です。
 模様がなく単色ものメノウを玉髄(カルセドニー、chalcedony)と呼び、縞模様があるものをメノウ(アゲート、agate)と区別して呼ぶこともありますが、多くは、両方をいっしょにして、メノウと呼んでいます。
 メノウは、瑪瑙という字があてられています。それは、原石の形が、馬の脳に似ているところから、馬脳すなわち瑪瑙とつけられたようです。
 メノウの模様が、景色や人物、動物、形にみえたりするため、古くから、形象石(lapides figurati)として、珍重されました。ヨーロッパでは大プリニウスは「博物誌」や、日本でも「和漢三才図会」に、メノウの模様に関する記述があります。
 メノウは、小さいな石英が集まっているため、結晶の間に隙間があります。その隙間に、人工的に化学成分を入れることによって、着色することができます。天然できれいな色をもたないものは、ほとんど着色されています。しかし、人工的につけた色も、安定しているため、天然石と同じ商品価値をもつものとして扱われています。
 着色は、炭素をもちいて黒色に、酸化鉄で赤色、酸化クロムで緑色、クロム酸で黄色、シアン鉄で、青色、酸化コバルトでコバルトブルーにされています。
 ペリドットは、鉱物名は、オリビン(olivine)で、日本名はかんらん石です。かんらん石は、オリーブ色(緑色)をした透明感のある鉱物です。
 英語のオリビンは、オリーブの実の色に似ていることから、付けられました。一方、日本語のかんらん(橄欖)石は、オリーブとは別種の植物である橄欖と誤訳され、それがそのまま鉱物名も「橄欖石」と訳されました。いまでは、字が難しいので、ひらかなで書かれることが多いようです。
 かんらん石は、モース硬度7~6.5、比重3.222~4.392で、岩石をつくる鉱物の中でも、重いものになります。
 かんらん石の化学成分は、(Mg,Fe)2SiO4です。この化学式で()の意味は、MgとFeを加えた合計が2になるという意味です。かんらん石は、鉄の多いもの(鉄かんらん石、fayalite、Fe2SiO4)から、マグネシウムの多いもの(苦土かんらん石、forsterite、Mg2SiO4)まで、いろいろな成分のものがあります。
 かんらん石は化学成分によって、色が少し変化します。マグネシウム(Mg)の成分が多いと、緑色になります。
 宝石としては、濃い緑色のものがいいとされています。最高級品質のものは、紅海のセント・ジョンズ島(ゼビルゲット、Zebirget島)と北ミャンマーからとれます。セント・ジョンズ島のものは、3500年以上も採掘され、ヨーロッパには中世時代、十字軍によってもたらされたといわれています。
 かんらん石は、マグマからできた黒っぽい岩石(玄武岩や斑れい岩など)によくみられます。しかし、白っぽい岩石にはほとんどありません。かんらん石は、地殻の岩石の中には多く含まれていない鉱物ですが、マントルの岩石は、半分以上がかんらん石でできています。ですから、マントルをつくる岩石をかんらん岩とよんでいます。
 かんらん岩は、マグマに取り込まれて地表に持ち上げられたり、大地の営みによってめくれ上がって地表にでることもあります。

memo
・メノウの模様・
石できれいなものや珍しいものは、
水石、珍石として日本では珍重されてきました。
メノウもその一つです。

「和漢三才図会」の「馬脳」の項には、
「其ノ中ニ人物、鳥、獣ノ形有ルモノ最モ貴シ」
とあります。

大プリニウスは「博物誌」第37巻の記述で、
「それは1個の瑪瑙で、
その表面に9人のムーサ(ミューズ)たちと
竪琴を手にしたアポロンの姿が見える。
ムーサたちはそれぞれ持物をもった姿で描かれているが、
これを描いたのは人間の手ではなく、
自然に生じた宝石の石理(いしめ)が、
そのような形に見えるのである」

石の切断面に
いろいろな物の形が見えるのがなぜかのかについて、
16、17世紀の博物学者によって
何度となく論議されてきたそうです。