2002年8月29日木曜日

4_20 秋吉台:山口1

 8月17日から21日まで、学会で山口県にいきました。そして、そのとき、秋吉台を訪れました。もちろん、秋芳洞も訪れました。よく考えたら、山口は来通り過ぎただけで、ゆっくり滞在したことはありませんでした。ですから、今回は、少し山口を見てきました。


 山口では、秋吉台と秋芳洞をぜひ見たかった。それが、今回かなえることができた。なぜ見たかったかというと、石灰岩の地形として有名であることと、秋吉台の地質が、世界に知られることになった地でもあるからです。
 秋吉台を世界に知らしめたのは、小沢儀明(おざわよしあき)でした。東大の学生であった小沢は、卒業研究として秋吉台を調査していました。その卒業研究から、大発見が生まれたのです。
 大正当時、秋吉台は今ほど道や人家もなかく、自力ですべておこなわなければなかったはずです。大草原の中を、その学生は黙々と調査していたのでした。地質調査では、石灰岩のなかに含まれている化石を調べることも重要なことです。そして、化石を見分け、どのような時代かを決めていくことも重要です。
 そして、小沢は、重要なことを発見しました。それは、地層の上にある化石が、古い時代でもので、下になるほど新しい時代の化石でした。つまり、「地層累重の法則」というもので、地層は下ほど古く、上ほど新しいという原則が、地質学にはあったのです。それに、反する現象が見つかったのです。
 どう解釈するかというと、もともとは地層累重の法則にしたがって堆積した石灰岩が、現在の地に来るときに、逆転したのです。
 小沢は、その卒業論文の成果を、秋吉台の逆転構造として発表しました(1923年発表)。そして、その業績が認められて、学士院恩賜賞を受賞しています。しかし、海外での研修から帰国した直後に、なんと31歳の若さで夭逝しました。その短い10年ほどの研究生活で、40篇もの論文を書いています。
 小林貞一は、秋吉台の逆転を起こした地殻変動が、日本列島の古生代の重要な地質変動であることを認め、小沢の発見を記念して、「秋吉造山運動」と名づけました。
 その後、秋吉台の構造については、その重要性から、何人も地質学者が検討を加えてきました。そして、モデルもいろいろなものが提示されました。何転かしましたが、逆転の構造が解明されています。
 秋吉台科学博物館の学芸員たちの研究で、より精度よく、逆転で構造が再現されています。それは、太田正道の詳細な地表踏査(1968年発表)と、学芸員たちの自力による、250mにおよぶ学術ボーリングで、今のところ決着をみています。
 逆転の地層は、秋吉台の北半分を占め、標高の高いところに、一番古い石炭紀の石灰岩、一番にペルム紀の地層がでています。そして大きな衝上(しょうじょう)断層で、接して、逆転していない地層が南半分にあります。南半分では、標高の高いところがペルム紀の石灰岩で、低いところとが石炭紀の石灰岩です。
 今では「秋吉造山運動」も研究の積み重ねによって、そのもつ内容も変化してきました。しかし、その重要性は、今でも、保っています。

・自力のボーリング・
太田は、学芸係長をしていました。
太田は、この秋吉台の地質構造を誰が見ても納得するためには、
どうすればいいのかと考えていました。
自身、地表踏査はできる限り詳細なものをしました。
そして、最終的に出した結論は、ボーリングをすることであった。
ここでいうボーリングとは、
土木工事をするとき地下に穴をほりながら、
どんな地層やあるかを、直接資料を掘り抜いてとってくるものです。
ボーリングは、一箇所に穴を開けるわけですが、
しかし、それは、見えない部分を連続的に資料を集めることができます。
ですから、地下の地層や構造がどうなっているかを知るために、
非常に有効な調査方法なのです。
秋吉台の学術ボーリングでは直径4.5cmの棒状の岩石が掘りぬけました。
しかし、ボーリングは非常に費用のかかるものです。
秋吉台科学博物館は費用はそんなにありません。
ですから、中古のボーリング装置を何年もかけて買い揃えていきました。
そして、学芸員が、ボーリングの操作を習い、
ボランティアの人たちと一緒に掘りました。
1970年に逆転している地層から掘り始められ、
1972年には250mも掘り抜きました。
そこは、逆転していない地層にまで達していた。

・衝上断層・
衝上断層とは、断層の一種です。
「衝上」の「衝」とは、「強い勢いでぶつかる」という意味です。
ですから、「衝上」とは、ぶつかって持ち上げられる断層という意味ですが、
地質学では、別の意味も加味されています。
原義にあたるものは、地層や岩石が両側から力を受けて、
圧縮されるような力が働いてできる断層になります。
それは、術後では、逆断層というものです。
衝上断層は、さらに、低角度(45度以下)の逆断層という
制限がついたものをいいます。