2002年5月23日木曜日

2_15 6億年前の大絶滅(その1)

 7億年前頃、地球では、全地球が真っ白になるくらい寒い時期があったのです。とんでもない事件です。それによって、多くの生物は、死に絶えたと考えられます。しかし、一部の生物は、しぶとく生き延びました。そんな大事件を、今回と次回の2回にわたってみてきましょう。
 地球のさまざまな時代の地層を調べていくと、その時代の環境が読み取れます。ある時代の世界各地の地層で、同じ現象が起こっていることが読み取れると、その現象は、全地球的に起こったことだとわかります。
 そんな地層の一つに、ティライト(tillite)とよばれる堆積岩があります。氷礫岩は、変わった岩石で、巨大な礫から粘土まで、さまざまなサイズの堆積物が混在した岩石、年輪のような縞模様をもつヴァーブ(varve)とよばれる堆積岩、あるいはドロップストーン(dropstone)と呼ばれる大きな石が、縞状堆積物の中に挟まっている岩石などがあります。
 これらは、いずれも氷河によって形成される岩石なのです。ティライトは氷礫岩と呼ばれ、氷河によって運ばれた堆積物である。ヴァーブは、氷縞粘土(ひょうこうねん)と呼ばれ、氷河の前面にできる湖には、夏には粗い砕屑物が冬には細かい堆積物がたまり、年輪のようにきれいな縞模様ができたものです。ドロップストーンは、凍った湖の上に、冬のあいだに転がってきた大きな礫が、春には氷が溶けて湖の堆積物の中に落ち込んだものです。
 他にも、氷河擦痕(さっこん)岩石につけられた氷河の傷跡やモレーンなどの氷河による地形など、なさまざなま氷河の証拠があります。そんな氷河の痕跡が、7億5000万年前から5億8000万年前までのいくつかの時代の地層に、見つかります。
 6億年前、大陸はいくつもの大陸が、赤道付近にありました。現在、赤道付近では、氷河は標高5000m以上でないと形成されません。ところが、赤道に分布していた大陸なのに、この時代に氷河の証拠がたくさん見つかるのです。
 5000m以上の陸地は、そんな広く分することはありません。これはいったい何を意味するのでしょうか。
 当時(6億年前)の地球が、非常に冷たかったことを意味します。その冷たさは、想像を絶するものでした。ホフマン博士の推定によると、地球全体が真っ白で、雪や氷に覆われています。当時の平均気温は-50℃、海面は1kmの厚さの氷に覆われています。ただし、地球内部の熱が放出されていますので、海洋の底までは凍らなかったと考えれています。こんな時期が、1000万年あるいはそれ以上続いたと考えられています。まるで、地球が白い雪球のようみ見えるので、スノーボールアースあるいは、全球凍結とも呼ばれています。
 なぜ、こんな寒冷化が起こるのでしょうか。それはスノーボールアースをいい出したホフマン博士によると、次のようなストーリが考えられています。
 7億7000万年前まであった一つの巨大なロディニアという大陸(超大陸といいます)が、分裂をはじめます。6億年前には、大陸は小さく分裂し、赤道付近に分布します。赤道付近の大陸では、雨がたくさん降り、大陸を侵食します。激しい雨は、大気中の二酸化炭素を溶かし、大陸から持たされたイオンと結びついて、炭酸塩の沈殿物をつくります。二酸化炭素の急速減少によって、温室効果が下がり、地表の温度が急激に下がります。その結果、大きな氷が極地域の海にできます。広く白い氷は、太陽の光をたくさんはね返し、地球を暖めるために使われません。これが、寒冷化に拍車をかけます(暴走冷却とよんでいます)。この連鎖が悪循環をうみ、全球凍結へと向かいます。
 さて、地球は大変な事態を迎えました。続きは次週です。