2002年4月11日木曜日

4_14 北京の震旦:中国1

 2002年3月24日から27日まで、中国の北京付近の地質の見学に行きました。黄砂(こうさ)に霞む、北京は、桃が咲き、桜が咲き、若葉が芽ぶく、春でした。今回の見学の目的は、先カンブリア紀とカンブリア紀の境界を見ることでした。その目的を達したような、達しなかったような、不思議な気分でした。


 北京の北西30キロメートルほどの村、三家店西方の永定河沿いに、目的の地があります。そこに、震旦紀とカンブリア紀の境界があります。中国では、カンブリア紀より前の8億年から6億年前の時代を、震旦(しんたん)紀と呼んでいます。
 さて、震旦紀とカンブリア紀の境界は、文献の上では、不整合であるとされています。今回の私の目的は、その不整合がどのようなものか見たかったのです。
 不整合とは、整合に相対する言葉です。ある地層が途切れることなく連続してたまったものを整合といいます。不整合は、たまった地層が、一度陸になり、もののたまらない状態で、何らかの侵食を受けた後、再び堆積の場となり、地層がたまったものです。
 不整合を認定するには、いくつかの条件があります。一番の条件は、上下の地層に、時間的ギャップがあることです。少なくとも削られた分の時間に相当する地層は、消失しているはずです。また、不整合の面は、水平とは限らないことです。もし、上下の地層の面が、平行でなければ(斜交しているといいます)、そこには不連続面があることになります。さらに、基底礫があることです。基底礫とは、下の地層が陸地であった時に侵食されて、その上に礫となり、上の地層の最下部(基底)に含まれているいるものをいいます。以上のような条件をみたせば、不整合と認定できるわけです。
 結論からいうと、今回の震旦紀とカンブリア紀の境界は、確認できませんでした。案内者の人によれば、他の地域では、不整合が確認できているということです。ここでは、どうも、断層によって、不整合が見えなくなっているようです。
 震旦紀の地層は、ぺらぺらとはがれやすい状態に変成された岩石(千枚岩といいます)になっていることが特徴です。千枚岩のもともとの岩石(原岩)は、赤い粒の細かい泥岩と緑の凝灰岩、淡灰色の石灰質砂岩からなっています。それのうち、泥岩は、赤色千枚岩、緑色千枚岩と呼ばれます。一方、カンブリア紀の地層は、石灰岩を主ような岩石とし、石英砂岩も含みます。石灰岩には、さまざまなものがあります。丸い石灰岩の粒を含むもの(魚の卵のように見えるので魚卵状石灰岩(oolitic limestone)と呼ばれます)竹の葉のような模様をもつものもの、化石を含むものなど、さまざまなものが見られます。
 今回観察した地点では、震旦紀の千枚岩に接して、カンブリア紀の魚卵状石灰岩があり、次ぎに、また、震旦紀の千枚岩がカンブリア紀の石灰岩があります。その間には、小さな断層はいくつもあるようで、不整合らしきところは見かけられませんでした。
 今回の震旦紀の地層は、千枚岩だけだったのですが、北京の東部には、ストロマトライトと呼ばれるシアノバクテリアがつくった岩石や、氷河堆積物からできた岩石もあります。震旦紀だけでなく、カンブリア紀の地層も、日本では見られない古い時代の地層です。中国にはもっともっと古い地層もあります。