2002年3月14日木曜日

3_27 ミグマタイト

 変成岩の中でミグマタイトと呼ばれる岩石は、限りなく火成岩に近いものです。というのはマグマと呼んでいいものを変成岩の中に持っているからです。火成岩と変成岩の境界の岩石を見ていきましょう。


 前回のべた片岩は、ぺらぺらとはがれやすそうに見える性質をもっていました。それより変成作用の程度が強くなると、もっと乱れた模様で、麻紐が絡まったような状態の、片麻状という変成岩のつくりになります。
 ある片麻岩を詳しくみますと、白っぽく、ゴマ塩の脈がみることができます。場所によっては、ゴマ塩状の部分が多かったり、集まっているところでは、片麻岩というより「ゴマ塩岩」といったほうがいいくらいのところもあります。「ゴマ塩岩」は、火成岩の花崗岩と呼んでいいものです。このような片麻岩中に花崗岩的な部分を持った岩石があります。それを、ミグマタイト(migmatite)と呼んでいます。日本語としては、混成岩ということもありますが、あまり使われていません。
 変成作用の程度が高くなると、変成岩の中に形成される鉱物も、より高温高圧で安定なものへと変わっていきます。温度や圧力などの変成作用の条件でいえば、ミグマタイトより、もっと高温高圧で形成された変成岩があります。近年には、超高温変成岩や超高圧変成岩なとが、世界各地から発見されています。
 ミグマタイトは、そのような超○○変成岩と比べれば、変成条件が低いのですが、火成岩と変成岩の境界に位置するという意味において、その重要性は変わりません。それは、変成岩と火成岩のカテゴリーは、温度や圧力で決められているのではなく、岩石の成因によって決められているからです。
 ミグマタイトが形成される条件は、ある程度限定されています。300MPa(Paはパスカルで圧力単位)以上(地下10km以深)では、圧力あまりかかわらず、溶けるか溶けないかは、温度だけで決定されます。
 花崗岩のマグマは、水が無ければ、1000℃以上でないと溶けないのですが、水を含むと700~800℃で溶けはじめ、泥岩の化学組成をもった岩石では、600~650℃で溶けはじめます。玄武岩質の化学組成をもつ岩石でも、水を含まないと1200℃以上でないと溶けないのですが、水を含むと800~1000℃で溶けはじめます。つまり、水を含む岩石の方が低温で溶けます。超高圧変成岩や超高温変成岩は、水をほとんど含まない岩石なのです。
 泥岩や砂岩の変成岩で、溶けた物質(マグマ)が集まって大きな塊となれば、花崗岩となります。溶けても集まらず、変成岩の中にそのままとどまっているのが、ミグマタイトになるのです。つまり、溶けた物質が移動するメカニズムが働くと火成岩の花崗岩になり、働かないと変成岩のミグマタイトになるという、違いを生じます。
 以上のことから、水が存在すると、泥岩や砂岩を原岩とした花崗岩質のミグマタイトは、比較的低温でできること判明しました。花崗岩質のマグマは、他の組成のマグマに比べて、比較的低温でマグマが形成されるということです。
 もう一つ重要なことは、泥岩や砂岩を構成する主要鉱物である石英、斜長石、正長石が一緒に溶けるときは、できるマグマも、ある一定の化学組成をもつものであるということです。そして、そのマグマの供給は、石英、斜長石、正長石のどれかがなくなるまで、同じマグマが形成されます。このような液形成のメカニズムが働くから、世界各地に、いろいろな時代、いろいろな原岩、いろいろな条件がありながら、いつも似たような花崗岩ができるのです。
 花崗岩は、いつでも(時代)、どこでも(地域)、同じようなもの(化学組成)が、たくさん(量)できるというの特徴があります。ミグマタイトという変成岩を調べることによって、その秘密が明らかになってきました。変成岩と火成岩は、こんなところで結びついていたのです。