2002年2月14日木曜日

3_23 玄武岩

 地殻で一番多い岩石は、なんでしょうか。それは、玄武岩(げんぶがん)です。なぜでしょ。また、玄武岩とはどんな岩石なのでしょうか、玄武岩の素性を探っていきましょう。


 地球の表面を見たとき、私たち人類が住んでいる陸地は、地球表面の30パーセント程度にすぎません。陸以外は、7割が海なのです。海の表面は液体のH2O(水)ですので、岩石はありません。海の底にある岩石は、玄武岩と呼ばれるものです。
 海底つくる岩石は、深さによって岩石の種類が少し変わります。深くなるにつれて、玄武岩から、斑れい岩、そしてかんらん岩へと変化します。斑れい岩は、玄武岩と同じマグマが、ゆっくり冷えたためできたものです。また、かんらん岩は、地殻ではなく、マントルをつくる岩石となっています。ですから、玄武岩質の岩石が、地球表層(地殻)では、一番多いといっていいわけです。
 玄武岩とは、兵庫県の玄武洞(げんぶどう)にちなんで、1884年(明治17年)に地質学者の小藤文次郎がつけた名前です。玄武洞という名称は、中国の四神の一つで亀の霊獣、または北の神様を意味する玄武にちなんでいます。玄という字は、黒を意味するもので、玄武岩の特徴を表しています。もちろん、玄武洞をつくる岩石は、玄武岩です。
 海をつくる岩石は、玄武岩ですので、陸地をつくる岩石が、どのような比率をもとうが、地球表層で一番多い岩石は、玄武岩といえます。さて、玄武岩とは、どんな特徴を持つ岩石なのでしょうか。
 玄武岩とは、マグマが急激に固まった岩石、つまり火山岩です。玄武岩は、急激に固まったので、マグマから結晶があまりできることなく固まったものです。ですから玄武岩の大部分は、ガラス(結晶化してない物質のこと)や、急激に冷えてできた微小な結晶からできています。しかし、玄武岩が地表に向かって上昇する途中で、マグマが溜まっているところ(マグマ溜り)があります。マグマ溜りでゆっくりと冷えることによって、かんらん石や斜長石の結晶が成長することがあります。結晶混じりのマグマが、海底で噴火して、固まると、結晶混じりの玄武岩となります。大きな結晶を斑晶(はんしょう)といい、それ以外の地の部分を石基(せっき)といいます。
 海底をつくる玄武岩は、特徴があります。それは、非常に均質であるということです。一般に玄武岩という名前で呼ばれる岩石も、たくさんの種類に細分されます。でも、海底の玄武岩は、化学組成において非常に均質なのです。このように特徴的な玄武岩ですので、特別な名前を付けて呼んでいます。それは、中央海嶺玄武岩(Mid-Ocean Ridge Basalt)と呼ばれ、英語の頭文字をとって、MORB(モルブ)と呼んでいます。
 MORBも実は、厳密に見ると、若干の化学組成の多様性があります。その多様性によって、斑晶つまり最初に結晶化する鉱物が、かんらん石の場合と斜長石の場合があります。でも、このような多様性は、他の岩石の多様性に比べたら、無いに等しい程度ものです。
 陸地の一つの火山をみると、何度かの噴火による溶岩は、玄武岩から安山岩、デイサイトまで多様な岩石を噴出することが、ざらにあります。しかし、地球の7割を占める海底の玄武岩は、均質な組成を持っているのです。地球の海底が、すべてMORBという玄武岩でできているのです。非常に不思議なことです。
 MORBの均質さは、何を意味しているのでしょうか。まず、海底が中央海嶺でマグマが噴出して、それが海底を移動して、今や全海底をMORBが構成しているのです。調べるの、38億年前からMORBは存在するのです。つまり、MORBをつくる作用は、長年にわたって、多分全地球史を通じて、働いているということです。また、MORBが均質であるということは、MORBをつくるためのマグマが均質であったということです。MORBマグマが均質であったということは、マグマを形成するメカニズムが常に一定の条件で作用していたことを意味します。なおかつ、マグマを供給した物質(起源物質と呼んでいます)が、全地球的に同じであることが必要です。地球の海底では、機械のような正確さで、マグマの製造、供給、固化という作用が、長年に渡って続いているのです。
 地球は、調べれば調べるほど、多様性を見出されることが多いのですが、海底にある玄武岩に関しては、均質性の世界へと導かれました。もし、海底の玄武岩のでき方が解明されたら、地球の7割の岩石の謎が一気に解き明かされたことになるのです。そしてその謎の全容は、大分わかってきているのです。