2002年2月7日木曜日

3_22 火成岩

 火成岩とは、マグマが固まってできた岩石です。火成岩には、実にさまざまなものがあります。多様な火成岩を調べれば、火成岩がどのようにして固まったか、どのようなマグマからできたか、わかります。さらに遡れば、マグマが、どのようなもの(起源物質)から、どのような条件(温度、圧力、酸化還元状態、などの物理化学条件)でできたのかを知ることができます。火成岩は、地球深部からのメッセンジャー(使者)なのです。


 火成岩の多様性は、さまざまな条件の変化によってつくられます。その多様性ができるプロセスをいくつかみていきましょう。
 火成岩は、マグマが固まったものです。マグマが固まるには、温度が冷えればいいのですが、その冷え方によって、さまざまな岩石ができます。
 急に温度が下がれば、マグマがそのまま結晶にならずに(非晶質、ガラスという状態)、固まります。このようにしてできた岩石を、火山岩(かざんがん)といいます。
 ゆっくり冷えれば、マグマに含まれている結晶の成分が、出はじめます(晶出(しょうしゅつ)といいます)。マグマが溶岩として、地表に出る前に、マグマ溜まりで、ゆっくり冷えれば、マグマと結晶が混じったものが、でることがよくあります。このような火山岩は、大きな結晶(斑晶(はんしょう))と、ガラス質や非常に小さな結晶の部分(石基(せっき))から、できていることになります。斑晶をもつ火山岩からは、マグマ溜まりの様子を知ることができます。
 充分ゆっくり冷えれば、結晶が目で見えるほど大きいものばかりでできた岩石になります。このようにしてできた岩石は、深成岩(しんせいがん)といいます。結晶の種類(鉱物)や結晶の織りなす模様(岩石組織)から、マグマがどのような条件で固まったか知ることができます。例えば、ある結晶が別の種類の結晶に取りこまれているという関係(包有(ほうゆう)関係といいます)があるとすると、取りこまれている結晶が先に晶出したことがわかります。さらに、いくつかの鉱物の組み合わせによっては、どんな圧力、温度で晶出したかを求めることができます。
 以上は冷え方による多様性形成の例です。次に成分による多様性形成をみていきましょう。
 火山岩は、マグマの成分をそのまま保存していると考えられます。だたし、ガスの成分は、固体にならないので、岩石から抜けてしまっています。火山岩に穴がたくさんあいているのは、ガスの成分が抜けた後なのです。しかし、ガスの成分は、マグマに占める割合は少なく、固化する成分でマグマの成分を代表しても間違いではないでしょう。
 さて、火山岩の化学成分を調べれば、マグマの成分が求められます。マグマの成分がわかると、地下深部の物質がどのようなものであったか推定できます。
 例として、実験による方法を紹介しましょう。高温高圧発生装置を用いて、岩石を融かして調べる方法です。地球深部の目的とする場所の温度圧力を達成するものです。地球深部は深くなればなるほど、高温高圧となります。高温高圧発生装置は卓上に置ける小さいものからから、二階建ての長い倉庫のような大きさのものまで、さまざまものが目的に応じて使い分けられています。巨大な高温高圧発生装置でも、つくられる試料は数mm立方ほどの小さいものです。
 火山岩を高温高圧条件で、いったん融かし、その後マグマが固体になるある温度圧力にして、長い時間おいておくと、その温度圧力条件で一番安定した結晶(平衡(へいこう)といいます)に変わります。さまざまな条件で実験していきますと、温度圧力条件、結晶組み合わせかを、別の情報から限定することができれば、そのマグマ(火山岩)がどのような物質とともにあったか(共存(きょうぞん))していたかが、判定できます。つまり、地下深部の様子が再現できるのです。
 火成岩は、地殻を構成する主要な岩石ですが、岩石に織りこまれた情報をうまく読み取ることができれば、地下深部のことが読み取れます。ここで紹介した方法は、私たちが知りえたもののほんの一部です。でも、私達には、まだまだ読む能力が足りません。もっともっとよく聞こえる耳、よく見える目があれば、石の言葉をもっと聞くことができるのですが。人類の知恵はまだまだ足りないようです。