2002年2月28日木曜日

3_25 変成岩

 変成岩とは、ある岩石(岩石あればなんでもいい)が、固体のまま、別の岩石に、変わったものです。変成岩には、多様な履歴が刻まれています。変成岩の履歴を読み取ること、すなわちそれは変成岩を含む周辺の大地、あるいは広く地球の地質学的歴史を読み取りことに他なりません。


 変成岩として、どうしても満たすべき条件が2つあります。それは、もとの岩石(原岩(げんがん)といいます)から「変わっている」ということと、固体のままの変化であるということ、の2つです。
 もとの岩石から「変わっている」という条件は、当たり前すぎて、なくてもいいという気がするかもしれません。でも、「変わる」という判定をどうするかということは、実は結構難しいことなのです。「
 原岩から変成岩に「変わ」らせることを、変成作用といいます。この変成作用が弱い場合には、判定が難しくなります。「もとのまま」と「変わっている」の間、あるいは境界をどこにするかということにつては、曖昧になる領域があります。そのような境界領域の弱い変成作用では、原岩の性質と変成作用でできた性質が混在します。境界領域で、原岩の性質を中心にするとき変質作用といい、原岩が堆積岩の場合は、続成(ぞくせい)作用ということがあります。
 例を挙げましょう。
 火成作用を研究する人には、原岩が火成岩であれば、火成岩として研究します。変質作用や弱い変成作用を受けていても、火成岩としての性質が読み取れる限り、火成岩の名前を付けることができます。その場合は、「変」という接頭語をつけて用います。変玄武岩、変斑れい岩などのように、火成岩の名前を付け、なんとか火成作用の履歴を読み取ろうとします。
 一方、変成作用を研究する人は、程度が低くても変成作用としての痕跡があれば、変成岩としての名前を付けて、研究します。火成岩としての性質をどんなに色濃く残していても、変成作用によって形成された鉱物があれば、それを材料に研究することができます。
 つまり、同一の岩石に関して、全く違った岩石名をつけることになります。このような混同は、生物の記載ではありえないことです。岩石の世界では、一番大きな分類である火成岩と変成岩の判定が曖昧なのです。それも、極ありふれた岩石においてです。生物で、皆が目にするイヌやネコが、動物という研究者と植物だという研究者がいるようなことになる訳です。でも、地質学の世界では、どちらも間違いではないのです。
 次に、固体のまま変化することについてです。変成作用とは、いくつかあるいは一つの鉱物が固体のまま化学反応して(固相反応といいます)、別のいくつかあるいは一つの鉱物に変わることです。原理的には、変成作用は固相反応として熱力学的に記述することが可能です。
 でも、天然の場合には、別の鉱物に変わるとき、流体が自由に出入りすることがよく起こります。流体とは、H2Oを主としてます。その他にH2Oに溶け込んでいる成分として、CO2やSO2、H2Sなどを含みます。液体といわずに流体というのは、高温高圧の条件では、液体と気体の境界が不明瞭となり、両者の共通の性質を持った相として流体という言い方をします。実は、この流体の中には鉱物の主要成分であるSiO2(珪酸)なども含むことがあり、天然の岩石の場合では、固相反応の式通りになってないことも多いのです。
 固相反応も、強い変成作用(高温もしくは高圧、あるいは両方の条件)になっていっくと、溶け始めます。つまり、マグマが形成されることになるわけです。定義上は、高度変成岩で固相反応が終わるところ、あるいはマグマの形成が始まるところ、そこが変成岩と火成岩の境界となるはです。でも、その境界も、弱い変成作用の場合と同じで、不明瞭になっていきます。なぜなら、変成岩の中にマグマが少量混じった状態であることが良く見られるからです。このような岩石は、ミグマタイト(migmatite、混成岩)と呼ばれます。ここも、火成作用と変成作用の研究者が入り混じっている境界領域となります。
 変成岩は、固相反応である限り、熱力学的に、物理化学条件を変数とした方程式として解くことができます。ですから、いくつかの限定条件は付くかも知れませんが、何らかの物理化学的条件を読み取ることができるはずです。
 地質学では、温度と圧力が重要となります。それは、変成岩によって地下のどのような環境(温度かた推定)で、そのような深さ(圧力から読み取る)で形成されたかが、厳密に(定量的に)決定できるからです。マグマは移動しますので、マグマがどのような場所でできたかを直接求めることは不可能です。しかし、変成岩の場合は、ある変成作用がどんな物理化学的条件で起こったかを、直接的に読み取ることができます。そして、その情報を集積すれば、変動の激しい大地の履歴が、定量的に読み取ることが可能なのです。

3_25 変成岩

 変成岩とは、ある岩石(岩石あればなんでもいい)が、固体のまま、別の岩石に、変わったものです。変成岩には、多様な履歴が刻まれています。変成岩の履歴を読み取ること、すなわちそれは変成岩を含む周辺の大地、あるいは広く地球の地質学的歴史を読み取りことに他なりません。


 変成岩として、どうしても満たすべき条件が2つあります。それは、もとの岩石(原岩(げんがん)といいます)から「変わっている」ということと、固体のままの変化であるということ、の2つです。
 もとの岩石から「変わっている」という条件は、当たり前すぎて、なくてもいいという気がするかもしれません。でも、「変わる」という判定をどうするかということは、実は結構難しいことなのです。「
 原岩から変成岩に「変わ」らせることを、変成作用といいます。この変成作用が弱い場合には、判定が難しくなります。「もとのまま」と「変わっている」の間、あるいは境界をどこにするかということにつては、曖昧になる領域があります。そのような境界領域の弱い変成作用では、原岩の性質と変成作用でできた性質が混在します。境界領域で、原岩の性質を中心にするとき変質作用といい、原岩が堆積岩の場合は、続成(ぞくせい)作用ということがあります。
 例を挙げましょう。
 火成作用を研究する人には、原岩が火成岩であれば、火成岩として研究します。変質作用や弱い変成作用を受けていても、火成岩としての性質が読み取れる限り、火成岩の名前を付けることができます。その場合は、「変」という接頭語をつけて用います。変玄武岩、変斑れい岩などのように、火成岩の名前を付け、なんとか火成作用の履歴を読み取ろうとします。
 一方、変成作用を研究する人は、程度が低くても変成作用としての痕跡があれば、変成岩としての名前を付けて、研究します。火成岩としての性質をどんなに色濃く残していても、変成作用によって形成された鉱物があれば、それを材料に研究することができます。
 つまり、同一の岩石に関して、全く違った岩石名をつけることになります。このような混同は、生物の記載ではありえないことです。岩石の世界では、一番大きな分類である火成岩と変成岩の判定が曖昧なのです。それも、極ありふれた岩石においてです。生物で、皆が目にするイヌやネコが、動物という研究者と植物だという研究者がいるようなことになる訳です。でも、地質学の世界では、どちらも間違いではないのです。
 次に、固体のまま変化することについてです。変成作用とは、いくつかあるいは一つの鉱物が固体のまま化学反応して(固相反応といいます)、別のいくつかあるいは一つの鉱物に変わることです。原理的には、変成作用は固相反応として熱力学的に記述することが可能です。
 でも、天然の場合には、別の鉱物に変わるとき、流体が自由に出入りすることがよく起こります。流体とは、H2Oを主としてます。その他にH2Oに溶け込んでいる成分として、CO2やSO2、H2Sなどを含みます。液体といわずに流体というのは、高温高圧の条件では、液体と気体の境界が不明瞭となり、両者の共通の性質を持った相として流体という言い方をします。実は、この流体の中には鉱物の主要成分であるSiO2(珪酸)なども含むことがあり、天然の岩石の場合では、固相反応の式通りになってないことも多いのです。
 固相反応も、強い変成作用(高温もしくは高圧、あるいは両方の条件)になっていっくと、溶け始めます。つまり、マグマが形成されることになるわけです。定義上は、高度変成岩で固相反応が終わるところ、あるいはマグマの形成が始まるところ、そこが変成岩と火成岩の境界となるはです。でも、その境界も、弱い変成作用の場合と同じで、不明瞭になっていきます。なぜなら、変成岩の中にマグマが少量混じった状態であることが良く見られるからです。このような岩石は、ミグマタイト(migmatite、混成岩)と呼ばれます。ここも、火成作用と変成作用の研究者が入り混じっている境界領域となります。
 変成岩は、固相反応である限り、熱力学的に、物理化学条件を変数とした方程式として解くことができます。ですから、いくつかの限定条件は付くかも知れませんが、何らかの物理化学的条件を読み取ることができるはずです。
 地質学では、温度と圧力が重要となります。それは、変成岩によって地下のどのような環境(温度かた推定)で、そのような深さ(圧力から読み取る)で形成されたかが、厳密に(定量的に)決定できるからです。マグマは移動しますので、マグマがどのような場所でできたかを直接求めることは不可能です。しかし、変成岩の場合は、ある変成作用がどんな物理化学的条件で起こったかを、直接的に読み取ることができます。そして、その情報を集積すれば、変動の激しい大地の履歴が、定量的に読み取ることが可能なのです。

2002年2月21日木曜日

3_24 花崗岩

 日ごろ目にする石は、川原の石ころや石造りの建物、橋などの建築物が主なものかも知れれません。これらは、大地を「構成する」ものというより、大地を「構成していた」ものです。山や海岸の崖をつくっている岩石が、本当の大地を構成している岩石です。でも、私達が一番よく目にする石は、建築用の石材として、もっとも一般的な花崗岩かもしれません。今回は花崗岩をみていきます。


 前回のエッセイ(3_23 玄武岩)で、海の底を構成する岩石が、玄武岩(げんぶがん)だといいました。では、大陸を構成する岩石は、どんな岩石でしょうか。それは、花崗岩(かこうがん)という岩石です。花崗岩の特徴は、玄武岩と比べると際立ってきます。比べてみましょう。
 花崗岩は、玄武岩と比べると、マグマでできたという共通点(火成岩といいます)以外は、対照的な特徴を持つ岩石です。岩石で対照的な特徴というのは、いくつもの点で認められます。
 玄武岩は粒が細かく、花崗岩は粒が粗くなっています。玄武岩は黒っぽい岩石で、花崗岩は白っぽい岩石です。玄武岩は重く(比重が大きい)、花崗岩は軽く(比重が小さい)なっています。玄武岩の形成年代は若く、花崗岩は古くなっています。
 このような違いは、地球の起源や地球の基本的なデザインに由来するものなのです。
 粒の細かい、粗いの意味するところは、玄武岩が火山岩で、花崗岩は深成岩ということです。玄武岩はマグマが地表で急激に冷却したのに対し、花崗岩はマグマが深部でゆっくりと冷え固まったものです。
 玄武岩が黒っぽいというのは、構成する鉱物が有色のものが多く、花崗岩の白っぽいのは無色あるいは白っぽい鉱物が多いということです。有色の鉱物とは、色のついたもののことで、玄武岩をつくる鉱物では、濃い色(岩石中では黒っぽく見える)を持ちます。そして、有色鉱物は、マグネシウム(Mg、苦と表現する)と鉄(Fe)を多く含む鉱物の場合が多く、そのようなマグネシウムや鉄を多く含む鉱物は、苦鉄質(くてつしつ)鉱物といいます。
 一方、無色の鉱物とは、色のない鉱物で、一般には透明です。白っぽい鉱物は、少量含まれている成分やできた後の変質や風化によって、もともと透明な鉱物が、白っぽく見えることもあります。無色あるいは白っぽい鉱物の代表は珪酸(珪素と酸素)をたくさん含む石英や長石(アルカリ元素とアルミニウム、珪素と酸素)などです。ですから無色あるいは白っぽい鉱物とは、珪長質(けいちょうしつ)鉱物とも呼ばれます。
 鉄を多く含む鉱物は、比重が大きくなり、アルカリ元素やアルミニウムは比重が小さくなります。そのため、玄武岩のほうが比重が大きく、花崗岩が小さくなるわけです。陸地つくる岩石が花崗岩というのは、海底をつくる玄武岩より軽いから、より上にあるわけです。
 地球の基本デザインは、重たいものは下、軽いものは上です。ですから、玄武岩より花崗岩のほうが高まりをつくっているのです。海と陸の違いは、水があるかどうかの違いだけでなく、高まりを作るか、作らないかの違いなのです。本当の違いは、陸をつくる岩石(花崗岩)と海底をつくる岩石(玄武岩)の基本的特徴の違いによっています。そして、陸が高まりを形成するために、海底が相対的に低いために、低いところとして水が溜まっているのです。この定義に従えば、水のない惑星でも、海と陸の区別が可能となります。
 年代の違いは、玄武岩が海洋の中央海嶺で常につくられ、やがて海溝に戻っていくというプレートテクトニクスの作用によって数千万年程度で更新されているの対し、花崗岩は比重が小さいために、地下に潜ることなく、いったんできたら、常に大陸として、地球表層に留まります。玄武岩と花崗岩の形成年代の違いは、岩石の基本的性質(比重)と地球の基本的デザインで(プレートテクトニクス)の反映なのです。
 花崗岩という石材は、日本のものだけでなく、世界各地から輸入されたものが多くあります。花崗岩は、ありふれた、よく見かける岩石ですが、もしかするとそれは、非常に古い大陸の切れ端がまぎれてこんでいるかもしれません。そして、花崗岩達のそんな古い履歴を読み取られる日がいつかと、待っているかもしれません。

2002年2月14日木曜日

3_23 玄武岩

 地殻で一番多い岩石は、なんでしょうか。それは、玄武岩(げんぶがん)です。なぜでしょ。また、玄武岩とはどんな岩石なのでしょうか、玄武岩の素性を探っていきましょう。


 地球の表面を見たとき、私たち人類が住んでいる陸地は、地球表面の30パーセント程度にすぎません。陸以外は、7割が海なのです。海の表面は液体のH2O(水)ですので、岩石はありません。海の底にある岩石は、玄武岩と呼ばれるものです。
 海底つくる岩石は、深さによって岩石の種類が少し変わります。深くなるにつれて、玄武岩から、斑れい岩、そしてかんらん岩へと変化します。斑れい岩は、玄武岩と同じマグマが、ゆっくり冷えたためできたものです。また、かんらん岩は、地殻ではなく、マントルをつくる岩石となっています。ですから、玄武岩質の岩石が、地球表層(地殻)では、一番多いといっていいわけです。
 玄武岩とは、兵庫県の玄武洞(げんぶどう)にちなんで、1884年(明治17年)に地質学者の小藤文次郎がつけた名前です。玄武洞という名称は、中国の四神の一つで亀の霊獣、または北の神様を意味する玄武にちなんでいます。玄という字は、黒を意味するもので、玄武岩の特徴を表しています。もちろん、玄武洞をつくる岩石は、玄武岩です。
 海をつくる岩石は、玄武岩ですので、陸地をつくる岩石が、どのような比率をもとうが、地球表層で一番多い岩石は、玄武岩といえます。さて、玄武岩とは、どんな特徴を持つ岩石なのでしょうか。
 玄武岩とは、マグマが急激に固まった岩石、つまり火山岩です。玄武岩は、急激に固まったので、マグマから結晶があまりできることなく固まったものです。ですから玄武岩の大部分は、ガラス(結晶化してない物質のこと)や、急激に冷えてできた微小な結晶からできています。しかし、玄武岩が地表に向かって上昇する途中で、マグマが溜まっているところ(マグマ溜り)があります。マグマ溜りでゆっくりと冷えることによって、かんらん石や斜長石の結晶が成長することがあります。結晶混じりのマグマが、海底で噴火して、固まると、結晶混じりの玄武岩となります。大きな結晶を斑晶(はんしょう)といい、それ以外の地の部分を石基(せっき)といいます。
 海底をつくる玄武岩は、特徴があります。それは、非常に均質であるということです。一般に玄武岩という名前で呼ばれる岩石も、たくさんの種類に細分されます。でも、海底の玄武岩は、化学組成において非常に均質なのです。このように特徴的な玄武岩ですので、特別な名前を付けて呼んでいます。それは、中央海嶺玄武岩(Mid-Ocean Ridge Basalt)と呼ばれ、英語の頭文字をとって、MORB(モルブ)と呼んでいます。
 MORBも実は、厳密に見ると、若干の化学組成の多様性があります。その多様性によって、斑晶つまり最初に結晶化する鉱物が、かんらん石の場合と斜長石の場合があります。でも、このような多様性は、他の岩石の多様性に比べたら、無いに等しい程度ものです。
 陸地の一つの火山をみると、何度かの噴火による溶岩は、玄武岩から安山岩、デイサイトまで多様な岩石を噴出することが、ざらにあります。しかし、地球の7割を占める海底の玄武岩は、均質な組成を持っているのです。地球の海底が、すべてMORBという玄武岩でできているのです。非常に不思議なことです。
 MORBの均質さは、何を意味しているのでしょうか。まず、海底が中央海嶺でマグマが噴出して、それが海底を移動して、今や全海底をMORBが構成しているのです。調べるの、38億年前からMORBは存在するのです。つまり、MORBをつくる作用は、長年にわたって、多分全地球史を通じて、働いているということです。また、MORBが均質であるということは、MORBをつくるためのマグマが均質であったということです。MORBマグマが均質であったということは、マグマを形成するメカニズムが常に一定の条件で作用していたことを意味します。なおかつ、マグマを供給した物質(起源物質と呼んでいます)が、全地球的に同じであることが必要です。地球の海底では、機械のような正確さで、マグマの製造、供給、固化という作用が、長年に渡って続いているのです。
 地球は、調べれば調べるほど、多様性を見出されることが多いのですが、海底にある玄武岩に関しては、均質性の世界へと導かれました。もし、海底の玄武岩のでき方が解明されたら、地球の7割の岩石の謎が一気に解き明かされたことになるのです。そしてその謎の全容は、大分わかってきているのです。

2002年2月7日木曜日

3_22 火成岩

 火成岩とは、マグマが固まってできた岩石です。火成岩には、実にさまざまなものがあります。多様な火成岩を調べれば、火成岩がどのようにして固まったか、どのようなマグマからできたか、わかります。さらに遡れば、マグマが、どのようなもの(起源物質)から、どのような条件(温度、圧力、酸化還元状態、などの物理化学条件)でできたのかを知ることができます。火成岩は、地球深部からのメッセンジャー(使者)なのです。


 火成岩の多様性は、さまざまな条件の変化によってつくられます。その多様性ができるプロセスをいくつかみていきましょう。
 火成岩は、マグマが固まったものです。マグマが固まるには、温度が冷えればいいのですが、その冷え方によって、さまざまな岩石ができます。
 急に温度が下がれば、マグマがそのまま結晶にならずに(非晶質、ガラスという状態)、固まります。このようにしてできた岩石を、火山岩(かざんがん)といいます。
 ゆっくり冷えれば、マグマに含まれている結晶の成分が、出はじめます(晶出(しょうしゅつ)といいます)。マグマが溶岩として、地表に出る前に、マグマ溜まりで、ゆっくり冷えれば、マグマと結晶が混じったものが、でることがよくあります。このような火山岩は、大きな結晶(斑晶(はんしょう))と、ガラス質や非常に小さな結晶の部分(石基(せっき))から、できていることになります。斑晶をもつ火山岩からは、マグマ溜まりの様子を知ることができます。
 充分ゆっくり冷えれば、結晶が目で見えるほど大きいものばかりでできた岩石になります。このようにしてできた岩石は、深成岩(しんせいがん)といいます。結晶の種類(鉱物)や結晶の織りなす模様(岩石組織)から、マグマがどのような条件で固まったか知ることができます。例えば、ある結晶が別の種類の結晶に取りこまれているという関係(包有(ほうゆう)関係といいます)があるとすると、取りこまれている結晶が先に晶出したことがわかります。さらに、いくつかの鉱物の組み合わせによっては、どんな圧力、温度で晶出したかを求めることができます。
 以上は冷え方による多様性形成の例です。次に成分による多様性形成をみていきましょう。
 火山岩は、マグマの成分をそのまま保存していると考えられます。だたし、ガスの成分は、固体にならないので、岩石から抜けてしまっています。火山岩に穴がたくさんあいているのは、ガスの成分が抜けた後なのです。しかし、ガスの成分は、マグマに占める割合は少なく、固化する成分でマグマの成分を代表しても間違いではないでしょう。
 さて、火山岩の化学成分を調べれば、マグマの成分が求められます。マグマの成分がわかると、地下深部の物質がどのようなものであったか推定できます。
 例として、実験による方法を紹介しましょう。高温高圧発生装置を用いて、岩石を融かして調べる方法です。地球深部の目的とする場所の温度圧力を達成するものです。地球深部は深くなればなるほど、高温高圧となります。高温高圧発生装置は卓上に置ける小さいものからから、二階建ての長い倉庫のような大きさのものまで、さまざまものが目的に応じて使い分けられています。巨大な高温高圧発生装置でも、つくられる試料は数mm立方ほどの小さいものです。
 火山岩を高温高圧条件で、いったん融かし、その後マグマが固体になるある温度圧力にして、長い時間おいておくと、その温度圧力条件で一番安定した結晶(平衡(へいこう)といいます)に変わります。さまざまな条件で実験していきますと、温度圧力条件、結晶組み合わせかを、別の情報から限定することができれば、そのマグマ(火山岩)がどのような物質とともにあったか(共存(きょうぞん))していたかが、判定できます。つまり、地下深部の様子が再現できるのです。
 火成岩は、地殻を構成する主要な岩石ですが、岩石に織りこまれた情報をうまく読み取ることができれば、地下深部のことが読み取れます。ここで紹介した方法は、私たちが知りえたもののほんの一部です。でも、私達には、まだまだ読む能力が足りません。もっともっとよく聞こえる耳、よく見える目があれば、石の言葉をもっと聞くことができるのですが。人類の知恵はまだまだ足りないようです。