2001年12月13日木曜日

3_16 マントル

 よくある例えですが、卵を固体地球に例(たと)えると、地殻は卵の殻にあたり、白身がマントルに当たり、黄身が核(コア)に当たります。白身のマントルと黄身の核は、成分が全く違います。成分でいえば、マントルは地殻に似ています。でも、よくよく見ると、マントルと地殻も違いがあります。


 マントルは、地殻より下にあります。ですから、地表に住んでいる私達には、直接見ることはできません。どうすればマントルを「見る」ことができるでしょうか。間接的に見る方法としては、地震波を利用したり、高温高圧岩石合成実験をする方法があります。しかし、一番いい方法は、なんといってもマントルの物質を手に入れることです。地表を丹念に地質調査すると、マントルから持ち上げられてきた物質(それは岩石です)を、少しですが見つけることができます。そのようなマントルの切れ端から、マントルを「覗いて」みましょう。
 前回の「3_15 地殻」で紹介したように、大陸地殻を構成する岩石は花崗岩で、海洋地殻を構成する岩石は玄武岩でした。そして、それは、「重いものが下」という原則で、並んでいました。マントルもやはり、その規則にそっています。マントルを構成している岩石は、花崗岩や玄武岩より重いかんらん岩という岩石からできています。
 かんらん岩は、花崗岩や玄武岩より比重が大きく、主としてかんらん石という鉱物からできます。かんらん石は、オリーブ色をしたきれいな結晶で、英名はその色の通りオリビン(olivine)といいます。かんらん石は、きれいな色から飾り石としても利用されています。かんらん石は、玄武岩にも含まれていますが、かんらん岩では、その岩石名通り、大部分がかんらん石からできています。
 マントルは、地表30kmの深さから2,900kmの深さまでを占めます。温度圧力の条件では、マントルの一番上は温度600~1,000℃、圧力1GPa、一番深いところでは4,600℃、140GPaになります。多分、想像もできないほどの高温高圧だと思いますが、地球の深部とはそんな所なのです。
 かんらん石も、高温高圧条件に置かれますと、かんらん石のままでいられません。つまり、かんらん石が、かんらん石でいられるのは、ある決まった温度圧力の範囲なのです。その範囲を越えてより高温高圧になると、もっと密度の大きな結晶に変化します。このような結晶の変化を相転移といいます。マントルでは、相転移が起こる温度圧力の条件、つまり深さがあります。その境界は、400kmから670kmの範囲で、遷移帯と呼ばれています。その遷移帯を境界として、浅いほうを上部マントル、深いほうを下部マントルといいます。下部マントルは、もちろん、もはや、かんらん石はなく、全く違う種類の鉱物(ペロフスカイトと呼ばれるスピネルの一種)になっています。このような深部の岩石は、天然では見つかりません。でも、高温高圧岩石合成実験において少量ですが作られています。
 地球の体積(全地球の82%をマントルが占める)でも重さ(68%)でも、マントルは重要な構成物であるマントル。その実態は、深くなればなるほど、分かりにくくなります。つまり、手に入いる情報は、私達人類が住んでいる地表から遠くなればなるほど、減っていきます。でも、その情報不足を補うのが、人類の知恵であり想像力なのです。