2001年11月8日木曜日

3_11 相と層

 地球には、いくつかの相(そう)があり、層をなしています。どのような相が、どのような層をなし、どのような秩序がそこにはあるのでしょうか。地球を丸ごと見ていきましょう。


 地球は、多様な物質が、多様な相をなして、複雑に絡み合ってできています。ここでいう相とは、個々の物資を意味するものでなく、固体や液体、気体、あるいは生命など、非常の大きな区分で見ていきます。相を構成するものも、静止しているわけではなく、時間と共に、移動したり変化したりしています。ですから、相自体も変化しています。それが、地球を構成する相の真の姿です。
 そんな複雑な地球ですが、現状を相という区分けだけでみていくと、実は、案外単純な秩序で、構成されていることが見て取れます。地球における気体の相(気相)は、大気です。液体の相(液相)は海洋、生命の相は生命、固体の相(固相)は地球の固い部分です。このようなものが、層をなして重なっているのです。層の形成における秩序は、軽いものが上、重いものが下、という単純なものです。相を地球規模で語るとき、圏(けん)という呼び方をするときがあります。気相である大気は気圏、生命は生物圏、液相である海洋は水圏、固い岩石でできている固体部分を岩圏といいます。
 固体は、岩圏よりさらに深くまでおよんでいて、地殻、マントル、核という層構造があります。その層構造は、重いものは下、軽いものは上という秩序が維持されています。岩圏というと、だいたい固相の上部だけの100キロメートル程度をいいます。岩圏は、固相の地殻とマントルの最上部だけを指しています。
 このような層は、地球にもともと形成されていたものではなく、あるとき、ある仕組みで形成されたものです。それは、隕石からわかります。
 地球の材料となった隕石(始源(しげん)的隕石といいます)が見つかっています。小さな隕石ですが、その隕石には、岩石の成分の他に、H2OやCO2、N2、C、Fe、FeSなどの成分がかなりたくさん含まれています。岩石は地球のマントルから地殻の主要成分です。H2Oは海洋の主成分で、H2O、CO2やN2は大気の主成分に、CO2、N2やCは生命の主成分に、FeやFeSは核の主成分になっています。つまり、始源的隕石の中に、現在の地球の成分が、すべて含まれていたのです。このような隕石がたくさん集まれば、地球を構成することができます。ただ、今の地球のような層構造をつくるには、別の作用として、相の分離が起こらなければなりません。それは、地球の初期に起こったの出来事です。
 地球誕生のストーリの概略は、以下のようです。原始の惑星として、地球が誕生する時は、大量の隕石が集まってできます。隕石の衝突は激しく、衝突する現場では、大量のエネルギーが開放されます。現場は、高温高圧の状態になります。そのとき、隕石に含まれていた気体になりやすい成分(揮発(きはつ)成分と呼びます)は、固相から放出されます。揮発成分が原始の大気という層になります。ぶつかられた原始地球側も高温高圧となって、岩石が溶けます。激しい衝突が続くと、原始地球は解け、マグマの海となります。マグマの海では、鉄(Fe)や硫化鉄(FeS)が、岩石とは分離します。分離したFeやFeSは重たい成分ですので、沈んでいきます。それが、やがて核という層を形成していきます。
 地球創世期の激しい相と層の形成の物語は、以上のようなものです。でも、原始の相と層は、現在のものとは違います。相と層が、現在の姿になるまで、ゆっくりとした相と層の変遷の歴史が始まります。それは、次回以降にしましょう。