2001年10月18日木曜日

1_14 最初の陸(2001年10月18日)

 最初の陸とは、海でない部分だけを意味するのではありません。つまり水のないところを陸と考えますが、陸の特徴はそれだけではありません。海と陸と一対のものですが、地質学的には、海と陸をつくっているものが違うのです。陸は陸の石で、海は海の石でできています。そして、陸の石も海なくしてはできないのです。海と陸とは切っても切れない関係です。最初の陸の話しです。
 陸は、色々な岩石からできています。でも、起源による分類でいいますと、火成岩が圧倒的に多い岩石になります。なかでも、花崗岩(かこうがん)とその変成岩である片麻岩(へんまがん)が一番多い岩石です。大陸は、花崗岩からできているのです。
 花崗岩は、マグマが固まってできます。大量の花崗岩のマグマがどうしてできるかというと、説はさまざまですが、どの説でも水が必要となります。溶ける物質は、堆積物や大陸深部物質など、さまざまの考えがあります。水が、そのような地球深部の物質に加わることによって、花崗岩のマグマが大量にできます。水の供給源は海です。そして供給のメカニズムとして、プレートテクトニクスが考えられます。
 プレートテクトニクスとは、海嶺で形成されたプレートと呼ばれるものが、海底で冷えて、海溝で沈み込む、という一連の運動による地球の仕組みです。沈み込むプレートと共に、水を含んだ堆積物や岩石も沈み込み、潜るにつれて、圧力が上がります。やがて、水が絞りだされて、水は上昇し、上にある物質を溶かすのです。
 高温高圧の条件に置かれた物質に、水が加わると、溶けはじめることがあります。ですから、今まで固体であったところに、水が加わるとマグマができることがあるのです。その時に特徴的にできるマグマが、花崗岩質のマグマなのです。だから、花崗岩と水とは密接な関係があるのです。
 大陸には古い時代の花崗岩たくさんあります。そして、各時代に花崗岩があります。ということは、間接的ではありますが、花崗岩の存在自体が、海の存在の証拠となります。
 ことろで、最古の花崗岩はどれくらいまで遡るのでしょうか。一番古い花崗岩は、約40億年前のものです。カナダの北西準州のアカスタ地域で見つかったものです。水の存在の可能性(42.8億年前)よりは、古くなりませんが、最古の堆積岩(38億年前)よりは、古いものとなります。
 10年以上前になりますが、そのアカスタ地域を調査したことがあります。すると、不思議なことに、「当時、最古の花崗岩(39.8億年前)」より古い岩石を見つけました。それは、地質学的証拠から明らかになったものです。その証拠とは、最古の花崗岩がマグマとして入り込んだという現象(貫入(かんにゅう)という)が、見つかったのです。
 最古の花崗岩が貫入している岩石は、斑れい岩が変成されてできた角閃岩と呼ばれる岩石です。つまり、最古の花崗岩がマグマとして貫入するとき、斑れい岩はすでに固体として存在したことを示しています。でも、その角閃岩の年代を決定することができないため、最古の座を奪えなかったのです。そうこしているうちに、同じ地域の同じような岩石で、より古いものが発見されたのです。でも、もしかするとその角閃岩は本当は、まだ最古の座をもっているかもしれません。それは、その角閃岩のみが知っているのです。