2001年10月11日木曜日

1_13 最初の海(2001年10月11日)

 最初の海。それは、いつできて、どのようなもので、何が起こったのでしょうか。過去の海を、現在から、どうして探るのでしょうか。最初の海にまつわる話です。
 最初の海も、やはり液体の水を主成分としていたはずです。そう考えるには、いくつかの理由があります。
 まず、水(H2O)の成分である水素(H)と酸素(O)が、太陽系では(宇宙においても同じことがいえます)非常に多い成分であること。つまり、ありふれた成分で、どこにでもたくさんある物質なのです。つぎに、太陽からの位置から考えて、地球付近ではH2Oは、固体や気体ではなく、液体として存在できる条件なのです。このような理由から、地球の海は、液体のH2Oが主成分であると考えられます。
 現在の海は、水を主成分としていますが、その他の成分が色々混じっています。その成分まで、最初の水と一緒かどうかはわかりません。でも、多くの成分は、最初の海にも溶けていたはずです。その理由は、水自身の性質によります。水は、非常に他の成分を溶かしやすい性質があります。地球の表面は、非常に多様な成分からできていたはずですから、その成分の中で水に溶けやすいものが、最初の海の副成分になったはずです。このような副成分を気にするのは、最初の海が、生命の誕生の場として一番ふさわしく、その場には生命の材料や生命誕生の条件が整っていなければならないからです。
 さて、最初の海の証拠なんて、あるのでしょうか。それは、石の中にあります。石の中でも堆積岩は、川によって運ばれた土砂が、海でたまって固まったものです。ですから、古い堆積岩を探せば、その時代には海があったという証拠になります。直接海を見ているわけではありませんが、海でできたものが残っていれば、それは、海があった証拠となるわけです。
 最初の海の証拠は、現在のところ、38億年前のグリーンランドの堆積岩が最古のものです。礫岩から砂岩など、現在でもみられるような堆積岩があります。また、縞状鉄鉱層という不思議な堆積岩もあります。縞状鉄鉱層は、海水中の鉄のイオンが酸化され、沈殿してできた岩石です。そんな岩石が、38億年前にあったのは、非常に不思議な話しですが、それは別の機会に紹介します。でも、このような堆積岩の存在は、38億年前には海があった動かぬ証拠となっています。
 その後、地球の各地から、さまざまな時代の堆積岩が見つかっています。ほぼ全ての時代の堆積岩があります。このことから、38億年以降、地球には現在に至るまで、海が存在しつづけているのです。つまり、地球の表面は、0℃から100℃の間に収まっているのです。それは、最初に述べたように、地球は、太陽から液体の水が存在できる位置にいるからなのです。
 さらに古い海の証拠として、「1_6 最古の鉱物のもつ意味」で紹介した42.8億年前のジルコンがあります。そのジルコンの酸素同位体から、マグマの酸素同位体組成を推定し、マグマをもたらした物質が、堆積岩であったという仮説があります。そのような仮説は、論理的には可能ですが、まだ真偽の程は定かでありません。