2001年9月20日木曜日

5_12 万物の年齢を調べる

 宇宙や地球は、いつ生まれたのでしょうか。そして、現在、何歳なのでしょうか。私たちは、宇宙の中で宇宙の一部として、地球の中で地球の一部として生まれました。宇宙や地球の一部として存在する私たちが、どうすれば自分より古いものの年齢を知ることが出来るのでしょうか。年齢の調べ方を紹介します。

 「5_4 年代決定の原理(2001年2月22日)」のエッセイで、ジルコンという鉱物の1個からも年齢を決めることができるということを紹介しました。今回は、もっと広く、年代を知るには方法を考えましょう。
 時間を知るためには、一般に、時計を利用します。宇宙や地球の「時」を測るには、2種類の時計を利用することが可能です。
 最初の時計は、ずっと動き続けている時計です。それは、過去も現在も、そして将来も動いている時計です。その時計を用いて、生まれた時の「時刻」を記録や、記憶しておけばいいのです。人間の年齢は、両親が、自分の生年月日・時刻を覚えてくれているために、その「時刻」から現在までの期間が、自分の年齢として測ることができます。これが第1の時計です。
 人間のように時刻を記憶できないものは、どうすればいいのでしょうか。石ころや、地層、化石などの年齢は、どうして求めるのでしょうか。それが、第2の時計です。この時計は、生まれたものの中でスタートする時計です。あるいは死ぬとスタートする時計です。そのような時計を探し出して、その時間を読取るという方法があります。
 両方の時計において、「放射性核種」と呼ばれる元素が、時を刻む役割をします。
 元素には、同じ元素なのに少し重さの違う同位体(どういたい)と呼ばれるものがあります。同位体の違い区別して元素を呼ぶ場合、核種(かくしゅ)という呼び方をします。同位体の中には、放射能を出す核種があります。放射性核種が、年齢を知りたい石ころにあれば、その時間を読取ることが可能です。
 放射性核種は、一定の時間がたてば壊れて、別の安定な類種に変わります(崩壊(ほうかい)あるいは壊変(かいへん)といいます)。ですから、放射性核種(親核種)と、壊れてできた安定核種(娘核種)の量が正確にわかれば、放射性核種ができてからどれくらい時間がたったかわかります。
 放射性核種が目的のものの中に見つけることができれば、時計を手に入れたことになります。
 放射性核種は、宇宙ができた時と、超新星爆発によってできます。地球を計るときは、太陽系が形成されるもととなった超新星爆発になります。これが第1の時計にあたります。また、太陽の放射や宇宙の放射によって、常にある一定(平衡状態といいます)の放射性核種が形成されていて、その形成の作用が何らかの理由でストップした時に、放射性核種の平衡状態から壊変が進む場合が第2の時計です。
 マグマからできた岩石では、もう一つ巧妙な仕組みの放射性核種を用いた時計が、利用できます。マグマは、岩石が溶けて形成されます。もとの岩石の中ではバラバラであった親核種と娘核種の量が、マグマという液体になると均一の値になります。そして、マグマが固まって各種の結晶ができる時、結晶の種類、あるいは岩石の種類によって、親核種の量が変化します。岩石ができて長い時間たつと、親核種の量が違うので、そこからできる娘核種の量も違ってきます。ですから、同じマグマからできた、岩石や結晶をいくつか集め、その親核種と娘核種の量から経過した時間を測ることができます。
 こうしてみていくと、「時」を計るということにも、科学者の努力のあとがうかがわれます。まさに、人類の知恵の集積がみれて、非常に興味深いことです。