2001年4月5日木曜日

4_6 澄江へ(中国への旅1)

 2000年10月25日から11月1日まで、中国に行ってきました。目的は、古い時代の化石とその産地を見学することと、石灰岩の地形を見ることでした。


 古い時代の化石は、澄江(チェンジャン)という地域に産出します。澄江は、中国南部の雲南省の省都の昆明から車で2時間ほど南にあります。何の変哲もない、小さな田舎都市です。
 澄江が注目されているのは、カンブリア紀直前の時代(5億7000年前こと)の化石がたくさん出るからです。一般に生物の多様な化石が出現するのは、カンブリア紀以降の顕生代と呼ばれる時代です。しかし、その直前から、生物出現の兆しが、いくつかの地域で見つかっています。その地域の中で今一番、一番注目されているのが、この澄江なのです。
 万国地質学会のワークショップが1995年に中国で開かれた時、カンブリア紀とそれ以前プレカンブリア紀の境界の模式的な地域として、この澄江が選ばれたのです。その理由は、ここの地層には、プレカンブリア紀とカンブリア紀の時代境界部が連続的に堆積しているからです。他の地域にも、この時代境界の地層はあるのですが、断層や不整合などと呼ばれる不連続な境界であるために、時代境界で何が起こったかを調べるのには不適切な素材なのです。澄江では、境界部が連続的に残されているので、何が起こったかのかを研究するには最適なのです。
 ではプレカンブリア紀とカンブリア紀の境界は、どうなっているのでしょうか。いくつかのタイプの化石が多数出現してます。生物が這った跡(生痕(せいこん)化石と呼ばれます)は各地層にたくさん出るのですが、少なくとも3つの動物群化石のでるゾーンがあります。
 化石の出るところが境界候補になるのですが、4通りの可能性が主張されており、そのどこを境界にするのかが難しい問題となっています。国際的には、あるゾーンを境界とするという決定をしているのですが、私たちを案内してくれた中国の地質学者はもっと下の地層(もっと古い時代)を境界にしたいと考えています。
 今後も議論は続きそうですが、そのような議論ができるのも連続した地層という研究素材があるからです。