2001年3月15日木曜日

2_8 火星の生命

 2月27日付けのアメリカ科学アカデミーの機関紙に2つの論文が載りました。その論文は、火星から飛んできた隕石から生物の痕跡を発見したという報告でした。火星生命化石に関するニュースは、これが2度目です。本当に火星に生命がいたのでしょうか。科学界では、このニュースをどのように捉えているのでしょうか。
 1度目のニュースは、1996年の夏でした。アメリカの科学雑誌サイエンスに、火星起源の隕石から化石を発見したという報告が載りました。その雑誌が出る直前に、NASAの長官が事前にプレスへ発表しました。その発表の数日前から、インターネットのメイリング・リストでは、「何かしらないけど大発見があったらしい」という噂が流れていたのですが、NASAの長官の記事が、写真付きで新聞に出たときは、私も少なからず驚きました。すぐさまサイエンスのホームページにアクセスして、その論文を取り寄せました。
 1996年の論文が出てから1年間くらいは、さまざまな学会で、火星生命の真偽のほどが議論され、特集号もたくさん出版されました。
 今回の化石の発見も前回の同じ隕石のALH84001からの発見でした。前回の論文では、炭酸塩の形態や、生物特有の化学組成を持っていることが、その根拠となっていました。今回は、磁鉄鉱(Fe3O4)という鉱物に関する報告でした。一つは、形態が地球のバクテリアだけがつくる磁鉄鉱にそっくりであるという報告でした。もう一つは、有機体でしかできない磁鉄鉱の結晶の鎖の発見でした。
 前回も今回も、火星生物の証拠となった炭酸塩や磁鉄鉱は、生物でなくても無機的にできる可能性がある、という反論が強くあります。今のところまだ、断定的結論は出ていませんが、否定的見解が多いようです。しかし、どの研究者も、強行に否定しません。それは、完全に否定してしまうと、火星探査のための予算が打ち切られることを懸念しての配慮かもしれません。学術雑誌の特集号でも、否定的ですが、その真偽を決定するためには、更なる火星における探査や調査が必要としています。
 果たして、火星に生物はいたのでしょうか、あるいは今の火星のどこかにいるのでしょうか。火星人の夢は敗れたのですが、私たち地球人は、宇宙で孤独な存在ではないのかもしれません。そんな可能性を、このニュースは伝えているのです。