2001年3月15日木曜日

2_5 小さい生命たち

 細菌は非常に小さい生物で、日ごろのほとんど目にしない、あるいは気にしてないものです。あえて細菌といえば、ヒトにとって有害なものと考えて、なんでもかんでも殺菌しなければならないように思ってしまいます。細菌は、私たちヒトとはまったく無関係で、有害なものなでしょうか。実は、私たちと共通の祖先をもつのです。このようなことが、なぜわかったのでしょうか。見ていきましょう。
 地球を宇宙を見たとき、何色に見えるでしょか。青と白、茶色、緑が目立つ色です。このうち緑は、生命が出している色です。つまり、植物です。宇宙から見て、存在が確認できるほど多くの生物は、植物なのです。緑は、一つの種類ではありませんが、植物全体として、地球を広く覆っているのです。植物は、地球を制覇しているように見えるのですが、実は細菌や古細菌と呼ばれる生き物も、もう一つの地球を制覇していました。それは過去の地球です。そして、生命の進化において重要な役割を果たしました。
 私たちヒトは、真核生物に分類されます。真核生物とは、核を持っている生物です。核(かく)とは、一つ一つの細胞の中でDNAが収められている膜です。核を持たない生物は、原核生物と呼ばれ、DNAは細胞の中に散らばっています。細菌(正確には真正細菌)や古細菌は原核生物でです。真核生物と原核生物を比べると、原核生物を1としたとき、真核生物の細胞の大きさは100倍以上あり、DNAも10から1000倍以上あります。
 細菌と古細菌と真核生物は、それぞれ別の分類体系になるほどの違いあります。その分類方法は、塩基配列を調べておこなわれます。リボソームのRNA分子(rRNA)の全塩基配列を用いておこなわれます。リボソームは、すべての生物が細胞内にもっているたんぱく質を合成する器官です。塩基配列の変化は時間とともにある確率的によって起こっているという仮定をもとに、遺伝距離法という研究法があります。遺伝距離法によって、各生物のrRNAの変化が、今からどれくらい前に起こったかを計算することもできます。絶対的な時間に関する精度はまだ不充分ですが、分かれた順番や、その相対的な時間においては、比較的正確に求めることができます。
 その結果、一番最初、生命は細菌と古細菌に分かれます。その後、古細菌と細菌の違いよりもずっと隔たったところで真核生物が分かれます。真核生物は、古細菌に近いほうに位置しています。つまり私たちは、古細菌と共通の祖先を持っているということです。さらに遡ると、細菌類とも共通のすべての生命の祖先にたどり着きます。そのような祖先はまだ見つかっていません。すべての生命の共通の祖先として、コモノートと呼ばれています。