2024年3月14日木曜日

6_209 AIで最初の星 4:銀河考古学

 最初の星に由来する元素を、AIで解析した報告がありました。太陽系近傍の若い星には、複数の星に由来する元素が用いられていました。これは、銀河、宇宙の形成の時空間へ、情報を与えることになりそうです。


 観測で調べた若い星の元素組成を、AIで解析した報告がなされました。すると、ひとつの最初の星に由来する元素からだけではなく、複数の星に由来することがわかってきました。この結果は、どのような意味があるのでしょうか。
 星は、形成場の周辺に存在している元素が素材になります。今回の報告では、若い星の形成場には、いくつもの最初の星に由来する元素がありました。形成場は、複数の星の超新星爆発が起こり、元素が混在していたことを示していました。これは、最初の星は、同時期に形成され、同時期に超新星爆発を起こしたことを意味しています。
 複数の最初の星の元素が集まっているということは、近くに最初の星がいくつも形成されていた状態、つまり星団となっていたと考えられます。これは、宇宙創成期に、星の形成場では、星の分布が不均質だった可能性を示していそうです。
 最初の星の様子を、形成時期だけでなく位置関係も推定させることになってきました。これらの内容は、最初の星の誕生のシナリオでも考えられていましたが、今回の報告で、その証拠が示され、定量化もできたことになります。
 さらに、超新星の元素合成であらゆる可能性での元素組成をシミュレーションして、AIに学習させました。その学習結果を、現実の観測値このような過去の星「最初の星」の様子を推定に利用するというアイディアは素晴らしいものでした。そして、太陽系近傍の星に適用してえられた結果は、今後、全宇宙の適用していく時の重要な作業仮説にできます。
 このような研究手法は、過去の銀河や恒星の探査は「銀河考古学」と呼ばれています。銀河考古科学には、星の元素の特徴を用いて調べるほかにも、星の分布、星の運動などを用いても研究が進められています。近年、観測衛星の高精度のデータから、星の固有運動を正確に決定できるようになってきました。星の運動を用いる研究も、進められています。
 太陽系の近くの恒星から、古い銀河、宇宙開闢の様子を探ろうとするアイディアは面白いですね。

・マスク・
集中講義が終わり、3月のバタバタも
これで一段落となります。
今週末には、学位記授与式がおこなわれます。
コロナ禍以来、やっと通常の学位記授与式となります。
まだ教職員にも学生にも
マスクをしている人が、まだ何割かいます。
そのため、素顔を覚えることなく
卒業していく学生もいます。
街で素顔の卒業生とすれ違っても
見分けがつかないかもしれません。

・定活・
今年から、かつての状態に戻り
全学の卒業を祝う会がおこなわれます。
今年からゼミを持たなくなったので、
身近な学生との懇親会がなくなりました。
コロナ禍が終わって、やっと学生との
宴会ができる状態になったのですが
学生との飲み会ができないのが残念です。
まあ、定活(定年退職に向けての準備)と思って
少しずつ、変化に慣れていきましょう。

2024年3月7日木曜日

6_208 AIで最初の星 3:スペクトル分析

 恒星の元素組成は、光のスペクトル分析で調べることができます。最初の星の超新星爆発で形成される元素組成は、理論から推定することができます。両者を、AIを用いて解析することで、新しいことがわかってきました。


 恒星の元素組成は、どうして知ることができるのでしょうか。恒星の光の観測から推定できます。私たちの太陽も同じ方法で調べることができます。
 太陽を例にしましょう。太陽からでている光を、プリズムを通すと波長ごとに分けることができます。その様子を詳しくみていくと、明るい線や暗い線がたくさん見つかりました。
 明るい線(輝線)は、太陽の内側で輝いているところに多くある元素が出している光で、その波長の特徴を示しています。一方、暗い線(暗線)は、太陽が出している光が、外側の大気中にある元素に、吸収された光の波長の特徴を示しています。光の波長ごとの特徴から、恒星(太陽)の元素組成を知ることができます。
 このような方法をスペクトル分析といいます。遠くの星のスペクトル分析ができれば、その元素組成も調べることができます。これは恒星の観測データから、その星の元素組成が決めることを意味しています。
 一方、最初の星の内部の核融合のプロセスが理論的に計算できます。同様に、超新星爆発で合成される元素組成の計算もできます。こちらは理論的に最初の星の元素組成を想定することができます。ただし、最初の星のサイズが異なれば、元素組成も異なってきます。
 二代目の星は、最初の星とその超新星爆発で形成された元素組成と、周辺のビックバンでできた元素からできるはずです。何代目がわからないとして、重い元素の少なければ、若い星とみなせます。若い星の元素組成を観測して調べていきます。
 この論文の工夫された点は、最初の星の超新星爆発で形成される元素組成を、いくつものパターンを理論的に計算して、AIを用いて観測した星が、どのような組成の超新星爆発からできかを区分していったことです。
 AIの解析により、ひとつの超新星爆発の元素でできた星と、複数の超新星爆発でできた星が、区別できようにました。太陽系の近くにある462個の重い元素を含まない星を調べた結果、31.8%がひとつの星から来た元素であることがわかりました。このような星をモノエンリッチ(mono-enriched ひとつに富む)と呼んでいます。それ以外の68%ほどが、複数の超新星爆発による元素からできていることがわかってきました。このような星をマルチプリシティ(multiplicity 多元素性)と呼んでいます。
 これは、どのような意味をもっているのでしょうか。次回としましょう。

・事前指導・
現在、集中講義の最中です。
教育実習のための事前指導のための
授業となります。
ゴールデンウィーク開けから
教育実習がはじまります。
その前の準備となります。
先生として実際の授業を進めてきます。
はじめてのことなので、
なかなかうまくいかないでしょうが
実際の体験すること、
失敗することも重要です。
学ぶことが多いと思います。

・著書の執筆中・
著書の執筆を進めてみます。
当初予定より、1月ほど遅れてスタートしました。
それは、この著書に関係する
論文の草稿を執筆していたためです。
その論文や著書を書きながら
構想を深めてきました。
おかげで、これまで大学で研究してきた
いくつかのテーマがすべてつかって
総括できるような内容に発展してきました。
あとは、その内容をどこまで深めていけるかですが、
これが、なかなか難しく、頭を使う必要があります。
3月中になんとかまとめたいと考えています。

2024年2月29日木曜日

6_207 AIで最初の星 2:超金属欠乏星

 最初の星を見つけるのは難しいのですが、最初の星に近い初期の星なら、見つけられます。初期の星のデータを集めてAIに解析させることで、最初の星の様子を探ろうとしました。


 AI学習による最初の星の探査は、東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構の客員研究員のハートウィグ(Tilman Hartwig)さんたちの共同研究で、Astrophysical Journalという雑誌に、
論文タイトル:Machine learning detects multiplicity of the first stars in stellar archaeology data
(機械学習が恒星考古学データから最初の星の重複性を検出)
というタイトルで報告されました。
 「最初の星」とタイトルにありますが、直接観測できないので、初期の星から探ろうとするものです。重い元素は、最初の星の中と超新星爆発で合成されていきます。ですから、古い星を探して、その成分に重い元素が少ないほど、初期の星となっていきます。
 重い元素を多く含む星を種族I(population I)と呼んでいます。少ないものが種族II(population II)となります。最初の星は金属をまったく含まないので種族III(population III)と呼ばれています。前回紹介したように、種族IIIの星は見つかっていません。種族IIIに限りなく近い種族にIIの星が研究対象になります。
 そのような星は、「超金属欠乏星」と呼ばれています。これも前回のエッセイの【註】に示したように、リチウムより重い元素は、天文学では「金属」と呼ばれます。そのため重い元素(金属)が極端に(超)少ない(欠乏)星となります。
 重い元素の少ない星の特徴が調べられました。初期の星が、最初の星に由来する元素をもとにできていたら、最初の星の個性をもっているはずです。なぜなら、最初の星のサイズや超新星爆発の特徴により、元素組成にも特徴が現れるからです。元素組成の個性に乱れがあれば、複数、あるいは多数の最初の星の影響を受けていたことになります。
 元素組成のパターンを機械学習したAIを使って、調べていったというのが、この論文となります。その結果は、次回としましょう。

・閏年で29日・
今年は閏年で29日もあった
2月も最後となります。
2月は短く感じました。
それは、授業はなくなっていたのですが、
研究での作業が詰まっていたため、
バタバタとしていたためでしょう。
そのバタバタはまだ終わっていないのですが
充実はしています。

・集中講義・
3月上旬には、集中講義があります。
そのため、1週間、そこに忙殺されます。
学生もその間だけでなく、
準備にも時間を使います。
その相談のために研究室にもきます。
それも教育、指導になります。
熱心な学生ほど集中して準備に取り組んでいます。
ですから、手を抜くことも、
時間を惜しむことはできません。

2024年2月22日木曜日

6_206 AIによる初代星の探査 1:初代星

 いろいろな分野でAIの導入が進められています。天文学でも導入されていますが、2023年にでた論文では「最初の星」をAIで探したました。その論文を紹介していきましょう。


 「最初の星」をAIで探すという研究が報告されました。まず、「最初の星」とはどんなものがを考えておきましょう。それがわかっていないと、見つけることができません。
 「最初の星」は、「初代星」(first star)とも呼ばれていますが、宇宙ができた直後の星になります。「最初の星」は、宇宙の創成のときに存在した材料だけから作られていきます。ここでいう宇宙の創成とは、「ビックバン」のことです。
 ビックバンで形成された元素は、理論と観測でわかっています。ビッグバンで合成された元素は、水素(H)とヘリウム(He)がほとんどで、あとは少量のリチウム(Li)だけです。つまり、「最初の星」は水素とヘリウムからでできたことになります。
 天文に詳しい人であれば、太陽系の恒星(太陽)も、水素とヘリウムからできていることをご存知だと思います。しかし、太陽の構成元素を詳しくみていくと、水素とヘリウムが多いのですが、リチウムより重い元素がいろいろと見つかっています。重くなるほど量は少ないですが、明らかに太陽には存在してます。この重い元素は、ビックバンのときには存在しなかった元素です。ですから、私たちの太陽は「最初の星」ではありません。
 では、重い元素は、どうしてできるのでしょうか。恒星の中で、水素とヘリウムなどが連鎖的に核融合を起こして、鉄(Fe)までの元素ができていきます。恒星内では鉄までしかできませんが、星が一生を終えるときに起こる超新星爆発で、鉄より重い元素が形成されます。ですから、重い元素は、少なくとひとつの恒星ができて、終焉を迎えていないと形成されません。
 「最初の星」は、重い元素を含まない水素とヘリウムからだけの星だといえます。そのような星を探せばいいのです。しかし、「最初の星」は、現在のところ、どのような観測装置を使っても、まだ見つけることはできていません。小さなものは遠くにある(古い)ので暗くて見えないでしょうし、大きくて明るい星はすでに寿命が尽きているでしょう。
 最初の星がだめなら、第2世代の星を見つけることで、そこから最初の星の特徴を探ろうとしています。その手段にAIを導入したという研究が報告されました。その詳細は、次回以降としましょう。

【註】リチウムより重い元素は、天文学では「金属」と呼ばれるのですが、ここでは重い元素と呼ぶことにします。

・外国人観光客・
今年は2月11日まで、
札幌の雪まつりがありました。
中国の日本への旅行も解禁されていて
春節(2/10から2/17)もあったので
海外からの観光客が多くなりました。
寒い中を長時間歩いて見て回ったら
風邪を引いたことがあり懲りました。
今では、雪まつりはテレビで見るだけです。

・祝日の連休・
2月の祝日は、2回あります。
建国記念日と天皇誕生日です。
11日と23日で日程が近くなっています。
それに今年は、曜日の関係で
両方とも連休となります。
実は札幌で訪れたいところがあります。
出かける日程を連休をずらして、
平日にしました。
このエッセイの発行は
木曜日にしているので、
今日、出かけている予定です。

2024年2月15日木曜日

1_211 テクタイト 5:継続する研究

 インドチャイナイトは、非常に広範に分布しています。近年、研究が進み、形成時代や温度などの実体が、徐々に明らかになってきました。このテクタイトを形成した衝突は、生物にどのような影響を与えたのか気になります。


 インドチャイナイトでは、これまでのエッセイで、ラオス南部のボーラウェン高原に落下した隕石によるものだという報告を紹介しました。巨大なクレータができたのですが、その後、火山活動による溶岩で、クレータが埋められたということを、人工衛星からの重力や磁力のデータから示され、やっと位置が特定されました。
 他にも、インドチャイナイトに関する研究がいくつか進められています。2019年にMeteoritics & Planetary Science誌に発表されたジョーダン(Jourdan)らの共同研究による
Ultraprecise age and formation temperature of the Australasian tektites constrained by 40Ar/39Ar analyses
(40Ar/39Ar分析によるオースタラリアンテクタイトの超高精度の年代と形成温度への束縛条件)
という論文があります。
 この論文では、タイ、中国、ベトナム、オーストラリアからそれぞれ一つずつテクタイトを採取して、2つの研究所で3つの測定器を用いて、データが検証されました。加熱しながら測定するという手法でも、精度を上げるようにしました。その結果、40Ar/39Arによる年代は、78.81万年前(78.81 ± 0.28 万年前)となり、これまでより数倍の精度で年代を決めました。また、タイのテクタイトで温度推定がなされました。形成時の最低温度は、2350~3950°Cとわかってきました。
 公表時代は前後しますが、2022年の同誌に発表された論文で、千葉工業大学の多田賢弘らの共同研究による
Identification of the ejecta deposit formed by the Australasian Tektite Event at Huai Om, northeastern Thailand
(北東タイ、フアイオムでのオーストラリアンテクタイト事件による放出物堆積の特定)
という論文があります。
 この論文では、フアイオムの地質調査から、3つの放出物を含むラテライト(鉄やアルミニウムの水酸化物を多く含むサバンナや熱帯雨林に分布する土壌)層から、テクタイトを見つけています。下位には衝突時で再構成された層があり、その上に粗粒の砂とテクタイトの降下物の層ができ、もっとも上には細粒の降下物の堆積層があることを示しました。そして、それらの層には、衝突石英もあることを明らかにしました。
 他にも、テクタイトの分布範囲から、クレータのサイズを33~120kmと推定したり、イリジウム濃度から重量15億tの隕石だったという推定などもされきました。多くの研究者のさまざまな視点での研究によって、インドチャイナイトの実体が少しずつ明らかになってきました。
 隕石のサイズとしては、大絶滅を起こすほどではなかったようですが、このテクタイトの分布域の広さを見ると、その衝突の衝撃は非常に大きなものだったと想像できます。約80万年前は、原人がこの地域にもいたはずです。彼らは絶滅したのでしょうか。アフリカにしか生き残れなかったのでしょうか。ヒトの進化との関係が気になりますが、このシリーズはここまでにしましょう。

・湧き出るアイディア・
現在書いている論文に手こずっています。
来年、出版しようと考えている本の
重要な視座を決める内容なので、
重要な論文になります。
別の論文を書いている時に
新しいアイディアが浮かびました。
そのアイディアが連鎖しながら発展して
この論文の骨子へと繋がりました。
さっさと書けると思っていたのですが、
データを大量に扱い、文献を収集して内容を確認し
なければなりませんでした。
すごく手間がかかっていますが、
近いうちに粗稿ができそうです。
粗稿ができた段階で、この論文は一旦休止します。
本命の著書に執筆を急がなければなりませんので。

・分割した論文・
論文に関しての話題が続きまます。
前回投稿予定の論文は、重要な内容で
長いものになりました。
編集担当の人に相談したら、長編の論文は掲載できない。
しかし、同一著者の別の論文の掲載は可能だ。
ということなので、
いくつかに分けることにしました。
すると3編の内容に分割でき、
そのうち2編を雑誌に投稿しました。
そして残りの1編を、
別の雑誌に投稿するつもりで完成させました。
その時、上記の新たな論文のアイディアが
次々と湧いてきたのです。

2024年2月8日木曜日

1_210 テクタイト 4:地下のクレータ地形

 インドチャイナイトは広域に分布しているのに、クレータが見つかっていません。クレータ地形が地表に残されていないためです。砂漠の地下から見つかったクレータの証拠を紹介していきましょう。


 広域に分布しているテクタイト(オーストラライト、インドチャイナイト、チャイナイトなどの名称がありますが、ここではインドチャイナイトと呼びます)のクレータは見つかっていません。しかし、前回紹介したように、衝突クレータの位置が限定できたという論文が報告されました。
 この論文では、人工衛星による重力および地磁気の探査データから、中国北西部のバダイン・ジャラン砂漠に落ちたと考えました。探査データでは、地下にクレータ構造があることがわかってきました。クレータは、テクタイトの飛び散っているもっとも北の外側にあり、位置的にも合うところでした。しかし、そこは砂漠地帯なので、地形的な痕跡は残されておらず、これまで発見されなったのでしょう。
 衛星から探査されるのは、重力や磁気の平均的な値との差です。重力であれば、地下の物質の密度差があるところ、磁気であれば、通常と異なった磁気的性質の岩石の地域が検出できます。その異常の分布が、クレータの形状になっているかを探ります。表層に現れていない地下の様子を、衛星を用いて広域に探る手段にできます。
 重力では、負と正の異常の分布の状況で、位置が特定されました。ここでは、負の重力異常のところを正の異常が環状に取り囲んでいました。負の重力異常が直径50kmほどあり、その周りを正の重力異常が100kmほどで縁を囲んでいました。地形では見えない地下に、存在していたクレータを見つけたことになります。
 このような重力異常が形成された仕組みは、衝突した地点で、クレーターの中央が持ち上がり山地になります。破壊された岩石なので低密度なので、負の重量異常になったと考えられました。一方、破壊されていない元々の岩石があるところは、正の重力異常の部分となります。
 地磁気のデータでも、磁気異常が乱れているのですが、その分布がクレータの縁に沿っていることがわかり、クレータの存在を支持していました。
 今回は、地下に隠れているクレータらしきものを、探し当てたという報告でした。しかし、地形にでていませんし、シャッターコーンの存在やその分布など、直接の証拠は見つかっていません。衝突クレータだろ確定するためには、掘削などして、なんとか直接の証拠を見つけなければなりません。ただし、200mほど掘らないとわかりそうにありませんが。
 インドチャイナイトというテクタイトについては、衝突クレータがみつかっていないことから、いろいろな研究がなされてきました。次回以降は、このテクタイトについて研究を、いくつか紹介していきましょう。

・静かなキャンパス・
大学は定期試験と追試が
そして一般入試も終わりました。
外見上は一段落しているように見えます。
4年生の卒業がかかっていますので
教員には採点評価が早急に求められています。
学内の競争的資金の申請の締め切りもあります。
来年度のシラバスの作成、入力も必要になります。
入試判定、卒業、進級、資格認定の審査
などの会議も続いていきます。
大学からは、学生の姿が少なくなります。
そのため、キャンパスからは慌ただしさが消えて、
落ち着いた日々が流れていきます。

・研究に励む・
現在、論文1編と本2冊の執筆を
並行して取り組んでいます。
静かなキャンパスであることが助かります。
いろいろと校務は続くのですが、
時間的にはもっとも余裕ができる時期になります。
今年が、ライフワークをまとめる
最後のチャンスとなっています。
日々、自身が課したノルマをこなすため
あくせくと研究に励んでいます。

2024年2月1日木曜日

1_209 テクタイト 3:不明のクレータ

 テクタイトとクレータの対応できないものもあります。その中でも、もっとも広く分布しているテクタイトのクレータが見つかっていません。そのクレータ探しが進められています。


 テクタイトが見つかっていても、クレータが見つからないことがあるのを、前回、紹介しました。テクタイトの分布から、落ちた場所は、推定することができるはずです。なのに、なぜ見つからないのかが不明です。
 もし古い衝突であれば、侵食や地質変動などで消えていくこともあるかもしれません。しかし、新しい衝突であれば、その付近を探索すれば、クレータの証拠が見つかるはずです。それでも見つからないクレータがありました。
 インド洋からオーストラリア、インドネシア、東南アジア、南極大陸まで、最も広く分布しているテクタイトがあります。広域に分布しているので、各地で別の名称が付けられていました。オーストラリアではオーストラライト(Australite)、西南アジアではインドチャイナイト(Indochinite)、中国ではチャイナイト(Chinite)などと呼ばれています。しかし、そのクレータは見つかっていませんでした。
 テクタイトから、衝突の年代は79万年前だとわかっています。新しい時代の衝突なのに、クレータが見つかっていませんでした。テクタイトの分布から、アジア大陸の東部だと考えられています。このように広域にテクタイトを飛ばす衝突であれば、直径20kmのクレータができていたと推定されます。
 かなり大きなクレータができたずです。候補として、カンボジアからラオスのボーラウェン高原に分布する玄武岩台地が、その衝突の結果できたのではないかと考えられました。衝突で地殻下でマグマが発生して、溶岩層になったので、クレータが消えているのではないかとも考えられました。
 2023年、サエンスレポート誌にカリミ(Karimi)らの共同研究で、
Formation of Australasian tektites from gravity and magnetic indicators(重力および地磁気の指標によるオーストラライトの形成)
という論文が報告されました。この論文では、人工衛星からの重力と地磁気のデータを用いて、中国北西部のバダイン・ジャラン砂漠に落ちたという提案がされています。
 その詳細は次回としましょう。

・寒波・
先週の大寒波での大雪は大変でした。
交通は運休部分があり、
各地で間引き運転となっていました。
ちょうど定期試験がはじまる日にあたっており
担当の科目の試験があました。
交通障害で多くの学生が来れず、
大人数が追試を受けるのではないかと
心配になりました。
大人数になるのなら
追試も2クラスになるかもしれず、
もしそうなれば、試験問題も作り変えるつもりでした。
ところが、ほとんどの学生が出席しており
追試の受験者も少な目になりそうです。

・2月になりました・
2月になりました。
1月には大学では、いろいろな行事がありました。
後期の講義も定期試験も終わりました。
そして2月には大学入試がはじまります。
教員は監督、採点、合否判定などが続きます。
1月の正月明けから2月までは
慌ただしい日々が続きます。