2018年4月26日木曜日

2_158 恐竜の卵 2:鳥とワニから

 過去の生物の生態を探るのに、現生の生物の生態の類似性を利用できます。過去の生物にも、そのような生態があったという根拠が必要です。その根拠は化石に頼るしかありません。

 恐竜の卵の温め方に対する報告がありました。名古屋大学の田中康平さんと北海道大学などの研究者と共同でおこなわれ、Science Reportに2018年3月に報告されました。そのタイトルは、

Nest substrate reflects incubation style in extant archosaurs with implications for dinosaur nesting habits

というものです。著者らが示してている日本語訳は、

巣の素材は現生主竜類の営巣様式を反映し、恐竜類の営巣方法に関する見識を与える

とういものです。難しい日本語訳ですが、簡単にいうと、現在生き残っている恐竜の子孫を参考して、恐竜の卵の温め方を推定していこう、ということです。
 鳥類は、恐竜の子孫であることがわかってきたことを、前回紹介しました。生物は、環境によりその生態も形態も変化し、それが進化へと繋がります。しかし、どこかに祖先の特徴や生態を残していることもあるはずです。そんな現在の生物の生態から、過去の祖先への繋がりを見出していきます。さらに、前回紹介した卵の化石の産状を詳しく調べて、恐竜の卵の育て方の様子の痕跡を探っていきます。それらを突き合わせて、もっともらしい卵の温め方を推定していこうというものです。
 まず、現生生物で恐竜の直系の祖先である鳥類から見ていきましょう。鳥類は恒温性の生物なので、卵を自身の体温で温め、孵しています。たとえ南極のような極寒のところでも、親鳥が温めて孵すことができます。
 恐竜の直系の子孫でありませんが、ワニの仲間も「主竜類」という恐竜と同じグループに属します。ですからワニの生態も参考になるはずです。鳥類と違ってワニは変温動物です。親が抱いて卵を暖めることはしません。ワニは水辺の生き物です。以前、フロリダに行った時、みることができたワニの巣は、水辺の近くですが、小高くなった陸地で水に浸からないところに草を盛り上げて、卵を産み付けていました。ガイドの説明では、太陽熱や有機物の発酵熱を利用していとのことです。他にも、地熱を利用する方法もあるようです。
 ところが鳥類の中には、時に子育てで横着をするものもいるそうです。ツカツクリという鳥は、盛り土をして、その中に卵を生みます。親鳥は卵を温めません。しかし、土に含まれている植物が発酵することで盛り土全体が熱を発します。ワニと同じ方法です。他にも、土に穴を掘った砂の中に卵を埋めるものもいるそうです。これは、卵を温める方法として、太陽熱や地熱を利用するものもいると考えられています。
 現生の鳥類やワニ類で卵の温め方を調べ、その結果発酵熱を使う巣では平均で7.3度も気温より高く、地中の砂に埋め太陽熱を利用する巣では平均で3.9度でした。
 つまり、恒温性のない生物でも、気温より卵をの温度を高くして孵す方法があるということです。では、恐竜は本当に、これらの温める方法を利用していたのでしょうか。化石からその根拠を見出すう必要があります。それは次回としましょう。

・主竜類・
本文中で、主竜類という分類をしめした。
主竜類とは、現生の生物では、ワニ、鳥類が
化石生物では恐竜や翼竜が含まれるものです。
爬虫類はもっと上の分類群になります。
ですから、鳥類と恐竜は同じ主竜類で近いのですが、
そのカメと鳥類やワニより
ワニと鳥類の関係の方が近いのです。
ですから、恐竜とワニ、鳥類との関係を調べることは
充分近縁なので、意味のあることなのです。

・週末からゴールデンウィーク・
今週末から、いよいよゴールデンウィークです。
私は、ゴールデンウィークの前半に道内の調査にでます。
観光地からは、はずれたところにいくのですが、
道中の道路の混雑が心配です。
調査地に入れば、混雑はないとは思うのですが。
あとは天気ですが、こればかりは心配してもしかたがありません。
その様子はエッセイで紹介きればと思っています。

2018年4月19日木曜日

2_157 恐竜の卵 1:鳥と恐竜

 恐竜の卵の化石は、恐竜展などに付随して展示されることがありますが、主役になることはあまりないようです。卵化石自体は、あまりインパクトがないので主役級にはなりませんが、研究では主役になることは度々ありました。

 鳥類は、あるタイプの恐竜の子孫であることは、だいぶ知られるようになってきました。鳥の生態から、恐竜の生態を窺い知ることは、ある程度はできることは容易に想像できます。しかしながら、鳥からは、恐竜の凄さがなかなか実感できそうにありません。
 一番身近な鳥は、フライド・チキンで見るニワトリでしょうか。フライド・チキンの骨は、人の歯にとっては固いものですが、豚や牛と比べると、非常に華奢です。これは、鳥が飛ぶために特化したためです。私たちが食べているニワトリは、飼育下で飛ぶことを諦めましたが、骨は華奢なままです。鳥類は恐竜の子孫ではありますが、骨の頑丈さもサイズも全く違っています。鳥からは、恐竜の巨大さを実感することができません。
 恐竜の化石から一番に感じることができことは、その巨大さや多様さでしょう。ところが、化石からは、恐竜の生態を知ることができません。
 鳥と恐竜化石のどちらにも、長短があるので、お互いで補いながら昔の恐竜を想像するしかありません。あるいは、現世の爬虫類の生態からも補っていけるでしょう。
 さて、本題の恐竜の卵についてです。卵化石は、1923年に発見されました。アメリカ自然史博物館の研究者たちが、モンゴルで初期の人類化石の調査をしている時、偶然発見したものが、最初の科学的記録とされています。それ以降、多数の卵化石が見つかっています。
 中国の雲南省では、約1億9700万~1億9000万年前(ジュラ紀前期)から卵の化石が見つかっており、最古とされています。その化石には孵化前の化石も含まれていというオマケもついていました。
 昨年末(12月1日号)のアメリカの科学雑誌サイエンス誌に、中国北西部で、翼竜の卵の化石が大量に見つかった、という報告もありました。その数は、少なくとも215個で、多分300個ほどの卵化石があるようです。その中には、非常に保存よい化石もあり、卵の中の胚があるものも16個、発見しています。まだ、岩石の中に掘り出せは見つかるのではないかと考えられています。この地層のあったところは、翼竜たちの営巣地だったことになるはずです。
 卵の化石は、形が「卵型」なので、サイズの違いだけで、親がどの種であったかを知ることは難しいものです。ところが、卵と一緒に化石になっている親恐竜の化石も見つかっていることから、ある程度は親と卵の様子を窺い知ることが可能となってきました。

・日本の恐竜・
恐竜の化石は、子どもにとっては
もっとも興味を引く存在ではないしょうか。
生きている動物にも興味がわくでしょうが、
恐竜の巨大さは、迫力満点です。
アメリカやカナダ、モンゴル、中国と比べると
まだまだ、見劣りがするのですが、
日本でもだいぶ恐竜化石が見つかるようになってきました。
そのためでしょうか、日本の恐竜研究者も最近は増えてきました。
化石が多産する地域や、恐竜研究の進んだところで
研究する人たちもだいぶ増えてきました。
そのようなところで経験を積んだ研究者が
日本での発掘を指導することも行われてきました。
恐竜は、子どもだけなく、大人にも魅力ある存在です。
恐竜の研究者が活躍する場が、
日本にも増えてきたのはいいことですね。

・北国の春・
北海道の春もかなり進んできました。
時々寒い日もありますが、
例年より春は早足できているようです。
そして、春になると、出かけたくなります。
多分、北国特有の気持ちかもしれません。
雪が溶けて、暖かくなってくると、
ついつい気持ちがウキウキします。
でも、桜には、まだ早いようですが。

2018年4月12日木曜日

6_153 ホーキング博士追悼

 ホーキング博士が、先月、お亡くなりになりました。ホーキング博士は、宇宙物理で大きな成果をいくつも挙げられており、世界中に知られている有名な科学者です。その訃報に接して思うことを紹介します。

 3月14日、イギリスの物理学者、スティーヴン・ウィリアム・ホーキング(Stephen William Hawking)博士の訃報が、世界中に流れました。ニュースでの報道、科学番組では特番もありました。でも、政治家や芸能人など比べて、その扱いが小さく思ったのは、私だけでしょうか。
 さて、私は地質学を専門としているので、物理学は外野から眺めるだけでした。一般向けの解説書を読んだり、ニュースを見聞きしたり、興味ある成果をエッセイで取り上げたりして、接している程度でした。ホーキング博士の偉大さは、専門ではないので詳細にはわかりません。その前提でお読み下さい。
 以前、彼の本「ホーキング、宇宙を語る」(1989)を読みました。日本だけでなく、世界的にも大ベストセラーになったので、読んだ方もいるかと思います。私はこの本で2つ点で感銘を受けました。
 ひとつ目は、一線級の研究者が、一般向けの本を書いたことです。執筆時点の46歳で、すでに「特異点と時空の幾何学」(1967)、「ブラックホールの蒸発理論」(1974)、「無境界仮説」(1983)など、重要な成果をいくつも発表されていました。超一流の理論物理学者でした。このような成果の評価は、多くの受賞歴が物語っています。なぜかノーベル賞の受賞のないのが残念です。有名な研究者にはノーベル賞を逃している人も何人かいますが、ホーキング博士もその一人でした。
 その一線級の研究者が、科学普及書を書いたのです。最近では多くの研究者が一般向けの本を書くようになってきました。その御蔭で、違う分野の一流の研究者から、現場の最新情報や生の研究生活の話などが聞けるようになりました。かつては、ほんの少しの研究者が、このような科学普及をしていたにすぎませんでした。学界では、一般向けの解説者になることは、一流ではないことのように考えられていました。今でもそのような傾向が残っているかもしれませんが。博士は、そんな貴重な先駆者の一人でした。
 もうひとつの大きな感銘を受けた点は、彼が病気を押して執筆したことです。病気は、あまりに有名な話しです。ホーキング博士は、オックスフォード大学卒業後、ケンブリッジ大学大学院に入学しました。入学から1年後の1963年に「筋萎縮性側索硬化症」(ALS)と診断されました。そして、余命2年と診断されています。当時、ALSは発症から数年で死に至るとされていました。治療の効果でしょうか、進行が非常の遅くなり、長年研究活動に従事されてきました。そんなALSの闘病中での執筆でした。執筆は不自由な状態で苦労されたと思います。
 そしてなんと76歳まで生きてこられました。ある時期から、意思伝達のためにコンピュータによる合成音声を利用されてきましたが、それもホーキング博士のアイデンティティになっていたように思います。
 ホーキング博士のご冥福をお祈りします。

・映画のホーキング・
2004年のBBC制作のテレビ映画「ホーキング」もありました。
私は、CSで見ました。
30歳位までの半生の物語です。
ベネディクト・カンバーバッチが
主演したことも有名になりました。
後の人生は、「博士と彼女のセオリー」で
描かれているようですが、私は見ていません。
いずれ見たいものです。

・アイス・バケツ・チャレンジ・
ALSで連想されるのは、
「アイス・バケツ・チャレンジ」です。
2014年にアメリカ合衆国で始まったALS支援運動でした。
有名人が、氷水を頭からかぶっている様子が
報道され、話題になりました。
これの活動はホーキング博士とは
直接関係がないかもしれませんが、
私には、関連付けられています。

2018年4月5日木曜日

4_147 登別の地獄谷

 3月の終わりに、校務の合間をぬって、久しぶり夫婦ふたりで温泉にいきました。車ですぐにいける登別温泉でした。初日に地獄谷を見学にいきました。何度か来ているのですが、ついつい地質に目がいってしまいます。

 先日、登別に久しぶり家内と温泉に浸かりにいきました。今年の北海道は雪解けも早く、3月下旬なのに高速道路は完全乾いていたので、走りやすくなっていました。昼にでて、途中で昼食をとったのですが、チェックインの3時より早くついてしまいました。暖かい日だったので、ホテルに荷物を預けて、温泉周辺を散策することにしました。
 登別は、地獄谷から大湯沼、倶多楽湖など、観光名所はいろいろあります。倶多楽湖と大湯沼の道は、閉鎖されていたでいくことはできませんでした。地獄谷へは入ることができるので、見学にいくことにしました。地獄谷の遊歩道には全く雪はなく、ハイヒールで歩いている外国人の女がいました。日陰や風は冷たいのですが、日なたは暖かいポカポカ陽気でした。ハイヒールの女性は、なんと半袖でいたので、家内ともども驚きました。
 春の陽気の地獄谷は雪がない分、地層の色合いがよく見えました。地獄谷を取り囲む山は、岩肌がでているため、地層の色がよく見えます。上部には腐食土でしょうか濃い茶色で、そしてだんだん茶色が薄くなってくる火山灰、一部黒っぽい溶岩を挟んで、淡い茶色からそして灰色の濃淡の火山灰へと変化していきます。単調な色合いが、地獄を想像させたのが地獄谷の由来でしょうか。地質学者には、結構いろいろな色が見え、それぞれの色の違いがどんな石や火山灰なのかが気になるところです。
 地獄谷には、温泉の湧いているところ、噴気のあるところが、多数あります。温泉が川の流れをつくっています。灰色の沈殿物のある流れと、硫化物でしょうか黄色から淡い黄色へと変化する沈殿物の流れなどもあります。温泉水にも、いろいろな成分の違いあることがわかります。これも地獄を思い浮かべる景観なのでしょうか。地質学者としては、こんな狭い地域に、温泉水で溶融物の違いあるということは、地下でどんな経路を経てきたのかが気になりました。
 木道の遊歩道を歩いていくと、行き止まりに間欠泉がありました。直径1mほどの池ですが、周囲にはいろいろな沈殿物の結晶ができてました。色も白、暗灰色、茶色などかなりカラフルです。その沈殿物の結晶もさまざまあり、なかなか面白いものでした。同じ鉱物の結晶だろか、それとも何種類かの結晶が混在しているのだろうか、気になりました。
 しばらく間欠泉が噴き出すを待っていたのですが、なかなか吹き出しません。諦めて帰ることにしました。ホテルと地獄谷の間に、泉源公園があります。この公園には、道路に下に間欠泉があります。行く時に見学したのですが、3時間ごとに50分ほど、8mほどの噴出するとのことで待つのは顕ました。行くときは静かだったのですが、帰途に運良く間欠泉が噴出していました。噴出しているのは、一面に水蒸気が漂っていることと轟音でわかりました。近づいていくと、硫化物の匂いがしていました。激しい温泉の噴出が、温泉街の中に起こっていました。
 夫婦で登別の観光を楽しみました。その登別の観光資源は、すべて火山に由来しています。火山の活動で温泉の経路が変われば、湧出量や成分も変わることもあるでしょう。登別の観光資源を支えているのは、活火山であることを忘れてはいけません。そして噴火に対する心構えや備えは必要です。
 家内との観光旅行のつもりでしたが、私は、ついつい地質や活火山を見ていました。

・温泉へ・
長男がこの春に独り立ちをして家を出ました。
また、3月下旬に次男がクラブの合宿で
1週間ほど出かけていました。
おかげで久しぶりに自宅で夫婦ふたりになりました。
子供が成長するまで、なかなか二人で
出かけることができませんでした。
、久しぶりに時間できたので、
夫婦で温泉でもいこうかということになりました。
家内が登別なら行きたいということなので、いくことにしました。
私は、時代村がいいかと思ったのですが、
家内は水族館に行きたいというので、
一泊して翌日にのんびりと水族館を見学しました。

・新入生・
大学はいよいよ新学期が始まりました。
今年は1年生の担任をすることになり
ゼミを持つことになりました。
久しぶりなので、戸惑いとワクワク感があります。
新入生は、最初はどれもこれも
はじめてのことばかりになります。
期待の反面、緊張と戸惑い、不安もあるでしょう。
来週からは授業もはじまります。
いろいろな先生のいろいろな授業、
大学特有のやり方など、
まだまだ緊張感や戸惑いがつづくことでしょう。
でも、教員として、新入生の期待を裏切らないように
精一杯勤めるしかありませんね。

2018年3月29日木曜日

5_155 深海から陸の環境を 4:周期性

 層状チャートには、堆積の周期性も記録されていました。周期性は天体の運動に由来することが多いはずです。ところが、どうもそれだけではない周期性もあるようです。もう少し複雑な要因が考えられました。

 前回は、池田さんたちの報告の重要な点のひとつ目を紹介しました。チャートになっているシリカの堆積量が、全海洋の9割を占めること、そのシリカは大陸に由来すること、を紹介しました。報告には、もうひとつ重要な点がありました。それは、
・シリカの堆積速度に周期性があること
でした。
 シリカの堆積速度の周期性として、10万年から3000万年のものがみつかっており、そこには、約2割から5割ほどの変動があるそうです。
 地球の地層などに見つかる周期の多くは、ミランコビッチ・サイクルと呼ばれる天体運動に由来するものだと考えられています。ミランコビッチ・サイクルは、地球の天体運動ですから、地球の過去の地層などから周期性が読み取れれば、どうのような天体周期に影響を受けたかを推定することができます。
 天体の周期には、公転の離心率の変化(約10万年、40.5万年、数100万〜数1000万年周期)、自転軸の傾きの変化(約4万年周期)、自転軸の歳差運動(約2万年周期)という3つの要因があり、それらが組み合わさって変動が周期性をもちます。特に公転の離心率の変化は、地球と太陽の距離に変化が生じ、日射量にも周期性がでてきます。例えば、離心率変動と自転軸の歳差運動が組み合わさると、夏の日射量が数%〜10数%変動するとされています。
 今回見つかった10万年から3000万年の周期性による変動は、予想される日射量の変化より、もっと大きなものになっていることがわかってきました。これは、層状チャートの周期性が、ミランコビッチ・サイクル以外にも別の要因が加わっていることになります。
 その要因として、池田さんたちは、「超大陸パンゲアのメガ・モンスーンに伴う大規模な降水量変動が、大陸風化速度を非線形的に増幅した」という仮説を提唱されました。
 層状チャートが海で堆積している時代は、陸はひとつの巨大な大陸(超大陸パンゲア)がありました。大陸(岩石)と海(水)では夏と冬の変わり目に、比熱の違い、あるいは温まり方の違いにより、全地球的な季節風、モンスーンが吹きます。夏に海を渡るモンスーンは、陸域に激しい降雨をもたらし、その巨大なものをメガ・モンスーンと呼んでいます。ひとつの巨大な大陸とひとつの海洋という配置では、陸地の熱容量が大きくなり、メガ・モンスーンになる可能性があるようです。激しい降雨は、大陸の風化や侵食の速度を速めます。このメガ・モンスーンが層状チャートの周期を増幅したのではないかというのが、池田さんたちの仮説です。
 これらを総合すると、次のような仮説がでてきます。中生代には超大陸と超海洋という配置があり、温暖な時期でもありました。層状チャートは、ミランコビッチ・サイクルにともなって起こったメガ・モンスーンが陸を激しく風化・侵食したことを記録している、という仮説です。この仮説には、何段階かの仮定があるので、今後、他のデータやより高精度のデータ、より精密なシミュレーションなどが望まれます。

・つかの間の休みを・
大学の学位授与式も終わり、
学科の教職課程の学生のための集中講義も終わり、
一段落の時期を迎えました。
ただし、これは教員としての立場です。
職員の方は、新入生のための準備が、佳境を迎えています。
役割分担でいたしかたがないことですが、
教員はこの間、少しだけ息抜きができます。
少し、休みだけをとろうと思っています。

・家族の形・
子ども成長、親の老化などにより
家族の形は、時間とともに変わってきます。
我が家は、子どもと母の両方で起こりつつあります。
子どもは1、2年の誤差があっても、計画がたち、
親も心構えができています。
しかし、親の老化は、いつくるかはわからず、
その時に対応するしかありません。
離れていると、関係各所に電話をして
対応するかしかありません。
電話は大きなツールです。
顔をみれない、現実の手助けができないなどの不便さがあります。
でも、時間的にも、かなり迅速に対応可能で、
家族用の携帯を母に渡しているので、経済的にも、助かっています。
母の状況は、よくなることはあまりないですが、
少しでも快適に過ごせるように
遠くからですが、手を差し伸べるしかありません。

2018年3月22日木曜日

5_154 深海から陸の環境を 3:シリカの循環

 層状チャートは、シリカが主成分となっています。そのシリカの地球での循環を考えると、海洋での層状チャートの堆積が果たす役割が理解できます。その役割を定量化するアイディアがあります。

 昨年、静岡大学の池田昌之さんと共同研究者たちが、イギリスの科学誌「Nature Communicationsに、
Astronomical pacing of the global silica cycle recorded in Mesozoic bedded cherts
(中生代層状チャートに記録された全地球的シリカ循環の天文学的周期)
という論文を報告されました。
 この論文では、層状チャートが大陸の風化速度の指標になるという可能性を指摘されています。本シリーズで示しててきた、層状チャートのでき方がその原理になっています。層の形成機構はまだはっきりしていないのですが、陸から遠く離れた遠洋で生物のシリカの殻が、深海底に堆積物してできたものがチャートです。
 池田さんたちは、岐阜から愛知にかけて分布している約2億5千万年前~1億8千万年前の層状チャートの堆積速度を調べました。その結果、2つのことが明らかになりました。
・チャートになっているシリカの堆積量が、全海洋の9割を占めること
・シリカの堆積速度に周期性があること
が、重要な発見となっています。
 ひとつ目の発見を見ていきましょう。海洋にあるシリカのうち、深海底でチャートになるのはどの程度なのか、そしてそのシリカがどこから由来しているかに関する発見が、ひとつ目の内容です。
 シリカの海底への堆積は、いろいろな堆積のメカニズムがあるはずです。砂粒が沈むようにシリカも海底に沈降、沈殿していくことがあります。もちろんプランクトンの殻として沈むこともあります。成分ごとに海水中の滞留時間や沈降速度など細かく検討していく必要があります。それを考える時、海洋だけでなく、大陸や大気、岩石の風化や侵食なども考慮して、全地球的に物質の循環を考えていく必要があります。このように成分ごとに、全地球的にどのような物質循環をしているかは、地球化学的数理モデル(改良版GEOCARBモデル)として計算していく手法があります。
 GEOCARBは、過去の大気二酸化炭素濃度を計算するためのモデルなのですが、炭素や硫黄、ストロンチウムの同位体組成などを利用しいて、池田さんたちは推定されました。過去2億5000万年間のシリカの挙動を計算して、層状チャートの堆積した時代の大陸風化速度を推定しました。すると、チャートになっているシリカは、9割が大陸由来であることがわかってきました。つまり、海洋のシリカは大陸の岩石が溶けて河川から海に流れ込んだものを供給源としており、大半が層状チャートになっていくようだということがわかってきたのです。ですから、チャートの堆積速度は、大陸の風化速度をみる指標となり得るのです。深海底のチャートの大陸が風化が結びついていたのです。
 2つ目の発見は、次回としましょう。

・学位記授与式・
先週末、大学では学位記授与式がありました。
大学全体で進めるセレモニーがあり、
その後は、学科ごとに学位を全員に授与します。
集合写真を撮影して、保護者を交えて歓談をしていきます。
小さな学科なので、学生の他にも
保護とも親交ができているので、
味わい深い学位授与式となります。
その後は場所をホテルに移して、卒業祝賀会、
さらに学科の卒業を祝う会と続きます。
4年生との別れを、一日かけて惜しむ
いい一時となりました。

・別れの儀式・
私は、学位授与式が終わると、
撮影した写真を整理しながら、
ゼミや関係の深かった学生に、
餞(はなむけ)の文章を作成します。
学位授与式やゼミの集合写真、
祝う会など写真も交えて作成していきます。
これが教員として、私から最後のメッセージとなります。
学生の顔を思い浮かべながら、書きます。
学位授与式から餞の文章の送信までの一連の作業が
私の4年生との別れの儀式になっているようです。

2018年3月15日木曜日

5_153 深海から陸の環境を 2:層の成因

 深海底でできたチャートは、陸地でもみられます。ただし、陸地では層状チャートになっています。そのでき方には、いろいろな説があるのですが、まだ決着をみていません。なかなか難しい問題です。

 前回、深海底で形成されたチャートが日本列島に見られる、という話をしました。陸地でみられるチャートは、層構造を持っています。そのため層状チャートと呼ばれています。層は珪質のチャートの間に薄い粘土をはさむことで形成されています。この構造が繰り返されることで、層状チャートができます。前回お話したように、チャートは深海底に堆積したプランクトンの珪質の殻が起源です。粘土は大陸から風や海流に運ばれてきた非常に小さい粒が集まったと考えられています。なぜ層ができるのか、なかなか難しい問題です。
 主流とされる説は、生物大絶滅説です。生物の大絶滅があると、プランクトンもいなくなり、その間チャートの堆積がストップします。絶滅の期間は、粘土だけが堆積します。やがて生物が復活していくると、またチャートが堆積します。大絶滅が繰り返し起こることで層構造ができるという説です。
 他の説としては、生物がある時期だけ一気に大繁殖していくという説、他のところに溜まったチャートか粘土か、深海底を移動してたり、混合物が移動して堆積時に分かれて堆積するなどの説が有力です。他の説もありますが、今のところ、根拠が弱かったり、可能性が低かったりします。
 有力な説は、それぞれで根拠を示され、それに対応する露頭がわかっているところもあります。ですからそれぞれが対等の可能性なので、また成因が決着がついていない状態です。いずれにしても、層の形成には、なにか大きな事件が起こっていることだけは確かなようです。
 さて、チャートのもととなるシリカとは二酸化ケイ素からできています。二酸化ケイ素は、岩石の主要な構成成分です。大陸の花崗岩類には7割以上、海洋の玄武岩でも5割ほど含まれています。チャートの素材の二酸化ケイ素は、チャートの下の地殻にも一杯あります。しかし、地殻は岩石からできているので、二酸化ケイ素として海水に溶け込む必要があります。そして、プランクトンは海水に溶けて海の表面付近にある二酸化ケイ素を、殻の材料として取り込みます。たくさん使ったとしても、なくなることはありません。ですから、海に常に、二酸化ケイ素が常に供給されている必要があります。
 シリカの地表の循環を調べると、その多くは大陸の風化により河川から海に運ばれたものだという研究が報告されました。つまり、深海底に堆積したチャートが、巡り巡って、大陸の風化に関係があるということです。その詳細は次回としましょう。

・露頭に惚れる・
現在、私は層状チャートを調べています。
露頭で層構造がきれいに見えるところが最適です。
それぞれの露頭が、どのような成因でできたのかを
認定していくのは不可能です。
でも、野外で見事な層状チャートを見ると
圧倒され、大いに感動します。
そして気に入った露頭には何度も通いたくなります。
ただし、一般の人にはその露頭が
どうみえるかわかりませんが。

・学位授与式・
明日、学位授与式です。
大学では大きなホールでセレモニーがおこなわれ、
その後学科ごとに行事が行われます。
私の所属している学科では、
卒業生に全員に学位記を手渡しします。
今回で私からは最後になります。
保護者のかたも多数出席されますので、
厳かな雰囲気の中、
全員への思いを噛みしめることができます。
その後は大学の祝賀会、そして学科の祝う会という
お楽しみになります。