2017年4月20日木曜日

3_155 核の水晶 2:新しい内核

 今回紹介する核に関する報告は、2つあります。ひとつは今までの常識をくつがえしパラドクスを提示するもの、もうひとつがそのパラドクスを解く仮説です。1年ほどの間に重要な報告が2つもなされました。

 前回は、地球の核の概要を紹介しましました。地球の地下は地震波で調べられて、核は金属状態の鉄からできていていること、外側に液体、内部に固体の状態であること、さらに詳しく見ると、純粋な鉄ではなく地震波から推定される密度とは合わず、何か軽い成分が混じっていることでした。また、液体の外核が対流することで電気が流れ、磁気が発生することで地球の磁場ができていると考えられています。軽い成分が不明であるのと、対流の原因がよくわかっていませんでした。
 対流の原因に対しては、従来から「組成対流」が主流の考えでした。組成対流とは、鉄が固化(結晶化すること)が進むことで、残った液体の部分に軽い成分が増えることで、密度が小さくなり浮いていく(上昇流となる)ことで対流するという仮説です。内核は地質学の古地磁気の研究から、約42億年前から存在していたと考えられてきました。そして、約13億年前には磁場が強くなったことも知られています。
 ところがこの仮説には、都合の悪い報告が出されました。東京工業大の太田健二さんたちは、2016年6月のナイチャー誌に、
Experimental determination of the electrical resistivity of iron at Earth's core conditions
(地球の核の条件での鉄の電気伝導度の実験による決定)
というタイトルの論文を報告しました。高温高圧実験で核の電気伝導度を測定したところ、予想より3倍ほど高いことがわかったというものです。この報告が何を意味するかというと、核の形成年代として予想外の年代が出るということです。電気伝導度の値から内核の冷却速度を見積もると、内核の誕生は今から約7億年前という非常に若い可能性があることになりました。
 この報告の結果は、地球の磁場の形成で、地質学が出していた従来の結果に相反するものとなります。これは、「新しいコアのパラドックスouter」と呼ばれました。金属鉄の結晶化では、古い時代の地磁気は形成されないことになりますので、それに変わるメカニズムが必要になります。このパラドクスをどのように解決していくのかが、焦点となります。
 「新しいコアのパラドックスouter」を、新たな「組成対流」で解決しようという報告がありました。東京工業大学の廣瀬敬さんたちは、2017年3月のネイチャー誌に、
Crystallization of silicon dioxide and compositional evolution of the Earth's core
(地球の核の二酸化ケイ素の結晶化と組成進化)
という報告を出されました。
 核に含まれている軽い成分の候補として、従来からケイ素と酸素があったのですが、この報告ではそれが重要な役割を果たしたと考え、実験をしました。その結果、二酸化ケイ素がパラドクスを解く鍵になる、という考えが提示されました。その内容は次回にしましょう。

・内部の暗さ・
地球の核は、謎に満ちた存在です。
現代の科学は太陽系惑星や天体の探査には、
多くの人材と予算を注ぎ込んでいます。
また、その成果もメディアでよく紹介されています。
海洋探査も、海洋資源の関連で力を入れられており
報道もそれなりにされています。
ところが、自分たちの足下の大地の内部に関しては、
まだまだ人材も資金も足りない気がします。
日本には世界に誇れるSpring8があり、
太田さんたちも、利用して実験し、成果を出されました。
もっとこのような施設や機材があればいいのですが。
地球内部の成果は、公表されても、内容が地味なので
なかなかメディアには出にくい話題のようです。
もっと地球内部の成果にも
「光」があたって欲しいものですね。

・春へと・
北海道は春めいてきたました。
里の雪は、一部の雪だまりを除いては
ほとんど溶けてしまいました。
そして春の花が一斉に芽吹きだしました。
ダイナミックで華やかな北国の春が、これから始まります。
雪国の人は、この時期を心待ちにしています。
大いに楽しみたいのですが、
日常がそれをなかなか許してくれません。
でも気持ちだけはウキウキとしたいものですね。

2017年4月12日水曜日

3_154 核の水晶 1:地震波

 地球のもっとも深部に位置する「核(コア)」は、概要は以前からわかっているのですが、詳細になるとわからないことも多いところです。最近、新しい研究成果によって、実態が少しわかってきました。

 地球深部を知ることが難しいです。なぜならそんなに深くを潜っていくことも、掘る技術もないからです。地殻を彫り抜くのも大変で、マントルすら、実際に見たことがありません。マントルの直接に試料を採って来ることも大変で、間接的にしか試料も入手できません。マントルよりもっとも深部には、鉄からできた核(コア)があるとされています。核は、間接的に試料を手にすることすらできません。ところが、地球深部に核が存在することは、研究者のだれもが疑っていません。
 核の存在は、地震波がその重要な根拠となっています。地震による振動(地震波)には、いくつもの種類があることが知られているのですが、私たちが体感しているのは、P波とS波です。Pはprimary(最初という意味)の頭文字で、Sはsecondary(2番目という意味)の頭文字です。
 直下型地震波ではP波とS波は、時差がなく同時に届くので体感で区別はしづらいですが、遠くからの地震では、文字通りの違いを感じることができます。P波は、地震があったときに、真っ先に届く波です。突き上げれられたり、急に落ちていくような、上下に振動するような揺れとなることが多いようです。P波は進行方向に対して平行に前後に揺れます。次にくる、大きくぐらぐらするような揺れがS波です。S波は、進行方向に直角に揺れます。主振動とも呼ばれており、強い揺れとなり被害を与えるものとなります。
 2つの波には、他にも違いがあります。P波は、物質であれば、状態が固体であろうが、液体、気体のいずれであっても伝わります。一方、S波は、固体の状態の物質だけを伝わります。また伝わる物質の物性(密度や温度など)の違いにより、地震波の速度が変わってきます。地震波の違いを詳しく観測することで、見えない物質内部の状態を探ることができるのです。
 このような地震波の伝わり方の特徴や違いから、マントル内部の状態だけでなく、核の状態も知ることができるのです。核の一番の特徴は、密度が地球ではもっとも大きな物質(鉄)からできていること、同じ高密度の物質でも核の外側(外核と呼ばれています)に溶けた状態で、内側(内核)には固体の状態であることもわかっています。
 核の概要はこのようにわかっているのですが、詳細は必ずしもよくはわかっていません。例えば、核が鉄のみからできているとするには、密度がやや小さいので、なにか軽い成分が混じっているはずです。ところがその成分は不明なままです。地球の磁場の原因は、外核の溶けた鉄が流動しているためだとされているのですが、その実態や真偽はよくわかっていません。
 こんな疑問に対して、最近、新しい報告がありました。軽い物質の候補と外核の流動の原因を、両方を一度に解明できるかもしれないという報告です。詳しくは、次回以降に。

・初春・
本州から桜前線が北上してきているのですが、
いまどのあたりでしょうか。
北海道のわが町は、例年ゴールデンウィークころが
桜の見頃となります。
今年の冬で、
ドカ雪や季節外れに降ったり、
真冬に積雪が少なかったり天候不順でした。
それでも、4月にもなると、街の雪もほとんど溶け、
日陰や山並みに残るだけとなります。
雨も何度か降りました。
まだ春は浅いですが。
いよいよ北海道でもっともいい季節になります。

・兵庫へ・
ゴールデンウィークの予定を
いろいろ考えている人も多いことでしょう。
私もゴールデンウィークに出かけます。
学内の研究費が採択されたので、
急いで旅行日程を組みました。
昨年はこの時期に熊本へ行く予定を組んでいましたが、
地震で急遽中止となりました。
今年は、鳥取に行く予定です。
鳥取も地震の影響がまだ残っていると聞きます。
私は、鳥取県三朝町に5年間住んでいました。
調査のおりに少し寄ってみようかと思っています。
でも、調査は兵庫が中心になるので、
あまり時間がないのですが。

2017年4月6日木曜日

2_146 最古の化石 3:熱水噴出孔

 もうひとつの化石発見を紹介します。その場所は、カナダでした。グリーンランドより古い時代の可能性のある堆積岩からでした。ただし、時代はまだ確定していません。

 最古の化石として、最近いくつかの発見があったということで、このシリーズをスタートしました。ひとつは、前回紹介したグリーンランドのものでした。その報告の真偽の程は、まだ確定していないとことも話しました。私も少々疑念持っている一人です。それは、産状がストロマトライト状の岩石であったことでした。
 グリーンランドの化石は、ストロマトライト状の岩石からでした。ストロマトライトとは、シアノバクテリアがつくった構造をもつ岩石でず。同心円状の縞状構造を持っています。シアノバクテリアは光合成をする微生物です。光合成は複雑な化学反応の過程を経なければなりません。そのため、光合成生物にいたるには、進化にある程度の時間が必要だと考えられます。その点が最古の化石に関する大きな疑問点となります。
 では次に、もうひとつの最古の化石の報告を紹介しましょう。ネイチャー誌(Nature)の2017年3月2日号に発表されたものです。カナダ、ケベック州のハドソン湾東岸沿に分布するヌブアギツク帯(Nuvvuagittuq)から見つかりました。報告したのは、イギリスのロンドン・ナノテクノロジー・センター(London Centre for Nanotechnology)の大学院生ドッド(Matthew Dodd)さんとその共同研究者たちです。論文のタイトルは、
Evidence for early life in Earth's oldest hydrothermal vent
precipitates
(地球で最も古い熱水噴出孔の沈殿物中の初期生命の証拠)
というものでした。
 最古の化石の根拠は、次のようなものでした。化石とされているものは、ミクロサイズの赤鉄鉱のチューブ状やフィラメント状(繊維状)になっています。このような形態は、現在の熱水噴出孔にいる微生物や新しい岩石から見つかる生物群集に似ているそうです。また、化石に接している、いく種類かの鉱物の炭素の同位体組成も、生物起源を示唆しています。ある物質の炭素の同位体は生物起源であるかどうを決め手にされています。ドッドさんたちは、このような根拠を集めていくと、海底の熱水噴出孔の環境で、生命活動があった証拠になるとしています。
 ここで注目すべきは、化石が見つかっているという場所(産状)です。熱水噴出孔の沈殿物の中からでした。熱水噴出孔という環境は、最古の生物の生存環境として納得しやすいところだからです。
 現在、多く人が化石だと認めているのは、西オーストラリアから見つかったものです。その生物が生きていた環境は、深海底の中央海嶺の熱水噴出孔やその周辺の熱水の通り道でした。このような環境は、地球の初期に多数存在し、一番生物が発生しそうなところとしても、現在でもっともシンプルな生物(古細菌の仲間)が暮らす環境としても、熱水噴出孔がもっともふさわしいと考えられるところです。今回の化石の見つかった環境は、オーストラリアのもとの似た熱水噴出孔でした。その点では、大いに期待できます。
 今回の化石の年代は、地質学的な推定では、少なくとも37億7000万年前、多分42億8000万年前のものではないかとされています。化石の年代が、まだ確定していない点です。最古というためには、不可欠な情報となります。もし37億年前であっても、最古の化石となりますが、まだ推定の域をでていません。

・新学期・
いよいよ4月になりました。
我が大学の入学式は、4月1日におこなわれました。
土曜日だったので、行われました。
保護者の方々は出席しやすいのですが、
新入生は、日曜日に休んでから、ガイダンスに入ってきます。
その後、一週間休むことなく、ガイダンスから講義に入っていきます。
緊張を強いられますが、
このように新入生の新学期がスタートするのでしょう。

・古い堆積岩・
最古の生物に関する話題は、
常にグリーンランドが中心になります。
理由はこれまで何度も述べてきたように
最古の堆積岩があるところだからです。
新しい発見には、毎回、新しい方法が用いられたり、
新しい情報などが付け加えられて報告されます。
今回は、今までは氷床下にあったものが、
新たに露出して見えるようになったところからでした。
カナダからの報告では、
より古い(?)堆積岩が見つかりました。
そのからの報告になります。
もし時代が最も古いと決まれば、
ここが古い化石探しのメッカになるかもしれませんね。

2017年3月30日木曜日

2_145 最古の化石 2:ストロマトライト状

 グリーンランドの堆積岩から化石の痕跡が見つかったという報告がありました。岩石は「ストロマトライト状」だったされています。ストロマトライトには、地質学的には重要な意味があります。それを紹介していきましょう。

 最初に紹介するの化石は報告は、グリーンランドのイスアからのものです。発見者は、オーストラリアのウーロンゴン大学のナットマン(A. P. Nutman)と共同研究者たちです。Natureの2016年9月に発表されました。タイトルは、
Rapid emergence of life shown by discovery of 3,700-million-year-old microbial structures
(37億年前の微生物構造の発見によって急速な生命の創発が示された)
というものです。
 最古の化石探しといえば、いつもグリーンランドが登場します。グリーンランドには最古の堆積岩がでることが有名で、最古の化石探しはといえば、その地層からはじまります。かつて何度も最古の化石発見のニュースが流れては、否定されたり、確証がなかったりしてきました。現在でも、まだ最古の生命の存在が確定しているわけではありません。ですから、最古の化石探しの舞台になることが多いのです。
 現在、多くの地質学者が認めている、もっとも古いとされる化石は、約35億年前の西オーストラリアのピルバラから見つかっているものです。岩石は、最初、「ストロマトライト状」の産状を示していたため、太陽光が届く浅海底で形成されたと考えられていました。ストロマトライトという岩石は、光合成をするシアノバクテリアがつくった岩石の産状なので、そのような環境が考えられました。
 しかし、日本の地質学者が地質を精査した結果、現在では、そのような産状の岩石は、光の届かない深海底ではないかと考えられています。深海の海嶺で、熱水噴出孔や熱水の地下の通り道で、マグマに近い場が想定されています。ですから、熱に強い生物(古細菌とよばれるもの)の化石だとされています。
 今回見つかったグリーンランドの岩石も、ストロマトライト状の岩石でした。この岩石は、今まで氷河の下になっていて露出していなかった部分でしたが、近年の氷河の後退で露頭として露出するようになったそうです。
 さて、この報告の課題は、本当に化石つまり生物の痕跡かどうか、そしてストロマトライトかどうかという、2つの点です。
 まず、当たり前ですが、この痕跡が、本当に生物の痕跡、証拠としていいかどうかの検討を進めなければなりません。もし前者の生物かどうかが否定されたら、後者のストロマトライトということも否定されます。もし化石でだったと認定されたとしても、ストロマトライトかどうかという課題も検討しなければなりません。
 なぜなら、上でも述べたように、「ストロマトライト」とは、シアノバクテリアがつくった岩石の構造とされています。シアノバクテリアは光合成をする生物です。西オーストラリアでおこなわれた本当にシアノバクテリアによるものなのかという議論と、同じようなチェックが必要になります。
 光合成は、生物の進化ではなかり複雑な仕組みとなります。生命の歴史としては、地球ができて、海ができ、それから生物が誕生します。その後生物が進化と続けて光合成生物へと至るとされています。現在の地球の歴史では、シアノバクテリアが大量発生したのは、25億年前以降だとされています。地球が誕生して20億年かかって光合成ができる生物まで進化したと考えれば、それなりに納得しやすい時間です。ですから、37億年前の岩石が本当にシアノバクテリアによるものかどうかが、次なる課題となります。
 この化石が本物かどうか、本当にストロマトライトかどうか。検証が待たれます。

・年度末・
3月が終わります。
4月1日には、大学は入学式を行います。
新学期のスタートです。
2016年度の進みは慌ただしかったです。
しかし、いろいろこなしてきたこともあるのですが、
忙しさのため、つぎつぎとくる締め切り、催促など
スケジュールに追われて仕事をこなしていました。
こんな時期もあるのでしょうが、
一時的ことだと思いたいものですが。

・グリーンランディック・
グリーンランドはかつて一度だけ訪れました。
日本からは遠く、経費もかかります。
個人でいくにはなかなか難しいものがあります。
でも、グリーンランドにも街があり、
先住の人たちもいます。
彼らは、自分たちのことをグリーンランディックと呼んでいました。
グリーンラントときくと、
アパートの一室に民泊させて頂いた
グリーンランディックの
おばさんを思い出します。
看護師をされていましたが、まだ元気でしょうかね。

2017年3月23日木曜日

2_144 最古の化石 1:古い化石

 あるニュースが報道され、その後、それが真実として検証されたどうかについては、知らずにすましていることがよくあります。印象の強いものを記憶しがちで、仕方がないのでしょう。最近、最古の生物が発見されニュースになりました。はたしてその化石は本物でしょうか。

 2つの地域から最古の生命の発見について報告されました。その内容を紹介していきます。新発見の紹介する前に、これまでの最古の生命化石について、基礎的なところからみていきましょう。
 このエッセイでも何度か紹介しましたが、古い化石の認定はなかなか難しいしいものです。なぜなら、古い化石は、多くの人が想像する化石とは、全く違うものだからです。
 化石というと、骨や歯、貝殻、葉っぱなどの化石を想像します。これらは生物の体の一部です。さらに、恐竜の足跡も化石として扱われ、しばしばニュースにもなることがあります。生物の這い跡や巣穴など、生物が生活していた跡も化石とされています。多様な化石があります。
 しかし、ここで示した例は、いずれもかなり進化した生物の体の一部や生活痕です。あまり進化していない生物は、殻や骨、歯などをもっていません。多細胞ですらないのです。
 多分、最古の生物は、柔らかい体を持った単細胞生物だったはずです。ただし、単細胞生物でも群れや集合体になっていたことはあるかもしれません。これからの単純ば生物は、私たちが化石で想像した生物の形態、生活とは全く違ったものだったはずです。
 最古の生物探しは、単細胞生物の痕跡を探すことになります。化石は、堆積岩から見つかります。この条件は、化石を探すときに重要な手がかりとなります。最古の単細胞生物は、海で誕生したはずです。なぜなら、現在の生物の体をつくっている物質を化学的に合成するには、水が不可欠となるからです。地球には、少なくとも38億年前から海が存在することがわかっています。38億年前まで最古の生物の探査はできるはずです。
 残念ながら、最古の38億年前の海といっても、液体の水がそのまま残っていることはありません。海底でたまった地層を探します。もちろん、火山灰や、池や湖、砂丘の砂のように陸地でたまる地層もありますが、多くの地層は海底でたまったものです。海でできた物質が現在の陸地に地層としてあり、それを地質学者が発見するのです。ですから、最古の化石は、最古の地層から見つかるはずです。
 ただし、すべての地層に化石が見つかるわけではありません。地層の中にうまくすると化石が見つかる程度で、多くの地層には化石はありません。最古の化石も、地層から、運ければ見つかるかもしれないのです。ただ、ひたすら探すしかないのです。
 さらに、単細胞生物が、最古の化石となる場合、生物をつくっていたからだがそのまま残っているわけでありせん。体をつくっている有機物は、時間がたてば分解してしまいます。しかし、成分のほんの一部が、もしかすると残っているかもしれません。その痕跡が、生物しかつくれないものであれば、生物の存在を間接的ですが、証明したことになります。そんな化学物質をバイオマーカー(生物の痕跡)と呼んでいます。
 最古の生物探しは、基本的にはバイオマーカーを根拠にすることになります。

・最古の化石探しをする人・
生物を扱う生物学だけでは、
最古の化石を探すのは難しいものです。
なぜなら、生きた生物ではないからです。
地層の中に含まれている痕跡を探さなければなりません。
地質学の素養がなければなりません。
しかし、地質学だけでも難しいものとなります。
なぜなら、バイオマーカーは微量の成分を
精度良く検出、測定しなければなりません。
分析の能力も問われます。
最古の化石探しをする人は、
そのような能力を持った人となります。

・そのような季節・
大学は卒業式も終わり、
次は、新入生や新学期に向けての
準備のツメの時期となります。
私達の学科では、新4年生が実習にいくための
準備の授業が集中してはじまりました。
その講義を担当をしていますので、
なかなか忙しいものになります。
ですから、この時期、
他の仕事は、全く進まなくなります。
でも、しかたがありません。
そのような季節なのですから。

2017年3月16日木曜日

4_136 日豊の旅 5:よもやま話

 このシリーズの最後の回になります。日豊の旅で起こったよもやま話をしていきます。私は自分の野外調査では、目標を達成するために、いくつか注意は払っていることがあるのですが、いろいろ思わぬことが起こります。

 野外調査に出かけるときに、一番注意しているのは、いくつかある目的地に、優先順位をつけること、そして目的地を少な目に設定すること、トラブルを事前に極力排除することです。
 目的地に優先順位をつけるのは、その調査の目標を達成するためです。今回は3つの目的地がありました。それを今回のエッセイで紹介しました。優先順位は、1番は鶴見半島の海洋プレート層序、2番は網代島の層状チャート、そして3番が青島の砂岩泥岩互層でした。
 目的地を少なくしているのは、臨機応変に対応するためです。予定はあくまでも予定で、天候や露頭の状況によって、予定通りに進まないこともあります。そんなときに備えて、現地で予定を変更できるように、ゆったり目に立てています。たいてい、午前と午後に一つずつの目的地で調査をしていきます。天候で当時がだめになっても、翌日や別にの日に再挑戦できるかもしれないからです。
 トラブルは、「君子危うきに近づかず」で、事前に危なそうなところや場面はやめておきます。天候以上の不測の事態を排除したいからです。今回の日豊の旅で気をつけたのは、水にはいるようなところ、山の深いところに行く予定では立てませんでした。1月末の真冬なので、水に浸かるのは冷たいし、濡れてからの調査が困るからです。山の予定を入れると、九州でも雪が降ることがあります。また、レンターカーがスタットレスをつけていないので、動けなくなったり、予定通りに進めなくなるころがありうるからです。
 実は一番の問題は、天気です。天気はいかんともし難いので、雨や荒天もありうるので、予定が変わることがもあります。今回は、風の強い日、曇っている日もあったのですが、雨が降るような日はなく、予定変更はありませんでした。短い期間の調査だったので、雨が降るとほとんど調査できないことになるので、幸いでした。
 ただし、いくつか問題もありました。それは調査の最終日です。宮崎で宿を事前に予約しようとしていたのですが、空港近くのホテルや調査地の青島の近くのホテルがほとんど満室でとれませんでした。しかたなく、車で空港から1時間ほどの少々離れたところに宿をとりました。それには、理由がありました。
 私が宮崎空港についたとき、到着ロビーに記者団が行列をしていました。この時期、野球やサッカーのチームが多数、宮崎で合宿をするようです。レンタカー会社の運転手がクラブや球団の合宿リストもっていました。びっしりと予定が入っていました。帰るときにも「侍ジャッパの合宿が・・・」ということをいっていました。ファンや取材陣が宿泊するので、宮崎の周辺の宿が埋まっていたのです。
 合宿については、私の配慮には入っていませんでした。残念でした。

・選んだ道・
今週末、大学の学位授与式があります。
私の学科でも、多くの卒業生を社会に送り出します。
自身の決めた進路で、社会にでていきます。
不安、期待の入り混じった気持ちで
社会に巣立っていくのでしょう。
どこにいっても、自身の選んだ道です。
期待通りにいかない場合もあるでしょう。
予想に反する場合もあるでしょう。
しかし、そこを選んだからには、
精一杯の努力で属するの組織や社会に
対応し、貢献していくことしかありません。
できれば、選んだ道を好きになってもらいたいものです。

・早い春・
北海道のまだ雪も降っていますし、
雪も残っています。
でも、今年は積雪が少ないので、
春の訪れは例年よりも早そうです。
北海道の冬は、厳しいので、
いつでも春の訪れは待ち遠しいものです。
春が早いのは望むところです。

2017年3月2日木曜日

4_134 日豊の旅 3:海洋プレート層序

 大分県の南の佐伯市の鶴見半島に調査にきました。付加体を構成している海洋プレート層序の代表的な岩石を見ることが目的でした。予定していた露頭へのアプローチはできなかったのですが、道路沿いでいい露頭を見ることができました。他にも思わぬサプライズがありました。

 大分県の海岸線を南下していくと、宮崎県に接する町、佐伯(さいき)市になります。周辺の5町3村が、2005年に、佐伯市に合併しました。祖母山から豊後水道まで、非常に広い市となりました。調べたら、九州では、最も大きな面積を持つ市町村となっているようです。
 佐伯市には、豊後水道につきでた半島があります。鶴見半島と呼ばれています。海岸の北側には県道604号線が通っていますが、南側の海岸は切り立っているので、道はほとんどありません。ただ、もっとも東に突き出た鶴御崎には、自然公園があり鶴御埼灯台がたっています。この地は、九州最東端となるところだそうです。
 県道604号線沿いに調査に入りました。事前の文献調査では、南の海岸沿いに、是非見たい露頭があることがわかっていたのですが、その場所は地図では道はありません。でも現地にいってみないとわかりません。釣り人が通るルートなどがたいての海岸にはあり、アプローチできることもあります。ただし、重要な地質調査では、船を利用して海岸沿いを調べることもあるので、一人で徒歩でいけるかどうかは、いってみるしかありません。
 現在と調査された時代とでは、道路の拡張、切り替えや、町の開発なので、岩石の露出の状況が違っていることも多いので、別の露頭が見つかることがあります。やはり現地にいってみるかありません。
 さらに、似た岩石は地質学的は、連続的に分布しているはずです。周辺を調べれば、露頭さえあれば、似た岩石を見ることができるはずです。
 この鶴見半島に来たのは、「メランジュ」をみるためでした。できれば「メランジュ」の構成要素となっている「海洋プレート層序」の岩石類を見たいと思っていました。
 海洋プレート層序とは、海洋底の岩石を構成している岩石類のことで、下の方から、海嶺で海洋地殻として形成された玄武岩、生物の遺骸が深海底にたまってできた層状チャート、極細粒の陸源物質からできた赤色頁岩、陸地から流れてきた土砂によるタービダイト層からできています。
 これらの層序は、付加作用によって断層によって分断されます。激しく乱れて混在していることもよくあり、もともとの構造が不明になっているものを、「メランジュ」と呼びます。メランジュは、スケールが大きと地質図レベルで、あるいは露頭ごとに違う岩石がでたり、小さいスケールだとひとつの露頭にいろいろな岩石が混在していることもあります。また、メランジュの擾乱の程度によって、もとの岩石すらぐしゃぐしゃになっていたり、メートルサイズでもとの産状が残されていることもあります。
 私は、産状が残された海洋プレート層序の岩石を見たいと思っていました。結局、当初目指していた露頭には近づくことはできなかったのですが、県道沿いで海洋プレート層序の各種の岩石類を、きれいな産状のまま見ることができました。こんな失望と歓喜が両方あると、この地は非常に思い出深いところとなります。

・丹賀砲台・
県道604号線沿いを車で走っていると、
丹賀砲台園地という看板がみえて
分かれ道がありましたので入ってみました。
駐車場があり、管理の人もいます。
尋ねると、現在リフトは運休中なので駐車も入場も無料だとのこと。
朝も早かったので、私しかいなかったのですが、
予定外でしたが、「無料」なので、見学することになりました。
ここには、戦時中「丹賀砲台」があったそうです。
観光については調べていないので、知りませんでした。
巨大なトンネルと長い階段、砲台の跡、
そしてその地上部にはモダンなドームがありました。
砲台として巡洋艦伊吹の大砲が据え付けられたそうですが、
事故で大爆破を起こし、多くの死傷者をだしたそうです。
一度も使用されることはなかったそうです。
ドームはなかなか見ごたえのあるもので、
海洋プレート層序の露頭と共に
サプライズのような思い出となりました。

・健闘を・
いよいよ3月です。
北海道は三寒四温が来ています。
暖かいときは、多くの雪や氷が一気にとけ
道が水浸しになります。
寒いときはかなりの雪が降り、冷え込みも厳しいものです。
温度変化の大きい、
メリハリのきいた三寒四温です。
大学は、この時期、入試、卒業、進級など
いろいろ行事が重なるので慌ただしいのですが、
人生の区切りを迎える学生たちには
新天地での健闘を願っています。